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しおりを挟むあの後、ちゃんと説明し納得したヤクザさんは、紛らわし事してんじゃねぇよと捨て台詞と共に何やら箱をくれました。戸惑う俺を無視し、出掛けようとするヤクザさんに、とりあえずお礼の言葉と、行ってらっしゃいと送り出す言葉を投げ掛けた。
そのまま振り返る事なく姿は無くなり、現在、俺は謎の箱を机の上に置きにらめっこ中だ。なんだこれ…開けてもいいのだろうか?俺にくれたんだよな…?違ってたら…。あ゙ぁ?!何勝手に開けてんだ!!ゴラァ!!…有り得る…脳内再生余裕な程しっくりくるセリフだ…。
つついてみたり、箱を振ってみたり、耳を当ててみたりと色々試したが全然中身がわからん!!
開けるぐらい…中身を確認するぐらいならいいよね?だって生物だったら困るじゃん?腐っちゃうかもしれないし…。心に言い訳をして、そっと箱の蓋を開けて中を覗き込む。
「えっ…ドラ〇もん…?」
意外な代物に急いで中身を取り出す。これは国民的アニメのキャラクターをモチーフとした…かき氷機…?何故…かき氷機?こんな可愛い物をヤクザさんが…。ぷッ…ちょっと笑えるんですけど!!これを小脇に抱えて俺に詰め寄ってたのか?!思い返すと何ともちぐはぐな組み合わせに笑いが止まらない。
「ふふっ、要らないから俺にくれたのかな?」
確かにヤクザさんがかき氷機作ってる姿を想像すると…やべぇ…面白過ぎる!!これはヤグザさんからの不用品を頂いたって事で、俺が愛用してあげよう!!ヤクザさんも本当は可愛い女の子に上げたかったに違いない。だが、残念ながら俺のお隣さんの女の子は引越してしまった…。非常に残念だ…。このフロアには俺とヤクザさんしか住人が居ない。
何故引っ越さないのか?俺だって最初は引越しを考えたさ!!だが引越し費用は高い!!そして意外に駅近だし、近くにスーパーも薬局もあるし便利!!そしてトドメに!!何故が家賃が値下がりした事!!これが1番大きい。不動産会社から連絡があった時は、驚いて喜んだが…。実は事故物件じゃないかと怪しんでいる…。それならば隣の女の子が引越しした事も納得する…。夜中にふと目覚めて窓際を見ると…ギャーギャー!!やめだ!!考えない様にしよう…。
さてさて、睡眠不足を解消する為にもうひと眠りしますか!!ベッドに潜り込み頭まで布団を被る。二度寝最高ー!!スマホのアラームをセットして準備OK!!今日は授業は昼からだし、その後はバイトだけ!!かき氷機の事、店長に自慢しちゃおう…むぁ…眠ッ…。
▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣
「佐久間!!お前と別れた後な大変だったんだぞ」
バイト先でシフトが被った佐久間に、八つ当たりするかの様に事情を説明した。だが、佐久間は面白がり悩むような仕草でヤクザさんの行動について推測を始めた。
「そのかき氷機ってさッ、彼女と一緒にやろうと思ったけど、必要なくなったんじゃね?」
「はぁ?んな馬鹿な」
「いやだってさー。男のひとり暮らしの家にかき氷機なんてあるか?!ってか買うか?!絶対女がいて別れたんだよ。俺にはわかる!!」
佐久間はうんうんと頷き勝手に納得しているが…確かに一理あるかもな。ってか女好きの佐久間が言うんだから、実はその通りなのかもしれない。あのヤクザさんはかき氷が食べたかったのか…。
「おい真広!!お前ヤクザ誘ってかき氷ご馳走してやれよ!かき氷機タダで貰ったんだろ?そして後日俺に話を聞かせろ!!」
親指を立てて満面の笑みでハンドサインを出す佐久間にカバンを投げつけ、ロッカーの制服に袖を通す。
「馬鹿も休み休み言え。ヤクザさんは忙しいの。俺とかき氷パーティしてる暇なんかありませーん」
今日も来客で賑わうお店。ほとんどがリピーター、もしくは常連客だ。皆いい人達で、たかが出会って半年程しか経っていない俺にも優しく会話を振ってくれる。俺も自然と会話に交じり、手際よくお通しを皿に盛っていく。今日の賄いは何かなーと意識を脱線させつつ、仕事終わりの楽しみに思いを馳せ今日も頑張ろうと思うのだ。
バイトが終わり、辿り着いたアパートのドアノブにかけられた紙袋の中を覗き込んで俺は驚愕した…。かき氷シロップ?!おまけに屋台で見かける業務用2リットルだと?!いちご、メロン、ブルーハワイ、マンゴー…この数、この量!!かき氷に対する本気度が伺える…。ヤクザさん…かき氷パーティ楽しみにしてたんですね…。
拝啓お母様、俺の隣人は見かけによらず子供っぽいみたいです。
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