1 / 41
俺、部外者です
しおりを挟む急に目の前が明るくなった気がして、ゆっくりと重い瞼を持ち上げる。季節は夏のはずなのに、部屋がやけにひんやりとしている。あれ?クーラーの温度こんなに低い設定にしてたかな?近くにあるだろうリモコンを、手探りで探すが見つからない。仕方なしにもう少し瞼を持ち上げる。
「おぉー!!これは…お二人も?!」
あぁ?知らないおっさんの声を疑問に思い、今度は勢いよく瞼を上げる。えっ?なっ…なんだー?!俺の部屋に知らないおっさんが沢山…えっ、どちらさん?混乱も限界突破すると冷静になるとは本当らしい。
キョロキョロと辺りの様子を伺う。どうみても…俺の部屋じゃない…壁も床も全て石造りだ…。ってか日本じゃない!!だって…だって…この人達…動物の耳としっぽがある!!えっ?!ファンタジーに出でくるお決まりの獣人じゃないか!!
まさか…新しいイベントか?こんな情報あったかな…?自分の手を見つめ、顔をぺたぺたと触ってみる…やっぱり…VRMMORPGのゲームキャラのままだ…。俺は寝落ちしてたのか?
「えっ?えっ?嘘ー!!」
突然、隣から甲高い喜びを含んだ叫び声が聞こえる。俺に出せない様な、耳がキーンとなる程高い声だ。
「ミスト様がいるー!!シヴァ様までー!!」
誰かの名を呼び、黄色い悲鳴を上げている人に目がいく。えっ…日本人?可愛い顔してるけど、男の子だよね?ってか、制服着てる…高校生ぐらいかな。何?どいうことだ…。VRMMORPGのゲームの中じゃないのか…?わからん。情報が足りなさ過ぎる。とりあえず、事情を知っていそうな高校生君の独り言に耳の神経を集中させる。
「まさか夢にまで見たBLゲームに…僕が神子!!これは……で……だから…やっぱり……ハーレムエンドだよね!!」
ハーレムエンド…?あぁ…そういう事。そうですか…なるほど。俺、察しちゃいました。つまりこれは、アレでしょ?ラノベで良く見かけるアレでしょ?ここがBLゲームの中って事なんでしょ?そしてお隣の高校生君は召喚された神子。所謂、主人公ですね。さしずめ俺は巻き添えで召喚されちゃいました的な感じですか?
「でも…隣のキャラ…?…見たことないけど…お助けキャラかな…」
大きな目を細くして、首を傾げ俺を見つめている高校君。俺の事ですか?いえ!!違います!!部外者です!!
しかし、困ったな…本当にBLゲームだとしたら…ラノベの展開では…巻き添え召喚されちゃった方は悲惨な目とかに合うのがお決まりだよね?モブレとか…奴隷落ちとか…なんにせよ、攻略対象と主人公をくっつける為に必要な脇役。
いや、無理。悪いけど俺はゲームには関係ないなら。巻き込まないでね。よし、俺は…無口キャラで通す!!元々、そんなに人と話すのは得意じゃない。適当にこの世界の情報を集めてトンズラする!!
「あのッ!!ここは?!」
沈黙を破り、嬉しさが隠しきれない声で高校生君が質問する。
「いきなりの事で驚きでしょう。申し訳ありません。ここはイーリアス国といいます。私はこの国の宰相を務めるシヴァと申します。実は…この世界に未曾有の危機が迫り、一縷の望みをかけて、異世界から神子様を召喚したのです…」
やっぱりと高校生君が呟き、小さくガッツポーズをしている…。あぁ嫌な予感がする…。
「まさかお二人も召喚出来るとは…一体どちらが神子様なのか…」
高校生君と俺を見比べ、俺から視線を外そうとしないシヴァさん。いや、俺、部外者ですから!声を大にして叫びたいが、チキンハートなのでそんな大それた事は出来ない。目で必死に俺じゃないと訴える。何故かシヴァさんの耳としっぽがソワソワし始めた…。あー通じてないわ。これは困らせてしまった…。でも俺も困ってるから!!
「僕!!僕が神子です!!光魔法を使えます!!」
無邪気そうに元気よく手を挙げて主張する高校生君。光魔法って…俺も使えるんじゃ…。よし、黙っておこう。面倒事は御免だ。
「だって!僕は、この世界にはない黒髪に黒目だよ?!そのエルフは髪銀色じゃん!!」
初対面の、おまけに年上の人に向かってその物言いはいけません。でも…そうなんです。俺は今エルフなんです。それもただのエルフではなく、上位のハイエルフ。容姿はエルフを凌駕し神秘的。透き通るような白い肌、誰もがはっと息を呑むほどの顔は、芸術的なまでに美しい。そして、魔力も攻撃力も非常に高い。つまりオールマイティ。
俺も心の中で主張します!!
俺は部外者だ──────!!
27
お気に入りに追加
1,984
あなたにおすすめの小説

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる