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もふもふは離れ難い《番外編》
しおりを挟むクロノたんを押し退け出来た二人の隙間は秒で埋まった。そう、クロノたんが一層力を込めて熱い抱擁をしてくれたからだ。嬉しい。嬉しいんだけどね…ぐっ…ぐるじい…これは、いつぞやのデジャヴでは…。落ちる!!このままでは意思が飛んでしまう!!
「ぐっ、グロノっっ…」
腕をバンバンと強めに叩き必死に訴えかけた。だが、俺の思いは届かず緩まることのないがっちりホールド。ダメ…もうダメだ…。薄れゆく意識の中で思う。次、目が覚めてもクロノたんが傍に居てくれますように。お願いします。離れていかないで…。切に思いながら俺は意識を手放した。
▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣
ちゃぷん。
んっ、温かい…何だろう?なんだか気持ちいいな…。幸せの中に浮いてるみたい。ずっとここに居たい。ここから出なくない。丸まった身体を更に小さく丸めて縮こまる。安心の膜に覆われてるみたいだ。
「レイ…レイ…」
小さな声で俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。これはクロノたん?夢の中でも変わらずイケボだわ。腰にくる。ねぇ、もっと呼んでよ。俺の名前をもっと呼んで…。
「レイ…レイ…ぐっ、愚かな俺を赦してくれ。もっと早くアイツの狙いに気が付いていれば…こんな事には…」
あれ?もしかしてクロノたん自分を責めてるの?違うよ!!違うんだよ!!クロノたんが自分を責めることなんて何も無いんだよ!!伝えたいのに思うように身体が動かない。俺の身体のくせに言う事をきけよ!!
「どんな事からもお前を守ると誓ったくせに…無様なもんだ。自分の妻を守る事も出来なかった情けない俺を…お前はどう思うのだろうな…レイ…」
消え入りそうな聞いた事の無い弱々しい声で名前を呼ばれた。俺の愛しのクロノたんが弱っている!!早く助けてあげなくちゃと思うのに動かない身体がもどかしい。
「離してやれないんだ…手放してやれない。こんな目に遭わせておいても…無理なんだ。お前が居ない世界など…生きる価値もない。愛しているんだ。どうしようもなく。お前は俺の全てだ。レイ…傲慢な俺を赦してくれ…」
痛いほどの深い愛が全身に伝わってくる。心が揺さぶられ、徐々に意識も覚醒してきた。あぁ、やっと身体が自由に動く。ゆっくりと瞼を持ち上げ、自分の置かれている状況を把握しようと目を動かす。ここはお風呂か…?んっ?ってことは…クロノたんと一緒にご入浴中?!最高の目覚めです!!ありがとうございます!!さてと…話し合いといきますか。
俺は身体を暴かれた後、クロノたんから離れる事ばかり考えていた。それは俺の心の保身の為だ。他人に触られた俺など不要だと切り捨てられるのが怖かった。そんな事あるはずないと頭では分かっているが不安だった。クロノたんの顔を見るのが怖くて自分から離れる事を決めた。クロノたんの気持ちも考えずに…。愚か者は俺の方だよ?手放せないのも俺の方。だからね、俺にも悔いさせて。感情を共有させて。この想いを伝えさせて。
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