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俺、気付く
しおりを挟む団長様が自分の顔を触り、俺を睨みつける動作を繰り返している。まぁ、いきなり魔法をかけられたんだ、不信に思って眉に皺ぐらい寄るよな。うんうんと頷き自分の顎に手を添え一人納得していると、突然、視界が開け目の前に巨体が…。
「君が…」
団長様の喉からかろうじて漏れた呟き。そして、俺の前に跪き、視線を合わせてくれる。優しさなんだろうけど…怖い顔が近くに…意識が遠のきかける。傷が無くなっても怖い物は怖かった。
「名前を聞かせてくれないか?俺は騎士団団長のイシスだ」
声は静かだか極めて柔らかさを含んでいる。顔は怖いが態度は軟化したな。名乗る時は失礼だからフードを外さないと…。フードをずらし視野が広がる。暖かなそよ風が顔にあたり気持ちがいい。
「カーラです。召喚でこの世界に…」
あんぐりと口を開けたイシスさんが目に入り、会話が止まってしまう。何?!どうしたの?!不安な感覚が湧いてくる。
「まっ、まさか!!神子様とは!!知らなかったとはいえ、御無礼を。申し訳ありません」
態度を改めて深く頭を下げるイシスさん。止めろー!!おもてをあげい!!
「いや…俺…神子じゃ…」
俺、部外者なんで…。言葉に詰まりながらも必死に訴え、関係ないですよと心の中で呟き顔を背ける。
「神子様ではないと…?これだけの治癒魔法が使えるのに…」
「神子は黒目、黒髪だと…俺は違いますから…」
「しかし…」
ぇぇい!!うるさい!!違うったら違うんだよ!!ゲームに巻き込むんじゃない!!話題を変えよう。
「目はどうですか?」
「私とした事がお礼も申し上げていないとは!!ありがとうございます。驚きです。もう二度と…以前の様に見る事が出来ないと思っていた世界が戻ってきました。感謝しきれません…」
急な敬語に不快感を抱く。止めろ!!団長様に敬語使われるとか無理!!出会った時の態度ぐらいが丁度いいのよ!!フラグは早めに摘むべし!!
「良かったです。あと、敬語はちょっと…」
「しかし…」
「俺は神子ではないので…」
「しかし…」
思ったより手強いな…あっ!そうだ!!
「敬語は…イシスさんとの距離を遠く感じます…」
どうよ?これなら、俺が強制した訳でもなく、自発的に敬語をやめてくれるはず!!
「ッ!!わっ、わかり…んんッ!わかった」
はぁ────────良かった…これでフラグは消えたな。嬉しくてイシスさんに微笑む。念の為に名前も、様付けを禁止して呼び捨てして欲しいとお願いしておく。護衛の二人は無理でも、地位が高そうな団長様ならオッケーでしょ。おっと、忘れるとこだった。
「あの…騎士団の方々が訓練している姿を見たいのですが…」
「あっ、あぁ。勿論、許可する。こっちだ」
なんだろう?イシスさん歩き方おかしくなってる。手と足が一緒に出ちゃってるよ…。大丈夫か?感激し過ぎたのかな?まぁーこれでイシスさんの俺に対する印象はバッチリよ!!もしもの時は助けて貰おう。
様々な声や響きが交差し賑わいをみせる訓練場。着いて思った事はやっぱり獣人しかいない。気になる事をイシスさんに聞きつつ、クルトさんとジンさんの訓練姿を見る。剣さばきが追いつかない…。ハイエルフの動体視力を持ってしてもギリギリだ。はぁーカッコイイわ。モテるわ。そしてあなた達、絶対に強いですね。俺への警戒心の高さがわかる。つまり要注意人物扱いって事ね。俺、なるべく穏便に逃げよう。
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