11 / 12
11
しおりを挟むあはは…と笑う俺を見下し、何かを堪えるような顔のヤクザさん。そうだよな…このシチュエーション…可愛い女の子や綺麗な女の子だったらそのまま…。
そう考えた時、ズキンッっと心が痛くなった。俺…何考えてんだろう。でも…なんだろう…心が痛い、悲しい程痛いよ。ヤクザさんはただの隣人さんなのに、優しいから俺を構ってくれてるだけなのに、何なの俺。意識しちゃってるみたいでバカみたいじゃん。ヤクザさんみたいな色男はそっちの趣味はありません!!さぞ女の子にモテモテでしょう!!
あーダメだ。泣きそう。バカか俺は。自分で勝手に想像して、勝手に凹むとか…余計迷惑かけちゃうじゃんかー。涙が出そうになるのを堪えようと固く目を閉じ押え込む。
「どうして泣く?」
頭上から優しい声が降ってきた。目を閉じていても温かさが伝わってくるその声に、また心配させてしまったと自分に嫌悪感を抱く。俺はこの人の前でどれ程醜態を晒せばいいのか…。
「まだ泣いてません!!」
強気で言い返す。悟られたくない。どうか俺の心に気づかないで。
「怖いか?俺が怖いか?」
どこまでも優しい声色に、俺の心は期待してしまう。男の俺に優しくしたってなんの見返りもない。どうしてそこまで俺に尽くしてくれるのか分からない。何かほかの目的があるのか?ヤクザさんを信じたいが、理由づけることが出来ず、不安で胸が押し潰されそうになる。
人間寝ながら物事を考えるとマイナス思考になるという説は本当かもしれない。
「怖く…ないです。いきなり腕を引っ張ってすみません。おっ、女の子だったら!!…女の子だったら嬉美味しい展開でしたね!!ほんと…すみません…俺なんかで…」
最後の方は語尾が小さくなってしまった。もしかしたら聞き取れてないかもしれない。もう、この場に居たくない。1秒でも早く家に帰りたい。ヤクザさんの顔を見ずに身体を捻り抜け出そうともがく。だが、俺の力でヤクザさんをどうこうできる訳もなく、無力感に苛まれていると、
「俺にとっては最高に美味しい展開だ」
ずるそうに笑いながらヤクザさんはそう言った。
その顔を目にした瞬間、胸がドキンとして顔中に熱が集まった。絶対に顔真っ赤だ!!こんなの俺の気持ちがバレバレじゃないか!!恥ずかし過ぎて死ねるー!!
拝啓お母様、俺は隣人に恋しちゃった様です。
22
お気に入りに追加
271
あなたにおすすめの小説


今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。


フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる