主人公に「消えろ」と言われたので

えの

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目の前のショーをぼんやりと眺める。そこには見知った顔が居た。今日行われるショーでの目玉だ。みんなコレを目当てに来ている。


ガタイのいい獣人達にに追い回され、捕まえられては犯される人間達。ここは獣人国でも富裕層のみに許された娯楽施設だ。殆どの人間は奴隷だが普通に扱われる。むしろ待遇が良いぐらいだ。


だが、稀に、ごく稀に娯楽施設用に提供される人間達が居る。大抵は賭博等で借金で首が回らなくなったダメ人間だ。そんな奴等に真っ当な奴は居ない。だから獣人の国でも売れ残ってしまう。だが、貴重な人間だ。殺すのは惜しい。


そこで考えられたのが見世物ショーだ。観客からお金も取れるので、奴隷を仕入れた金額よりも優に元を取る事が出来る。売れ残りの奴隷であっても役に立てるのだ。何回も孕み壊れるまで使われる。そんな場所に俺の見知った人が居る。


「ユノー?考え事なんて余裕だね!今からが本番だよー?楽しみだね」


勢い良く背後から腰を何度も打ち付けられる。パンパンと乾いた音と共に粘着質な音が部屋に響く。


「ぐっ、ぐるじぃ…はっ、もぅ抜いてッ…」


喘ぎ過ぎた喉は渇き、言葉を上手く運ぶ事が出来ない。俺は今、特等席の個室からこの下衆なショーを観覧させられている。舞台の中央で鎖に繋がれているカノン。先程までのショーを見ていたのだろう。今から自分の身に起こることを理解している為か、顔は引き攣り怯えている。



あの日、カノンに会った最後の日。俺はフレイの物になった。指1本さえ動かす事が出来ないくなった俺をフレイは嬉しそうに抱え船に乗った。そして辿り着いた獣人国。泥の様な眠りについた俺は、気づけば豪華な部屋のベットに寝かされていた。腰の痛みと闘いながらぎこちなく体を起こし部屋を見渡す。


「ここは…」


自分の体を治癒したいのに魔法が使えない。カノンに嵌められた首輪を撫でる。あれ?なんか装飾品が付いてる?ベットから落ちるように床に降り、這うように床を動き、近くにあった姿見に写る自分の首を確認する。首輪が違う…。やけにキラキラしてる…。そういえば…フレイが新しい首輪がどうとか言ってたっけ。でも魔法封じが健在なのは何故?もしや…お嫁さんとか言っていたが、本当は奴隷なんじゃ…。ありえる。フレイが好きだから全部言う事を鵜呑みにしていたが…自分の嫁に首輪はない。



上手い話には裏がある。俺って学習しないな…。そう気づいた瞬間、俺は逃げる事を選択した。だが、体が思うように動かない。壁伝いに手をつき窓に近づく。ここは二階か…だが冒険者ランクAの俺ならば、この体でも地面に着地出来るだろう。力いっぱいに窓を開けようと手をかけた時、ドアの開く音が聞こえた。不味い!!そう思った時には既に遅かった。



「ユーノ。何処行くのー?まさか逃げようとなんてしてないよねー?」


いつも通りの間延びした声。だが、フレイの顔は笑っているのに目が笑っていない。目は口ほどに物を言うとはこの事だな…。暗く淀んだ目が俺の恐怖心を煽る。


「どうして俺の魔法を封じるんだ…この首輪は…?」


首輪を撫でながら聞く。自分の顔が自然と歪むのが分かる。上手いこと言葉巧みに乗せられた自分が恨めしい。両思いだと勘違いした自分が馬鹿らしい。質問に何も答えず、ただ俺を見つめ続けるフレイに続けて質問をぶつけた。


「俺…奴隷なのか…?お前の子を孕んだら…俺は他の奴の子も…」


「ユノ。誰かに奴隷だと言われたの?誰に?教えて。そいつ殺す。怒らないから教えてくれる?そいつに子を孕めと言われたの?俺のお嫁さんに…俺のユノに…勝手に口をきくことさえおこがましい!!あぁ、可愛い俺のユノ。いい子だから教えて」


そう言いながら両手を広げてこちらに歩いてくる。フレイの口元はさっきよりも口角が上がっており、目も穏やかで優しそうになった様に見えるが…俺は知っている。この目を知っている。浅はかな俺の質問は更なる恐怖心を煽る材料になってしまった。


俺はフレイの言った事を全く理解していなかった。"獣人は愛する人に対しての愛が重いんだー。その中でも俺は特に重いの"フレイの言ったセリフが頭の中で何度も再生される。特に重い…。特に…重い。あぁ、俺は地雷を踏んでしまったかもしれない。







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