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俺、動揺する
しおりを挟む「妖精ではありません。妖精違いです。俺は森に住んでいる凡人です」
最初が肝心だ。間違いを正しておかないと厄介事に巻き込まれるかもしれないしな。とりあえず色々と情報を聞き出したらお帰り願おう。
「間違いではありません!!妖精様は我々の様な耳も尻尾も無い出で立ちと聞いてます!!そして…言葉に表せない程…美しいとも…お会い出来て光栄です!!」
なんて事だ…確かに獣人の様な耳も尻尾もない!!そして忘れていたが…ハイエルフの俺は確かに美しい!!つまりは…妖精と思われても仕方ないだと?!ぐうの音も出ない…何か上手い交わし方はないものか…んー…。
「やはり…無言は肯定と同じです。いきなりの訪問で不審な者と疑われても仕方ないと思います。決して怪しい者ではないと誓います!!お願いします!!話を聞いてくださいッ…!!」
妖精様に会えるかは賭けだったので、本当に会えて感激です!!と鼻息荒く興奮している所を悪いんだけどさ…
「すみません…お願いは聞けません。俺…この森で静かに暮らしたいんです。体調が良くなったら出て行って下さいね」
イシスさんに似てるから助けたものの、性格は全然違うな。顔つきだって怖いけど…マイルドさが混じってるから、泣きそうな程は怖くない。当たり前か、本人じゃないんだし。もう一度、赤髪君をベットに押し戻し、布団をかけてあげる。
「良くなるまでは居てもいいですからね。俺はギルドに用事があるので出掛けますが、ちゃんと寝ていてください。もし帰られるのでしたらドアは…ありませんので勝手に出て行って下さい」
後でドアも直しておかないとな…。もう一度ポーションを詰め込んだ鞄を肩にかけ外に出た。帰ってきたら居なくなってるかもな。でも…久しぶりに誰かと会話のキャッチボールしたかも!!やっぱり良いな。少し心の寂しさが薄らいだ気がする。
「待って下さいッ!!ハァハァ…妖精様!!私もッ!!私も一緒に行きますッ!!」
「あぁんッ?!赤髪君?!」
えっ、走ったの?!あれだけ血が出てたのに?!回復しても血は増えないから安静に寝ていて欲しかったんだけど…。歩みを止めてまじまじと赤髪君を見る。どうしよ…この人が一緒だと転移魔法使いにくいな…。歩いて森を抜けるしか…くぅーさっさと転移魔法使っとけば良かったー!!付いてくんなよ!!ちゃんと良い子で寝とけよ!!
「赤髪君…?もしかして私の事ですか?!嬉しいです!!妖精様にあだ名を付けて頂けるなんて…!!申し遅れました。私はリーヤと言います。是非とも名前呼びを希望致します!!」
ふむ。名前呼びか…昔の俺ならばフラグがー!!とか騒いだろうが今はそんな事さえ懐かしく感じてしまう。少し嬉しくて笑顔で名前を呼んでみた。
「リーヤ」
「はい!妖精様!!リーヤです!!」
えっ、何?可愛すぎか?めちゃくちゃワンコ属性ですやん。大丈夫?尻尾がはち切れちゃいますよ?飛んでいっちゃいますよ?ふぅー。落ち着け俺。一旦深呼吸して心を鎮めるんだ。目を輝かせキラキラビームを繰り出すリーヤ。止めろ!!眩しい!!俺の心が…心が乱れるッ…!!
「いゃ…ちょっと名前を呼んでみただけなんで…」
「はい!何度でも呼んでください!!」
刺さった…心に刺さりましたよー!!おいおい自分にまだこんな気持ちが存在したのか?!リーヤ君が可愛すぎて辛いです。
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