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しおりを挟む「今月の売上も凄いですねー!また、例の常連さん新作買って行きましたよ!!来月も新作期待してますよ!!」
「そうですか。新作は考え中なのでお楽しみに。では、これで」
路地裏をフードを深く被り、人目をさける様に急ぎ足で店を後にした。自警団の詰所に足を踏み入れ、いつもの様に仕事をしている部屋に向かう。
「マーベル。今日は遅かったな」
自警団を束ねている隊長クラウスが、私を見ることなく問うてくる。いつ見てもいい男だ。制服の下に鎧を着ているような体格。性格も至って真面目。強すぎる正義感のせいで不器用な所も魅力的だ。そして野性味あふれる顔。近寄り難いが、フサフサの耳としっぽの存在が相まってか、皆に慕われている。
この超優良物件は、結婚適齢期を過ぎても、全然結婚する素振りをみせない。いや、見合い等の打診はあるが、仕事を理由に断り続けているのだ。だが、本人の意志など関係ない。こんないい男を周りが放っておくはずがない。体の関係だけでも、一夜だけでも抱いてくださいとひっきりなしに誘いがある。しかし、真面目なクラウスはそれさえも断る。
そして、私は…そんな男を抱きたい…組み敷きたいと思っている…。私の下で喘ぐクラウス…絶対に可愛い!!だが、そんな事は現実的に有り得ない。いくら男と付き合う事が一般的であろうと、この堅物をどうこうするのは不可能。いずれクラウスが結婚したら、私も適当に親に紹介された人と結婚するだろう。
「すみません。人に道を聞かれ案内していましたので」
「そうか。明日は休みだろう?久しぶりに酒でもどうだ?俺も早めに仕事が終わる」
「久しぶりですね。いいですよ。場所はどうしますか?」
「俺かお前の家にしよう。外で飲むと色々と面倒だ…」
確かに…。私達二人は嫌でも人目を惹く。クラウスは勿論だが、私もだ。自分で言うのも何だが、整い過ぎた目鼻立ちが冷淡な印象を与え、抱きたい、抱かせてくれとのお誘いが後を絶たない。残念だが私は抱きたい側だ。一度だけ抱かれる側の気持ちを知りたくて、抱かれた事があるが…私には無理だ。
「私の家でどうですか?お休みですし、料理でも作ってもてなしますよ?」
「では俺は酒でも持っていこう」
*
ふぅー。家に帰り一息つく。誘いの話を淡々と受け答えをしていたが、明日が楽しみでしょうがない!!あぁ~今日もクラウスは可愛かった…。休みを一緒に過ごすなんて…まるで恋人みたいじゃないか!!食事を誘う時の伏し目がちな顔なんて…堪らんな。
そして、今日も今日とてクラウスの事を思い、私は内職をする。この内職、私のクラウスに対する想いが強すぎるおかげか、大成功してしまった。だが、皆に知られる訳にはいかない。
なんせ、私がしている内職…それは…ラブグッズの開発だ…。きっかけは、クラウスを想い自分を慰めていた時にふと、挿入され善がる姿をマジマジと全身くまなく眺めたいと思った事だ。もし、お尻バイブで前立腺マッサージをされ続けたら、クラウスはどんな反応をするのか…挿入するモノの形状は?大きさは?使う素材…妄想が膨らみ過ぎた結果…いつしか数え切れないほどのラブグッズを開発していた…全くもって無駄な才能だ…。
しかし、放置しておくには勿体ない。そうだ!!商業ギルドで登録し販売しよう!!購入者の意見も聞けるかもしれないし、新しいグッズを製作する為のヒントに繋がるかもしれない。そうして、路地裏の目立たない所に店を構えて販売する事とした。もちろん私の名前は一切出さない。最初は娼館にギルドを通して商品を格安で卸して貰った。所謂、お試し価格。
思惑通りラブグッズは好評だった。店だけではなく、娼館を利用する者も欲しがった。特に貴族層だ。新しい物好きが多く、未知なる刺激が欲しいという、探究心、好奇心から買い求める。私は商売の才能もあったんだな。売れ行きは好調で、太客も勿論居る。今月はまだ新作を開発していない。明日は休みだ…クラウスが来るまでゆっくりと没頭出来るな。
応援ありがとうございます!
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