34 / 48
もふもふはナイト
しおりを挟む「クロノ」
名前を呼ぶと、部屋の中でウロウロと忙しなく歩き回っていた足が止まる。
「…」
えっ?まさかの無言?!俺の格好おかしい?いや、おかしくないよね?!みんな綺麗だって言ってくれたし…まさかクロノたんの好みじゃないとか?!しまったー!!好みの色とか聞いとけば良かった!!
「クロノ…」
あぁ不安が声に伝わってしまった…。クロノたんは無言で俺の傍までくると、いきなり片膝をつき、そして片方の手を自分の右胸にかかげた。背筋をピンと伸ばし、堂々としていて格好良い…。
「レイ」
クロノたんが俺の手を取り、目をしっかりと見つめる。
「愛している。どんな事からもお前を守ると誓う。お前は俺の全てだ」
嬉しい、興奮、様々な感情に一瞬にして支配される。こんな…こんな、素敵なプロポーズされるなんて聞いてない!!引っ込めたはずの涙が出てくる。ヤバイ視界がボヤける…クロノたんの姿を目に焼き付けたいのに…。
「はい…。私の生涯をかけて、クロノをお慕い申し上げます」
バルコニーまで、クロノたんがエスコートしてくれる。外からは、鳴り止まない歓声と音楽が聴こえている。緊張するー!!!!!エスコートされている手に力が入る。ふっ、頭上から笑い声がする。見上げたと同時に肩を抱かれた。えぇー?!はっ恥ずかしいんですけどー!!!!!無情にもバルコニーが開く…ちょ、ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇ────!!!!!
この日から数日間、ハーデ帝国は二人の婚儀を祝い、お祭り騒ぎが続いた。
▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢
バフッ。
つっ疲れたー!!!!!お腹空いたー!!!!!疲れたー!!!!!お腹空いたー!!!!!もう限界……。
「レイ様、はしたないです」
「疲れました。お腹が空きすぎて倒れます」
「すぐに用意しますのでお待ちください」
何故俺がこんなにもお腹が空いているか…それは出された料理のせいだ!!!!!国民へのお披露目が終わり、次は招待客とのお食事。ひっきりなしに挨拶にくる。いくら笑顔継続時間が延びたからって無理。限界がある。
おまけに全然お料理が楽しめない。しかし、料理長には、悪いが手をつけたくない。何故かクロノたんにも絶対に食べるなと言われた。言われなくても食べないよ…だって…だって…あのドロドロのオリーブオイルがかかってるんだよー!!あれ?俺言ったよね?偽物ですよって?本物渡したよね?!めっちゃ聞きたい…でも次々とお祝いの言葉を述べてくれるから、クロノたんに聞けるタイミングがない。
「こんな美しい方を娶られるとは、さすが陛下ですな!欲しい物はどんな手を使っても手に入れる手腕!!いや~お見逸れ致します!!」
一際大きな声に、わざとらしいジェスチャー…。それに言葉に嫌味がこもってる…。料理とにらめっこしていた顔を声の主に向ける。なんだとっ…?!ハゲてるだと?!ザビエルじゃないか!!!!!俺、初めて見た。ハゲにもふもふの耳の破壊力!!!!!視界の暴力だ…。一体何があったんだ?髪は家出中ですか?長期家出中ですか?まじマジと見つめてしまう…
「いや~実に美しい。あなたの様な美しい人は見た事がない!!是非とも親しくして頂きたいですな」
「ヨルム。その様な発言は控えて頂きたい」
「おぉー!これは失礼致しました。こんな場で本当の事を言うもんではありませんな。しかし美しい…」
「あっ、ありがとうございます」
「料理は進んでおりますかな?料理長が腕によりをかけたと自慢していましたよ!!」
「えっ、えぇ。とても美味しいです…」
もしかしてオリーブオイルの偽物掴まされた人?すみません!!せっかく用意してもらったけど、食べる気にはなれません!!あとでお詫びしよう…。
「では私はこれで」
役目は終わったとばかりにヨルムさんは去っていった。後ろ姿のヨルムさんを見詰める。主に頭を…いや~ほんと不思議だ。後ろはまだ少し残ってるんだな髪の毛。世の中には色々な人がいるもんだ。
はぁ────。お腹空いた────!!!!!誰か俺に食べ物を!!!!!
27
お気に入りに追加
1,996
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる