神子召喚に巻き込まれた俺はイベントクラッシャーでした

えの

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俺、部外者です

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急に目の前が明るくなった気がして、ゆっくりと重い瞼を持ち上げる。季節は夏のはずなのに、部屋がやけにひんやりとしている。あれ?クーラーの温度こんなに低い設定にしてたかな?近くにあるだろうリモコンを、手探りで探すが見つからない。仕方なしにもう少し瞼を持ち上げる。



「おぉー!!これは…お二人も?!」



あぁ?知らないおっさんの声を疑問に思い、今度は勢いよく瞼を上げる。えっ?なっ…なんだー?!俺の部屋に知らないおっさんが沢山…えっ、どちらさん?混乱も限界突破すると冷静になるとは本当らしい。


キョロキョロと辺りの様子を伺う。どうみても…俺の部屋じゃない…壁も床も全て石造りだ…。ってか日本じゃない!!だって…だって…この人達…動物の耳としっぽがある!!えっ?!ファンタジーに出でくるお決まりの獣人じゃないか!!


まさか…新しいイベントか?こんな情報あったかな…?自分の手を見つめ、顔をぺたぺたと触ってみる…やっぱり…VRMMORPGのゲームキャラのままだ…。俺は寝落ちしてたのか?


「えっ?えっ?嘘ー!!」


突然、隣から甲高い喜びを含んだ叫び声が聞こえる。俺に出せない様な、耳がキーンとなる程高い声だ。


「ミスト様がいるー!!シヴァ様までー!!」


誰かの名を呼び、黄色い悲鳴を上げている人に目がいく。えっ…日本人?可愛い顔してるけど、男の子だよね?ってか、制服着てる…高校生ぐらいかな。何?どいうことだ…。VRMMORPGのゲームの中じゃないのか…?わからん。情報が足りなさ過ぎる。とりあえず、事情を知っていそうな高校生君の独り言に耳の神経を集中させる。


「まさか夢にまで見たBLゲームに…僕が神子!!これは……で……だから…やっぱり……ハーレムエンドだよね!!」


ハーレムエンド…?あぁ…そういう事。そうですか…なるほど。俺、察しちゃいました。つまりこれは、アレでしょ?ラノベで良く見かけるアレでしょ?ここがBLゲームの中って事なんでしょ?そしてお隣の高校生君は召喚された神子。所謂、主人公ですね。さしずめ俺は巻き添えで召喚されちゃいました的な感じですか?



「でも…隣のキャラ…?…見たことないけど…お助けキャラかな…」


大きな目を細くして、首を傾げ俺を見つめている高校君。俺の事ですか?いえ!!違います!!部外者です!!


しかし、困ったな…本当にBLゲームだとしたら…ラノベの展開では…巻き添え召喚されちゃった方は悲惨な目とかに合うのがお決まりだよね?モブレとか…奴隷落ちとか…なんにせよ、攻略対象と主人公をくっつける為に必要な脇役。



いや、無理。悪いけど俺はゲームには関係ないなら。巻き込まないでね。よし、俺は…無口キャラで通す!!元々、そんなに人と話すのは得意じゃない。適当にこの世界の情報を集めてトンズラする!!



「あのッ!!ここは?!」


沈黙を破り、嬉しさが隠しきれない声で高校生君が質問する。


「いきなりの事で驚きでしょう。申し訳ありません。ここはイーリアス国といいます。私はこの国の宰相を務めるシヴァと申します。実は…この世界に未曾有の危機が迫り、一縷の望みをかけて、異世界から神子様を召喚したのです…」



やっぱりと高校生君が呟き、小さくガッツポーズをしている…。あぁ嫌な予感がする…。



「まさかお二人も召喚出来るとは…一体どちらが神子様なのか…」


高校生君と俺を見比べ、俺から視線を外そうとしないシヴァさん。いや、俺、部外者ですから!声を大にして叫びたいが、チキンハートなのでそんな大それた事は出来ない。目で必死に俺じゃないと訴える。何故かシヴァさんの耳としっぽがソワソワし始めた…。あー通じてないわ。これは困らせてしまった…。でも俺も困ってるから!!



「僕!!僕が神子です!!光魔法を使えます!!」


無邪気そうに元気よく手を挙げて主張する高校生君。光魔法って…俺も使えるんじゃ…。よし、黙っておこう。面倒事は御免だ。


「だって!僕は、この世界にはない黒髪に黒目だよ?!そのエルフは髪銀色じゃん!!」


初対面の、おまけに年上の人に向かってその物言いはいけません。でも…そうなんです。俺は今エルフなんです。それもただのエルフではなく、上位のハイエルフ。容姿はエルフを凌駕し神秘的。透き通るような白い肌、誰もがはっと息を呑むほどの顔は、芸術的なまでに美しい。そして、魔力も攻撃力も非常に高い。つまりオールマイティ。








俺も心の中で主張します!!



俺は部外者だ──────!!







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