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後日談①
しおりを挟む机に座り黙々と仕事をこなす愛しの恋人クラウス。
そっと近づき後ろから抱き締め、姿に似合わず可愛すぎるフサフサの耳を甘噛みしながら囁く。
「ねぇ、クラウス?今度の休みはあなたの家でご飯などいかがです?」
面白いほどシッポが忙しなく揺れるのを確かめ、歯を少し立て刺激してやる。
「んっ、マッ、マーベル…」
直ぐに甘い声を漏らす。困ったものだ誰かに聞かれたらどうするんだ?殺さなくちゃいけなくなるだろ聞いた相手を。だか、私が近づくだけで期待した目で見てくるクラウスが堪らなく可愛い。可愛すぎて今すぐにでも組み敷きたい欲求を奥歯を噛み締め抑え込む。
「いつも私の家でしょう?たまにはクラウス家でゆっくりとデートしたいのです」
フッ~っと首筋に息をかけペロリと舐めると、びくりと肩が跳ねた。小さな喘ぎ声を了承の返事と解釈し、そっと体を離す。あぁ、なんて次の休みが待ち遠しいんだ。
✱
「クラウス。今日はお招きありがとうございます。これお菓子です。後で一緒に食べましょう」
「あぁ。すまないな」
休みの日でも、堅苦しさが抜けない不器用さ。あぁ…今日もいつもの様にたっぷり可愛がって啼かせてあげたい。だが、ダメだ。今日はクラウスにお仕置する日なのだから。
事の発端は、数日前に遡る。
いつも表情の乏しいのクラウスがやけに険しい顔をして自警団の詰所に入ってきた。椅子に座ると直ぐに腕を組み何やら考え込んでいる。
「クラウス?どうかしましたか?凄い顔になってますよ」
思い詰めた姿を見かねて声を掛けてみた。だからクラウスはこちらに顔を向けようともしない。
「クラウス?聞いて…」
「エミリア嬢が…」
被せるように発せられた名前にピクリと眉が動く。エミリア嬢だと?公爵家の娘のか?
「親がどうしてもと押し切られたようでな、エミリア嬢との見合いの場を設けてしまった…。無碍に出来るような相手でもない。恋人が居るとは伝えてあったんだが…それでもと引かず…どうしたものか…」
はっ?見合い?冗談だろ?自分の中で冷静が失われていく。今すぐにでも押し倒し、お前が好いている男がどんなに淫乱で厭らしく可愛らしいのかを見せつけてやりたい。勿論そんな勿体ないことはしないが。
「エミリア嬢は公爵家の?確かにそれなら無碍には出来ませんね。いいんじゃないですか?お見合いぐらい」
あらゆる理性を掻き集め、いつもの様に淡々と答える。私だっていい大人だ。そう、心の広い大人だ。
エミリア嬢に殺意など持ってはない。
だがこれ以上話すと本性が出そうだ。口から溢れ出そうになる嫉妬の言葉を押し殺し、クラウスに微笑みかけた。
「すまない。マーベル」
そして見合い日が明日だと知り、その日、団員に対する指導がいつもに増して厳しくなったのは仕方がない事だ。
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