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「…キノコが欲しかったからかな?」



手の中のホレホレキノコを見せる。



「あんたがキノコの上で倒れてて、どいて欲しかったから助けただけ」



「ありがとう!!死を覚悟してた…。ほんとにありがとう。俺はフレイ、君は?」


「俺はユノ。冒険者をやってる。俺もお目当ての物が見つかったし、別にいいよ」


じゃあ。と別れを告げてその場を離れる。


「ちょっと待って!!」


凄い力で腕を引っ張られた。腕抜けるやろー!!力加減って言葉知ってるか?!


「俺の体を治した責任とってよ」


「はぁ?」


マジで言葉通じてないんじゃないか?!なんの責任だよ!!


「ケレス大陸に戻りたいんだ。一緒に来てくれない?」


「嫌だ。俺に何の得がある?」


「冒険者なんでしょ?」


護衛の依頼か?確かに…追手がいるなら一人でケレス大陸に戻るのは難しいかもな…俺も逃げる場所無くなってきたし、海を渡ろうと考えてた所だ。


「高くつくぞ?」


「ありがとう!!」



アイテムボックスからフード付きマントを出し、フレイに渡す。獣人と一緒に居たら目立つに決まってる。おまけにイケメンときたもんだ…。甘い顔立ち…さぞモテるでしょうね。黒髪なんて初めて見たよ…。対して俺はくすんだ金色。いわゆる麦藁色だ。背も低いし顔のせいで女の子と間違われる事も多い…。羨ましい奴め。森を抜け、街の宿屋に戻る。部屋を二人部屋に変えてもらい、俺はギルドにホレホレキノコを渡しに行った。宿屋の食堂ではご飯は食べれないと思い、適当に屋台で食べ物を買って帰る。



「おーい。ご飯買ってきたぞー」



「お帰りー!!心配したよー!!」



ギュウギュウと抱きつかれ、逞しい胸板に顔を押し付けられる。つい数時間前に会ったばかりなのに、何故か随分と懐かれている。ギルドに行く時もしつこく引き止められたし…。吊り橋効果だろうか?それとも獣人は皆こうなのだろうか?とりあえず、離して欲しいとお願いする。すぐに腕の拘束が解かれた。これからの予定について話し合う。港町のオルペに行き、そこからケレス大陸に渡る。しかし、ケレス大陸は獣人しか住んでおらず、こちらから船の定期便は出ていない。望みは唯一取引をしている商家の船だけだ。だが、フレイは問題ないと言う。とりあえずオルペに行くか…。




オルペに行く道中、俺は何もする事がなかった…。乗合の馬車はフレイが居るから無理。ならば、森を突っ切るしかない。多少危険は増えるし、時間もかかるが、俺の実力ならフレイを庇いながら戦う事も可能だ。万が一怪我をしても治せばいい。だが、俺の心配は取り越し苦労に終わる。フレイは強かった…。俺の出る幕はないくらいに。そして、テント張り、ご飯の用意、俺への気遣い…完璧だ。えっ?あなた俺の助けたフレイさんですよね?死にかけてたフレイさんですよね?なんで死にかけてたのか不思議だ…。でも、俺は何も聞かない。痛い腹の探り合いは嫌だろ?一度フレイに家族の事を聞かれたが、天涯孤独の身だと教えた。俺はただのユノ。それ以上でも、それ以下でもない。






オルペは港町だけあって、活気で溢れていた。道端にずらりと並んだ屋台から威勢のいい呼び込みの声が聞こえる。歩いているだけで楽しい。まずは泊まる宿屋探し、次にギルドに行く。ギルドで適当に依頼をこなしながら、船に乗る算段をつけるか。フレイは宿屋でお留守番をお願いした。ギルドに着き、適当に掲示板を見る。やたらと探し人の依頼があるな…。おっ!!これいいな!!ホレホレキノコの採取!!まだ残り持ってるよ!!ラッキー。依頼書を剥がしカウンターに持っていく。



「これお願いします。依頼品のホレホレキノコです」


「確かにホレホレキノコですね。ギルドカードをお願いします」


胸元にかけているギルドカードを渡す。


「えっ、ユノ…。もしやAランクのユノ様でしょうか?」


「そうですが…」



「実は指名依頼がきております。マーティン商会からでして、依頼内容は最近、近海でクラーケンが出ておりますので、船の護衛との事です」



「えっ?!」



マジで?!こんな偶然が?!これでケレス大陸に行ける!!


「船の出港までに、打ち合わせをしたいと書いてあります。こちら依頼書ですので、お読みください」




成功報酬を手にギルドを出た。これで遂にケレス大陸に…。嬉しすぎて依頼書を持つ手が少し震える。




良かったな!家に帰れるぞ!!フレイ待ってろよー!!








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