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もふもふはご乱心

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ユーリと従者が足早に部屋の外に出ていくのを目で見送る。



レイに近づき、改めて全身を見る。噂以上だな。俺みたいな容姿の者が近づいていいのか躊躇ってしまう。レイに見つめられると、先程まで胸の内に広がっていた黒い感情が薄れてゆく。この感情は何だ?誰も教えてくれなかった。あぁ、その瞳に俺だけを映して欲しい。


「さぁ。レイ、座って話そう。聞きたい事が沢山ある。たとえば…そう…何故ユーリの手を握っていたとか、な?」


「えっ。」


そんな可愛い顔をしてとぼけてもダメだ。俺は見ていた。ユーリの手を握っているレイは、それは幸せそうな顔をしていた。俺達の様な容姿の者に触れようと思う気が触れた奴は居ない。まず近づいてこない。レイはユーリの事を知っていたのか?だから触れていた?微笑んでいたのか?事と場合によっては許さん。



「えっと~手をユーリちゃ…ユーリさんの手を握ってた理由ですか…」


「…」


「そっ、そうですね~。」


声を押し殺しレイの次の言葉を待つ。



「実は…バルロには居ない初めて見る姿の獣人様でしたので…その…興味が湧きまして…少し自分と比べていたと言いますか…(素晴らしい肉球を堪能していただけなんです!!)」



クッ…何故ユーリなんだ?!どうして俺ではダメなんだ?!触るなら俺にしろ。眼光に鋭さが混じる。こんなに威圧してはダメだと思うのに、理性が効かない。



「そうか。獣に近い獣人は醜いとされている。触れる事に抵抗はなかったのか?レイの容姿とは真反対だろう」



「まさか!!(可愛い過ぎてキュンキュンしちゃったよ!!)」


即答か?!そんなにユーリの手は良かったのか?俺だって負けず劣らずの物を持っている!!


「私の様な獣に近い獣人は、他の獣人と比べて番への執着が異常に強い。あまり他人に触れて欲しくない…。初対面なのに責めるような事を言ってすまない」



「とんでもないです!!(ヤバイ!!キュン死にする…)」


俺の想いを受け止めてくれるのか?そんなに力強い返事をされると期待してしまう。俺は初対面なのに、こんなにもレイに惹かれている。出会う前になど戻れない程に愛しく感じる。こんなに醜い姿をしているのにな…。自分で自分の事を嘲笑ってしまいそうだ。自然と耳としっぽが垂れてしまう。





「迂闊な行動をした事はお詫び致します。申し訳ありません。クロノ。あの…お願いがあるのですが…。よろしければ…クロノの事も触らせていただけませんか?」


「ッ?!」


俺に触りたい…そんな事生まれて初めて言われた…。胸が熱くなり言葉に詰まる。




「少し…少しだけでいいんですけど…」


言葉を発しない俺に不安を感じたのかレイの声が小さくなる。勿論返事など決まっている。





「あぁ…好きに触って貰って構わない」











確かに俺は触ってもいいと言った。言ったがコレはどういう状況だ?!俺の顔の近くにレイの綺麗な顔がある。ダメだ!!俺のしっぽよ!!揺れるんじゃない!!感情を遮るように固く目を瞑る。


レイの手が俺のシャツを優しく撫でている。その手つきが厭らしくて思わず声が漏れてしまった…聞こえてしまっただろうか?レイの手が止まっている。薄ら目を開けてレイの事を伺うと、俺の首元をみて声を詰まらせていた。陶器のように白い顔は頬が紅潮し、大きなアーモンド型の目はトロンと垂れ瞳は潤んでいる。


レイの顔を見た途端、自分のあらぬ所に熱が集中しているのを感じた。ダメだ。ダメだ。ダメだー!!先程より固く目を瞑る。再びレイの手が動き出す。今度はボタンを外そうとしている。緊張しているのか手の震えが微かに伝わってくる。自分の心臓がバクバクする。鎮まれ!鎮まるんだ俺のオレ!そんな葛藤も虚しく、レイは手を止める事なく次のボタンに手をかける。第三ボタンまで解放され、首元のシャツを拡げられる。何を…今から何をされるのだろう。俺は不安、嬉しさ、興奮様々な感情が入り交じっていた。





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