2 / 12
2
しおりを挟む「おい!!真広ー。最近どうよ?例の隣人さんは」
気さくに声を掛けてくるのは、バイト仲間でもあり同じ大学の1回生でもある佐久間だ。こいつは俺と違いエンジョイ組だ。サークルにも属し、合コンにもバイト先であるこのカフェバーをよく利用している。昼間はカフェとして、夜からはバーになるちょっと小洒落たお店だ。佐久間の目標は卒業までに100人の女の子と連絡先を交換する事らしい。こいつならば達成出来そうだ。顔が良いし愛想も良いからな。
「相変わらず…今日も朝から絶好調だったよ」
「すげぇーな!今日さお前の家行ってもいいか?!1回俺も体験してみたいんだよー!なっ?なっ?!頼むよー!!この通りッ」
「お前の魂胆なんて見え見えだ」
「いやーさすが優等生真広君!!だってこんな面白そうなネタないだろ?!絶対合コンでウケる!!」
はぁー。こいつは言い出したら聞かないからな…。とかいう俺も佐久間が一緒なら壁ドンにビクついて眠りに入る事もないし…お互いのウィン・ウィンの関係だな。
「俺がバイト上がるまで待ってろよー」
「真広君!!愛してるわー!!」
調子の良い奴め。でも、こういう所が皆に好かれているんだろうな…。今日は朝の仕込みから夜の8時までバイトだ。俺が休日に長時間バイトを入れているのは勿論お金の為だが、このバイト先、なんと賄いが出るのだ。貧乏学生の俺には何とも有難い!!2食分のお金が浮くと、その分を他の日用品購入に回せる。本当良いバイト先だよ。
バーに来た常連客と、ブロック氷の代わりに、かき氷にお酒を注ぐと美味しいらしい、などたわいもない会話をしながら手を動かしていると、時計はバイトが終わる時間を少し過ぎた頃だった。
「店長ー。俺、上がりますね。さっきの話、お金に余裕が出来たらかき氷機買って試してみようと思います!お疲れ様でした!!」
更衣室で着替えながら先程のかき氷機の話を思い出す。何もお酒じゃなくとも、普通にシロップ買ったらアイス代浮くよな…。氷も水だし…。何を隠そう俺は甘党男子だ。暑い夏の日にアイスだって爆食いしたいのを我慢して100円で10本入の安いチューペットで我慢している…。本当はチューペットだって1日1本じゃなくて何本も食べたい…。だが、かき氷機を買えば悩みは解決するのでは…。冬でもかき氷が食べれるぞ!!4千円する電動かき氷機…先行投資と思えば…。むぅー…。
「…ぃ!!おぃ!!真広ッ!!」
「んぁぁ?!えっ…あぁ…なんだ佐久間か…」
「いやいやいや!!ずっと呼んでたんですけど!!はぁ…お前バイトのし過ぎじゃねえの?早く行こうぜ!」
余程楽しみになのか、はしゃぐ佐久間はぐいぐいと俺の腕を引っ張り歩いていく。だが、そんな時に限って隣人は不在なようで…
「せっかく来てやったのにさー。ないわー!!何で居ないんだよ!!はぁ、俺、明日一限からだから寝るわ。真広!!ちゃんと起こしてくれよー!!」
この厚かましい友人は堂々と俺のベッドを占領し寝る体勢に入った。この狭いベッドで2人で寝る?まさか!!俺はクローゼットから寝袋をとりだし、いそいそと潜り込んだ。なんか…たまには寝袋で寝るものいいかもしれない…。新たな発見に少し胸をときめかせて眠りについた。
ピピピッ…
スマホのアラームを止め眠たい目を擦りながら、のろのろと寝袋から這い出す。佐久間め…気持ち良さそうに寝やがって!!俺が昨日どんだけお前のいびきで苦しめられたと思ってるんだ!!
「おいッ!!佐久間!!朝だぞ!!」
ゲシッ
「ぐへっ」
睡眠妨害のお礼とばかりに布団を剥ぎ取り足蹴りを食らわせてやった。朝ごはんは食べないと言うので、仕方なしに手作りおにぎりを持たせてやる。俺はお前のお母さんか!!
「じゃぁな!!」
「おう」
慌ただしく出て行く佐久間をドアの外まで送ってやった。あいつは朝から騒がしい奴だな。姿が見えなくなり、部屋に戻ろうとした時、ガチャっと隣のドアが開き、隣人さんとバッチリ目が合ってしまった。えっ…ヤグザさん居たんだ…。夜中に帰って来たとか…?
「あっ、えっーと、おはようございます?」
「おい!!今の奴…」
今の奴?佐久間の事?えっ、もしかして…壁際で寝てたからいびき煩かった?!確かにあの大きさだと聞こえていても可笑しくはない…。ヤバイヤバイヤバイ…。俺だけならまだしもヤクザさんまで睡眠不足に?!
「すみません!!煩かったですか?!聞こえてました?!」
「あ゙ぁ?!何が聞こえたってぇ?!聞こえちゃ不味い事でもしてたのかよ?! あ゙ぁ?!」
何故か朝から心臓に悪い程難癖をつけられています…。何が気に障ったのやら…。この場をどう切り抜ければいいのか…。
拝啓お母様、俺の隣人は朝からヒートアップしています。
22
お気に入りに追加
271
あなたにおすすめの小説

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる