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俺、孤独感が半端ない
しおりを挟む「シヴァさん、一人にしてもらってもいいですか?ちゃんと彼等にお別れを言いたいので…」
背を向けたま話しかける。誰にも顔を見られたくない。心の内を悟られたくない。
「外に居ます…また声を掛けてください」
扉が閉まる音を確認し、三人にゆっくりと近づく。やっぱりイケメンは羨ましいな…。眠っている様に目をつぶっている顔を覗き込む。まつげ長いなー。もうこの人達の瞳に俺の姿が映ることがないなんて…。嘘であって欲しかったな…。ベットに横たわるイシスさんの顔に触れた指先から冷たさが伝わってくる。
街に突如として襲撃してきた魔物の群れ。瘴気の影響か、凶暴性も増し次々と人々に襲いかかる。逃げ惑う人々、あちこちで上がる悲鳴。無数の魔物の爪痕が残る鎧から情景が伝わってくる。大変だったろうな…守る人が多い程、戦いにくいもんな。いつもより力が発揮出来なかったんだろうな。街中で戦闘だなんて…。まぁ推測でしかないけど…。
亡くなった三人を目の前にしても俺は涙も流れない。だって俺は知っているから。わかっているから。俺の魔法で生き返らせる事が出来ることを。
「あーほんと…こんな気持ち気づきたくなかったな…知らない方が幸せとはこの事か…」
生き返らせる事は全然大した事ではない。俺がやったと直ぐにバレるだろう。問題なのは今後の俺の身の振り方だ。この世界は俺の初級魔法を大魔法と言う程だ…おそらく蘇生魔法なんて使ったら…考えるだけで恐ろしい。強すぎる力は災いを呼ぶ。俺の力を悪用しようとする輩だって現れるかもしれない。誰かを盾に取られたら?恐らく従ってしまうだろう。それに…もしかしたら…怖がられちゃうかもな…。あとは気持ち悪いとか…。
「嫌われる事がこんなにも怖いなんてな…」
知らなかったわ。生き返らせたあとの皆の反応が怖い。どんな目で俺を見る?以前と変わらない態度で接してくれるのだろうか?無理だろうなー。神子様ならともかく俺は部外者だし。なんなら俺が一緒に召喚されなかったらこの人達だって死なずに済んだかもしれないし…後悔先に立たずか。やっぱり関わりすぎちゃったな。さっさと城から逃げておくべきだったわ。好きだと自覚した途端にお別れとは…。痛いわ…胸が痛すぎる。息苦しい程に痛い。
ふぅー。深い深呼吸をして心を落ち着かせる。これでお別れだ。皆に出会えて良かった…楽しい思い出をありがとう。こんな俺に恋を教えてくれてありがとう。フラグに怯えた日々も嫌いじゃなかったよ。どうか俺の事など忘れて幸せに生きてください。
「ははは…涙ってなんでこんなに…しょっぱいんだろうな…」
▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣
いつもと変わらない朝の目覚め。いつも通り顔を洗い、朝ごはんの支度をし、窓を開けて朝の空気をめいいっぱい肺に吸い込む。新鮮な空気美味しー!!これが俺の朝の日課。
お湯を沸かし紅茶の準備をする。そろそろジャムが無くなりそうだ。軽くなった瓶を手に取りパンにたっぷりと残りのジャムを塗りつける。そろそろギルドに行ってポーションを買い取って貰おう。もぐもぐとパンを頬張りながら今日の一日の予定を考える。
あの日、城から逃げてから俺は森の深層に家を建て一人で住んでいる。本当はめくるめく大冒険へと繰り出したかったのだが…よくよく考えれば、俺の容姿は目立つ上に、変装したとしても冒険者として名をあげれば身バレしてしまう。初級魔法でさえむやみやたらにぶっぱなす事が出来ない。つまり冒険者として生計を立てることは不可。別に大金を持ってても使い道もない。だから気ままにポーションを精製してはギルドに買い取ってもらい細々と暮らしている。
こんな生活を続けてどれぐらいの年数が経ったのだろう?途中で考えるのを辞めてしまった。俺の知っている人はもう居ないだろう。エレも随分と前に亡くなったと聞いたし。獣人だけの世界で異質な存在の俺は本当の意味で天涯孤独の身になってしまった。
神子様は凄いよなー。城から逃げで暫くした頃、瘴気浄化の旅に出ると偶然ギルドで耳にした。旅立つ前にどうしても会いたくて城に忍び込んだ事を思い出す。神子様ぐらいこの世界を楽しめたらなー。俺も何か変わってたのかもしれないな。最後の一口になったパンを口に放り込み、紅茶でグイッと喉の奥に流し込んだ。
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