俺の可愛い皇帝陛下〜けしからんモフらせろ!〜

えの

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もふもふは心の拠り所《番外編》

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ゆっくりと此方に近づくクロノたんは未だに表情を変えない。


歩く度に拳から絨毯にポツポツと黒い染みを作る様はラスボス感がただよい、俺でさえ声を掛けるのを躊躇う程だ。まずは謝らないと…それから…それから…クロノたんに別れを…。ぐっ。自分で決めた事なのに胸いっぱいに悲しみが広がり苦しい。片手で胸に触れた時に気づいた。あっ、そう言えば…上半身肌けてるなと。近くのシーツを寄せ集め露になった胸を隠す。


「ックロノ…申し訳ごさいません。この様な姿を晒すなんッ…」


「黙れッ!!」


一喝し、クロノたんは俺の居るベッドを通り過ぎた。えっ、呆然とし歩く姿を目で追う。するとクロノたんはレイモンドを横抱きにし、あろう事か部屋から出ていってしまった。えっ?!おっ、俺は?!レイモンドの方が優先って…いや、分かるよ。縛られてるしさ。怪我でもしてたらってさ。俺はゼダ様とベッドの上だったし。もしかして、不貞だと思われた?有り得る。最後に会った時も喧嘩別れだし…。



「最悪…」


独り呟いた言葉は大きく部屋に響いた。今は死んだように横たわったまま動かないゼダ様と俺の二人だけだ。先程からチラチラと目の端に姿が入るから恐ろしい。本当に死んでたらどうしよ…。一応、隣国の王子様だし、今しがたまでの無礼な行いを赦した訳じゃないが…。生死の確認位はしてやろう。無論、手当なんて致しませんよ!!


ベッドから足を下ろし、ゆっくりと絨毯に触れる。一歩一歩よろけながら近づくと、小さくヒューヒューと呼吸をする音が聞こえた。はぁ…。生きてる。手足はあらぬ方向を向いているが…死ぬよりはマシだろう。あまり見ているものでもないな。身にまとっていたシーツを上にかけてやりながら、これからの事を考えるが、後ろ向きな考えしか思い浮かんでこない。


「何をしているッ!!」


背後から刺さった先程よりも怒気を孕んだ声に身体が竦み上がる。落ち着け、落ち着くんだ!!ちゃんと話をしないといけない。何があったのか、ゼダ様が何故この様な愚行に走ったのかを伝えなくてはいけない。そして…。


「クロノ…私のはなしを…」


グエッ。痛いほどの抱擁に俺の話は途中で途絶えた。またクロノたんの腕に抱かれることが出来たなんて…驚きと嬉しさが入り交じる。あぁ、やっぱり幸せ。先程までの湿っぽい思考が吹き飛ぶ。クロノたんの腕の中は温かい。一瞬で俺をこんなにも幸福で満たしてくれる。かけがえのない場所だ。離れたくない。離したくない。俺は覚悟を決め優しくクロノたんの胸を押し退けた。





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