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後日談②
しおりを挟む書類仕事は得意なはずなのに、今日は全然捗らない。原因はわかっているのだ。誰も座っていない席を一瞥し、手元の書類に目を落とす。はぁ…。
コンコン
「マーベル副隊長。失礼致します!!」
「入れ」
きっちりと自衛団の制服を着こなした、如何にも好青年風の男が入ってきた。
「今日締切の書類を持って参りました!」
「あぁ、そこに置いておいてくれますか」
減るどころか山積みになっていく書類。もう少しでなだれが起きそうだ。はぁ、今日何度かも分からない溜息を着き、手の中のペンを器用にクルクルと回す。
「そーいえば、クラウス隊長を見掛けましたよ!いつもの隊服じゃなく私服だったので最初は気付きませんでしたが…なんか…お見合いかな?結構いい感じの雰囲気でした!!」
屈託のない笑顔での残酷な報告。悪意がないからこそタチが悪い。いい雰囲気だと?あの堅物の男が?そう思わせる程の態度をとっていたと言うのか?久しぶりに腸が煮えくり返る思いがする。おかげでペンかダメになってしまった。
私のクラウスを独り占めしているだけでも許せないのに。甘い雰囲気を…。エミリア嬢に対する嫉妬と憎しみで燃えたぎる目を部下に向けると、ひっ!!っと慌てて足をもつれさせながら部屋を出ていった。
あぁ、私の可愛いクラウス。どうしてくれようか?
✱
「昨日はお疲れ様でした」
クラウスにコーヒーを渡しなが声を掛ける。だか触れて欲しくない様で、あぁ、とだけ短い返事で話題を早々に切り上げられた。
私の顔を見ようともしないとは…何かやましい事があるのか?信じたいと思うのに、昨日の部下の会話が頭の中で再生され、胸の奥から沸々と湧き上がるようなドス黒い感情に蝕まれてゆく。
今、クラウスに触れたら酷い事をしてしまいそうだ。いつもは朝のスキンシップとばかりに過剰なまでに愛撫するが、当分は控えた方が良さそうだな。
自分の中で冷却期間を設け、クラウスと関係を持つ前の様に接する事を心掛けた。
触れられない日が3日、4日と増えるにつれて、クラウスが何かを訴えるような目線で見てくるようになった。だが何も言ってこない。勿論、知らないフリを決め込む。
当たり前の様に毎日触れていたのに…あの可愛らしい喘ぎが聞けないなんて…はぁ、押し倒したい、隊服を剥ぎ取り犯したい。声が枯れるまで貪りたい。
仕事中も不埒な事で頭がいっぱいで、クラウスの悶える様子を想像するだけで軽く勃起してしまう事もしばしば。全くもって仕事にならん。家に帰り寝室のドアを開けると、全裸姿のクラウスが妖艶に誘っているなどの素晴らしい幻覚を見るようにもなった。もはや禁断症状一歩手前…いや、つま先ぐらい踏み込んでいるかもしれない。
そんなふうに悶々とした日々をやり過ごしている私の耳に飛んでもない会話が飛び込んできた。
クラウスが綺麗な女性と宝石店に入って行くのを見たと…。
こんなパワーワードがあっていいのだろうか?いや、いいわけあるかっっ!!クラウス覚悟しておいて下さい。あなたの恋人は誰なのか…その体にたっぷりと教え込んであげますよ。
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