神子召喚に巻き込まれた俺はイベントクラッシャーでした

えの

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俺、怒りを買う

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「ふぅー。あのエルフは大丈夫かな?」


手に持つティーカップを見つめ、軽く口づける。まぁ、あのジン様とクルト様が一緒なんだし、無事に帰ってくるとは思うけど。問題は好感度が上がるかどうかだよねー。


クッキーに手を伸ばし口に頬張る。バターの香りが漂い、ほんのりとした甘さが紅茶に良く合う。親指についたカスをペロリと舐める。ミスト様とシヴァ様の好感度はどうだろう?綺麗になった親指を見ながら考える。どちらにせよ、好感度は上げて貰わないとね。




僕が大好きだったBLゲーム。何回もクリアして、セリフだって覚えるぐらいやり込んだ。僕もキャラクター達と恋をしたい…愛されたいと本気で思った。何度もゲームの主人公に自分を重ねた。夢にまで見るほどだ。朝起きて一番に考えるのは皆の事。


ゲームの中に入れたら…そんなラノベみたいな都合の良い展開起こるはずない。でも、僕の強い思いが誰かに届いたのか、夢物語が実現した。


学校からの帰り道、足元が急に光だす。眩しくて目も開けられないほどだ。何これ?!突然の出来事に動くことさえ出来ないぐらい驚く。眩しさが薄れ、ゆっくりと目を開ける。


目を開けた先に居た人物。僕は驚きのあまり開いた口が塞がらない。えっ、えっ、嘘でしょ!!胸の高まりが抑えきれない。思わず心の声がただ漏れになってしまった。


嬉しさで頬が緩む。シヴァ様が!!ミスト様まで!!嘘でしょ!!嘘でしょ──────!!ほんとに?!ということは僕が主人公?!これは僕の思いが届いたって事?夢が叶ったって事だよね?つまりキャラクター達と恋ができる…。目指すはハーレムエンドしかないよね!!


でも…チラリと横を見る。んー…僕は眉間に皺を寄せ悩む。エルフ…間違いなくあの耳の形はエルフ。何故?何故エルフが?おまけにキャラクター達に負けないほどの美貌。どうなってるの?僕が知ってるゲームじゃないの?お助けキャラとか?


まっ、いっか!!僕が主人公なんだし!!ストーリーも熟知してるしね!!早く皆に会いたいな!!この楽天的な考えを後悔したのはイシス様に会いに行った時だ…。


最初のイベントはイシス様に会いに行く事!!瘴気を取り払う旅にも同行して貰うメンバーだし、早めに会っておきたい。召喚された翌日にいつも鍛えている騎士団の訓練場に会いに行った。後ろ姿でもわかる!!あの燃えるような赤い髪!!誰よりも逞しく大きな体!!


イシス様!!喜びを顔にみなぎらせ声を掛ける。しかし、振り向いたイシス様のご尊顔をみて、僕は頬が引きつる。どうして…どうして傷がないの?!どういう事なの?!尋ねるがのらりくらりと躱される。意地でも聞き出してやる!!僕は神子だよ!!


イシス様の話を聞いて怒りのあまり、唇の端がピクピク引き攣るのがわかる。あのエルフめ!!何してくれてるのさ!!怒りの気持ちが抑えきれない。今すぐ詰め寄り罵りたい衝動に駆られる。


このイベントは最初の出会いが肝心なのに!!名前呼びでさえイシス様に拒否される始末…。召喚されたその日のうちに何でイシス様に会うんだよ!!そんなイベント聞いた事ない!!新しくイベントを作るな!!


まぁいい。イシス様の好感度は次のイベントで上げればいい。次はユスティ様か…晩餐会ではエレとも楽しく会話出来たし、好感度は上がってるはず!!


召喚時はニコ様の容態が悪化したから立ち会えなかった。次はニコ様に会いに行って、親睦を深める。いよいよ死期が近づくニコ様。私が亡き後はユスティとエレを頼みますって僕にお願いする感動のイベントだね!!



意気揚々とニコ様のお見舞いに部屋を訪ねようとした時、あのエルフに出会った。怒りが沸々と湧いてくる。よくもイシス様とのイベントを…!!おまけに僕の護衛になるはずだったジン様とクルト様までも…!!




全身が怒りで震える。思いが耐え切れず爆発したようにエルフに向かって叫んだ。






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