拝啓お母様、俺は隣人に殺されるかもしれません

えの

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「クソッタレがッ!!」


ドォーン!!っと部屋に響き渡るドメスティックな音。勿論、俺の部屋からではありません。お隣さんが発信源です。俺、自分で言うのもなんだけど、結構温厚な性格なので…この様に荒ぶる事はありません。


朝ごはんのお茶漬けを喉に流し込み、ニュースを聞き流しながら学校に行く準備をする。今日は燃えるゴミの日だったな…。


「よし!!戸締りOK、ゴミ袋OK、カバンも持った…行ってきます」


ゴミ置き場に袋を置き、駅に向かって歩き出す。俺、真広 陽まひろ はるは今年大学に入学したばかりのピカピカの新入生だ。今は夏休み。大学生ならばサークルだの、キャンプだの、海だの…そりゃ楽しいと思うだろ?残念ながら俺はイベントとは無縁の生活を送っている。海でナンパをして女の子と出会いが…なんて事もない。


なぜなら…なぜなら俺は貧乏学生だからだ!!親が離婚し、女手一つで大学まで行かせてくれた母さんにはめちゃくちゃ感謝してる!!大学生になってまで、甘えてばかりは居られない。自分の事はなるべく自分で、母さんの負担は少しでも減らしいたい!


大学は国立を選んだ。元々、勉強は嫌いじゃない。国立の方が授業料も安い、だが、なんせ家からは通える距離ではなかった。仕方なしに二人暮しの家から出て、大学に近いアパートを借りた。家賃は勿論自分で払う、その他の光熱費、食費、スマホ代…とにかくお金が必要だ。その為に週6でバイトに入っている。


今の生活に不満なんて無い。ただ一つ、お隣さんがヤクザだって事を除いて…。そう…朝からエキサイトしていたお隣さんは堅気の方じゃないのです…。


引っ越してきた初日、やっぱりお隣さんにはご挨拶をと思い、ちょっとしたお菓子の詰め合わせを持って挨拶に行った。片方はお留守。反対のお部屋は何とも可愛い女の子が住んでいた。俺と年齢も近そうだし…彼氏とか居るのかな?もしかして…これがきっかけで!!とか楽しい妄想をしながら荷解きをしていた時、ドンッとドアが閉まる音が聞こえた。お隣さんが帰ってきたみたいだな。


ピンポーン


「夜分遅くすみません。今日から隣に引っ越してきた真広といいます。ご挨拶に伺いましたー」


ガチャ


「あ゙ぁ?!」


少し開かれたドアの隙間から鋭い目で見下ろす大男。あまりの凄みに固まり、あっ、えっ、と戸惑う言葉しか出でこない。この人は関わっちゃいけない人種だ!!本能で感じ取り、つまらない物ですが!!とドアの隙間からお菓子を押し付け自室に逃げるように転がり込んだ。


無理やりお菓子を渡した手は小刻みに震え、心臓は煩いぐらい脈打っている。あんまりだ…隣人ガチャがハズレとはこの事か…。


ドォーン!!


「クソがッ!!」


決して薄くはない壁から聞こえてくる罵声と凶暴な音にぺたりとその場にへたり込んでしまった。もしかしなくても…俺のせいか…?俺がお菓子を押し付けて逃げたから…?これは大変な事をしてしまった…。



拝啓お母様、俺の隣人はヤバイ人のようです。




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