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「ミルルッ!!こんなに嬉しい日はない!!ミルルも私達と家族になりたいと思っていてくれたんだね。私達の一方的な想いかと不安だったが…両想いだったとは!」
もう離してあげれないよと背後から抱き締められ耳元で囁かれた。ブワッっと耳としっぽの毛が一瞬で逆立つ。エールを抱きしめる手に力が籠る。離してあげない…離してあげないだと?どうゆう事だ?両想いだとか言ってたし…俺を牢屋にぶち込むつもりだったのでは?
「デュオ…俺の事、捕まえないのか…?」
「ふふ、何を言っているんだい?今腕の中に捕まえているだろう?」
耳にダイレクトに響く甘い声。だが、会話の中身は全然甘くない。今捕まえていると、つまり、つまりだ!牢屋に入れるのではなくデュオの目の届く範囲での監視。じゃぁ、両想いって何の事?俺、牢屋に入れられたいとか思ってないんだけど。
「牢屋に入れたりしないのか?」
単刀直入に聞いてみた。まどろっこしいのは嫌いだ。当たって砕けろ。返答によって俺は身の振り方を考えなければいけない。目を瞑り判決の言葉を待つ。
「ミルル。誰かに何か言われたのかい?どうして牢屋なんて言葉が…。どんな奴に言われた?怒らないから教えてくれるかな?」
「ミルル。僕にも教えて?誰かに言われたの?」
二人の表情は見えなかったが、どす黒い雰囲気を感じると同時に前と後ろからの腕の圧が増す。二人にプレスされ息を吸う事さえ辛い。ぐっ…こんなに強くされたら…内蔵飛び出そう。おぇー。
「んっ、そんなに強くされたら…ぐっ…出ちゃうからぁッ」
ぐるじぃやろぉ!!やめろ!息も絶え絶え、涙目で離して欲しいと至近距離のデュオに訴えると、ぐふっと鼻血を噴き出しながら後ろにぶっ倒れた。
俺とデュオの服に鮮血が飛ぶ。そして敷かれた絨毯に出来た血痕の数々。呆然と倒れたデュオを見下ろす。何が起きたんだ?!何たる惨劇の現場だ。おびただしい量の鼻血を撒き散らし床に倒れる王様。返り血を浴びたような姿の俺。今誰かに見られたら確実に首をはねられる構図だ。
「ちょっ、おまっ、だいじょう…」
ドンッ!!
「国王様!!何事ですかッ!!」
甲冑を纏った人が部屋の中に飛び込んできた。そして目の前の光景に絶句したのか一言も声を発しようとしない。あぁ、俺死んだ。牢屋なんて生ぬるいもんじゃない。拷問死かもしれない。エールからそっと腕を外す。
「エール…ゴメン…俺、お前のお父さ…」
「ミルル、ゴメンね。お父様のせいでこんなに汚れちゃって」
俺の会話を遮り眉を八の字してエールが謝った。汚物を見るような目でデュオを見ながら。そして甲冑の人に近づくと、テキパキと指示を出し、また俺の元に帰ってきた。
「ミルル。一緒にお風呂に入ろー!!」
「あっ、えっ、あぁ、風呂は有難いけど…」
未だに意識の回復しないデュオが心配なのだが…。そんな思いが伝わったのか、エールがあれぐらいどうってことないよと教えてくれた。後ろめたさを残しつつ、エールに腕を取られ風呂場に向かった。
風呂最高だった。まず泡風呂ってものを初体験した。こんなの初めてだと嬉しくてニコニコしていると、お父様が聞いたらまた鼻血吹き出すよとエールもニコニコ笑っていた。何ソレ?全然笑えない。それからも洗いっこをしたり、泡を頭に乗っけて遊んだり、すっかりデュオの事など忘れて長湯してしまった。また泡風呂入りたいな。
そして風呂上がり、エールが真剣な表情で俺を見つめてくる。
「本当に僕のお母様になってくれますか」
俺にはその顔があまりにも不安で今にも押しつぶされてしまいそうに見えて、堪らずエールを強く抱き締めた。俺は馬鹿だ。自分の保身の事ばかり考えていた。エールにこんな顔をさせたくなかった。いつも笑っていて欲しい、エールが嬉しいと俺も嬉しい。想いは一緒だ。ならば答など決まっているだろう。ペロリとエールの濡れた頬を舐めた。
もう離してあげれないよと背後から抱き締められ耳元で囁かれた。ブワッっと耳としっぽの毛が一瞬で逆立つ。エールを抱きしめる手に力が籠る。離してあげない…離してあげないだと?どうゆう事だ?両想いだとか言ってたし…俺を牢屋にぶち込むつもりだったのでは?
「デュオ…俺の事、捕まえないのか…?」
「ふふ、何を言っているんだい?今腕の中に捕まえているだろう?」
耳にダイレクトに響く甘い声。だが、会話の中身は全然甘くない。今捕まえていると、つまり、つまりだ!牢屋に入れるのではなくデュオの目の届く範囲での監視。じゃぁ、両想いって何の事?俺、牢屋に入れられたいとか思ってないんだけど。
「牢屋に入れたりしないのか?」
単刀直入に聞いてみた。まどろっこしいのは嫌いだ。当たって砕けろ。返答によって俺は身の振り方を考えなければいけない。目を瞑り判決の言葉を待つ。
「ミルル。誰かに何か言われたのかい?どうして牢屋なんて言葉が…。どんな奴に言われた?怒らないから教えてくれるかな?」
「ミルル。僕にも教えて?誰かに言われたの?」
二人の表情は見えなかったが、どす黒い雰囲気を感じると同時に前と後ろからの腕の圧が増す。二人にプレスされ息を吸う事さえ辛い。ぐっ…こんなに強くされたら…内蔵飛び出そう。おぇー。
「んっ、そんなに強くされたら…ぐっ…出ちゃうからぁッ」
ぐるじぃやろぉ!!やめろ!息も絶え絶え、涙目で離して欲しいと至近距離のデュオに訴えると、ぐふっと鼻血を噴き出しながら後ろにぶっ倒れた。
俺とデュオの服に鮮血が飛ぶ。そして敷かれた絨毯に出来た血痕の数々。呆然と倒れたデュオを見下ろす。何が起きたんだ?!何たる惨劇の現場だ。おびただしい量の鼻血を撒き散らし床に倒れる王様。返り血を浴びたような姿の俺。今誰かに見られたら確実に首をはねられる構図だ。
「ちょっ、おまっ、だいじょう…」
ドンッ!!
「国王様!!何事ですかッ!!」
甲冑を纏った人が部屋の中に飛び込んできた。そして目の前の光景に絶句したのか一言も声を発しようとしない。あぁ、俺死んだ。牢屋なんて生ぬるいもんじゃない。拷問死かもしれない。エールからそっと腕を外す。
「エール…ゴメン…俺、お前のお父さ…」
「ミルル、ゴメンね。お父様のせいでこんなに汚れちゃって」
俺の会話を遮り眉を八の字してエールが謝った。汚物を見るような目でデュオを見ながら。そして甲冑の人に近づくと、テキパキと指示を出し、また俺の元に帰ってきた。
「ミルル。一緒にお風呂に入ろー!!」
「あっ、えっ、あぁ、風呂は有難いけど…」
未だに意識の回復しないデュオが心配なのだが…。そんな思いが伝わったのか、エールがあれぐらいどうってことないよと教えてくれた。後ろめたさを残しつつ、エールに腕を取られ風呂場に向かった。
風呂最高だった。まず泡風呂ってものを初体験した。こんなの初めてだと嬉しくてニコニコしていると、お父様が聞いたらまた鼻血吹き出すよとエールもニコニコ笑っていた。何ソレ?全然笑えない。それからも洗いっこをしたり、泡を頭に乗っけて遊んだり、すっかりデュオの事など忘れて長湯してしまった。また泡風呂入りたいな。
そして風呂上がり、エールが真剣な表情で俺を見つめてくる。
「本当に僕のお母様になってくれますか」
俺にはその顔があまりにも不安で今にも押しつぶされてしまいそうに見えて、堪らずエールを強く抱き締めた。俺は馬鹿だ。自分の保身の事ばかり考えていた。エールにこんな顔をさせたくなかった。いつも笑っていて欲しい、エールが嬉しいと俺も嬉しい。想いは一緒だ。ならば答など決まっているだろう。ペロリとエールの濡れた頬を舐めた。
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