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しおりを挟むあはは…と笑う俺を見下し、何かを堪えるような顔のヤクザさん。そうだよな…このシチュエーション…可愛い女の子や綺麗な女の子だったらそのまま…。
そう考えた時、ズキンッっと心が痛くなった。俺…何考えてんだろう。でも…なんだろう…心が痛い、悲しい程痛いよ。ヤクザさんはただの隣人さんなのに、優しいから俺を構ってくれてるだけなのに、何なの俺。意識しちゃってるみたいでバカみたいじゃん。ヤクザさんみたいな色男はそっちの趣味はありません!!さぞ女の子にモテモテでしょう!!
あーダメだ。泣きそう。バカか俺は。自分で勝手に想像して、勝手に凹むとか…余計迷惑かけちゃうじゃんかー。涙が出そうになるのを堪えようと固く目を閉じ押え込む。
「どうして泣く?」
頭上から優しい声が降ってきた。目を閉じていても温かさが伝わってくるその声に、また心配させてしまったと自分に嫌悪感を抱く。俺はこの人の前でどれ程醜態を晒せばいいのか…。
「まだ泣いてません!!」
強気で言い返す。悟られたくない。どうか俺の心に気づかないで。
「怖いか?俺が怖いか?」
どこまでも優しい声色に、俺の心は期待してしまう。男の俺に優しくしたってなんの見返りもない。どうしてそこまで俺に尽くしてくれるのか分からない。何かほかの目的があるのか?ヤクザさんを信じたいが、理由づけることが出来ず、不安で胸が押し潰されそうになる。
人間寝ながら物事を考えるとマイナス思考になるという説は本当かもしれない。
「怖く…ないです。いきなり腕を引っ張ってすみません。おっ、女の子だったら!!…女の子だったら嬉美味しい展開でしたね!!ほんと…すみません…俺なんかで…」
最後の方は語尾が小さくなってしまった。もしかしたら聞き取れてないかもしれない。もう、この場に居たくない。1秒でも早く家に帰りたい。ヤクザさんの顔を見ずに身体を捻り抜け出そうともがく。だが、俺の力でヤクザさんをどうこうできる訳もなく、無力感に苛まれていると、
「俺にとっては最高に美味しい展開だ」
ずるそうに笑いながらヤクザさんはそう言った。
その顔を目にした瞬間、胸がドキンとして顔中に熱が集まった。絶対に顔真っ赤だ!!こんなの俺の気持ちがバレバレじゃないか!!恥ずかし過ぎて死ねるー!!
拝啓お母様、俺は隣人に恋しちゃった様です。
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