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もふもふはもどかしい
しおりを挟むぼんやり考え事をし、少し俯き気味に歩いていたら、いつの間にか通りを抜けていた。
「そこの綺麗なお兄さん」
突然、目の前に影が出来る。
「あぁ?」
「ヤダ。怖い顔しないでよー。綺麗だと思ったから声掛けただけなんだからー!!」
ほぉーん。綺麗だからねー。
「何か?」
「お兄さん。この通りから出てきたでしょ?いい人見つからなかった?」
なるほどな。声を掛けてきた人を見る。整った顔だ。客に困ってる様には見えないが…
「金ならないぞ」
「ふふっ!別にお金には困ってないよー?お兄さんに一目惚れ。どう?」
慣れてるな。でも、こういう相手の方が後腐れなくて良い。
「宿代ぐらいは払う」
「決まりだね!!こっちだよ」
手を引かれる。頭にチラッとユーリの姿が浮かぶ。恋人でもない。俺が他の奴と肌を重ねようが関係ない。なのに、罪悪感を感じるのは…自分の気持ちを自覚しているせいか…。少し遠くに、小綺麗な宿屋が見えた。手を引く人の足が少し速くなる。あと、少しで着くな。だが、俺の歩みは止まる。反対の腕を掴まれたからだ。
「レイモンド」
低い声で名前を呼ばれる。
「ユーリ…」
今の俺の気持ちは浮気現場が見つかった恋人の様だ。
「あれー?どちらさん?」
「すまない。俺の連れなんだ。人混みではぐれてしまってな。手を離してもらえるだろうか」
「えぇ~やっぱりなー。こんな綺麗な人だもん。恋人いるよねー。お兄さん、その人と別れたら教えてね!俺あの通りにいるから。じゃあね」
あー行ってしまった…。どうすんのこれ?めっちゃ怒ってるんですけど…。はぁ……
「仕事は?」
「終わった」
「よく俺の場所がわかったな」
「……」
「そこに入って話す?」
先程入ろうとした小綺麗な宿屋を指さす。ユーリは、一定の距離を保ち俺の後ろを付いてくる。部屋は空いていたが一番良い部屋になってしまった。俺の手持ちで足りるか心配だ…。部屋の中は思ったより広かった、比例してベットもデカい。嫌でも目に入ってしまう。
「何か飲む?頼むか?」
「何で止めたの?」
「……」
「黙ってたら何もわからない。言葉で教えてくれ」
これ以上は俺も譲らない。先程のユーリの行動で俺は確信が持てた。ユーリは俺の事が好きだ。そして俺もユーリが好き…。つまり両想いだ。でも教えてやらない。お前から告白してくれないとダメだ。無理なら俺はこのまま想いを閉じ込める。ユーリは良い男だ。容姿に関係なく、皆が慕い、尊敬している。きっと気づいてないだけで、他にもユーリを好きな奴はいる。俺は誰よりもユーリの事が好きだ。この想いは誰にも負けない。少しだけ…少しだけでいい。勇気を出してくれ。
「……」
沈黙か…。ダメかな…。
「はぁー」
今日は人生で一番ため息ついてるな。風呂入ろ。入口で突っ立っているユーリを置いてさっさと風呂場に行く。珍しい。湯船がある。シャワーを浴びている間に湯船にお湯を張る。石鹸を泡立ててる。この石鹸泡立ちめちゃくちゃ良いな!!おまけに良い匂い!!レイ様が喜びそうだ。後で何処で買えるのか聞いてみよう。
ガラッ────
えっ…えぇぇぇ────!!!!!!!!!!!おっ、おっ、お前!!!!!どこで勇気を出してるんだよぉぉぉぉ!!!!!
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