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課外授業
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※エル視点※
今日、課外授業があります。
結局ゼロに言う事が出来ず、話し合う事もなく今日は課外授業があるとだけ伝えて家を出た。
ゼロは何処に行くのか聞かなかった、俺を信じてるというより俺の居場所を知っているように思えた。
ゼロには二つの魔法以外にも魔法が使えるのかもしれない。
課外授業のために森に士官学科の生徒達が向かう。
前を歩く俺を見つめていて眉を寄せて不機嫌な態度の生徒達が着いてくる。
ゼロ達騎士団が動くという事はこの森はただの森ではなく危険な場所になっている証拠だろう。
魔術学校の士官学科は高校生だから危ない事はしないだろうと思っていたら大間違いだ。
そもそも高校生ではなく、魔術学校というもので普通の大人とあまり変わらない事を学んだり実行したりする。
国を守る騎士を生み出すためだ、若いうちから苦労すべし…それが学校の教えだった。
だから武器や魔法を使った実技試験もある、死なない程度に戦うがふざけたりすれば命を落としかねないだろう。
俺の武器は拳で、いつも薄そうな革の素材だが岩をも砕く鋼鉄の手袋を学校から支給されて使っている。
さすがに骨を砕くほどの力を出したら相手に申し訳ないから、人はどうやったら気絶するのか…弱点などを研究して実技試験は乗り切っていた。
そして今回の課外授業は騎士団の仕事を手伝う事だった、士官学科の課外授業のほとんがそれだ。
騎士団はここで、密売人についての調査行う。
騎士団のサポートをする班と森の調査をする班で分かれる事になっている。
初課外授業だからそんな危ない仕事は任せられないけど、いい経験にはなる。
ゼロには言っていなかったが、どうせバレる事を覚悟しているからゼロの手伝いをしたいと思っていた。
でも騎士団と一緒に仕事したいのは、騎士見習いが多い士官学科の誰もが望む事だ。
だから俺は抽選に外れて騎士団のサポートに行く事が出来なかった。
森の調査も騎士団の仕事の一つではあるが、ゼロと離れる事になる。
生徒達はそれぞれ話していて、先生達が自由な生徒達をまとめようと忙しく動いていた。
俺だけは知っているから妙にそわそわして落ち着かなくなる。
二つの班に分かれて、片方の班が騎士団がいる場所に向かって歩き出した。
俺達は調査用の道具をリュックに入れて、後に歩き出した。
森の調査というか、密売人の痕跡を探るための調査だ。
なにか見つけたらサポート班に通信機で知らせる事になっていた。
騎士団の手伝いをするサポート班より危険はないだろうが、野生の魔物とかがいるかもしれなくて警戒する。
ゼロに、会いたかったな。
この仕事も大切なんだけどね、とそう思いながら足元を見つめる。
昨日雨が降っていたから、地面は柔らかくなっていて足跡が付きやすくなっている。
俺達調査班は足跡が付かないように、靴に袋を被せている。
ここには足跡がないな…もう少し先かな。
足跡だけではなく、くまなくいろんなところを調べる。
俺の周りには何人かの生徒達がいる。
教師も一緒に行動してるけど、どうにも皆やる気が感じられない。
そりゃあそうなのかもしれない、皆騎士団と一緒に仕事をしたかったから他の仕事はやりたくないのだろう。
俺も気持ちが分からなくはないが、与えられた仕事は全力でやるつもりだ。
この仕事だって、ゼロ達がやっている仕事に変わりないから…
俺がここに居るのはゼロを守るため、そんな事を考えているのはきっと俺だけなのだろうな。
横を見ると、いかにも軟派そうな制服を派手に着崩している金髪の男とその男の後ろには肩を震わせている小柄な少年がいた。
金髪の男が魔法使いだと言う事は魔力の波動で何となく分かる。
そして魔法使いに怯えるという事はもう一人の彼は人間だろう。
知り合いなのか、金髪の男が馴れ馴れしく小柄な少年の肩に腕を回していた。
俺はいろんな虐められている人間を見ていたが、怯えている様子が普通と違った。
顔が真っ青で金髪の男から顔を逸らしている。
全く調査をする気がなく、ただ歩いていて…立ち止まって皆調査を始めても小声でなにか話していた。
ふと、金髪の男が小柄な少年から離れた…確かここの近くにトイレがあった筈だ。
もしかしたらトイレに行ったのかもしれない。
小柄な少年はしゃがんで大きなため息を吐いていた。
見て見ぬふりは出来ず、少年に近付こうとしたら少し強いくらい腕を掴まれた。
「どうしたの?イスナーン…だっけ」
「いや、あの子…」
「人間なんて気にするの?噂通りの変人だね」
すぐに金髪の男が戻ってきて、驚いていたら金髪の男は強引に小柄な少年の腕を掴んで引っ張った。
痛いのか顔を歪ませていたが、逆らえないのかされるがままだった。
一緒にトイレ?いや、なんか違うように感じた。
今は調査中だが、トイレ休憩で少し離れるくらい皆やってるし大丈夫だよね。
俺はすぐ戻ってくるつもりで彼らが歩いていった方向に走り出す。
こんなところでまで、人間を虐めるなんて……騎士を目指すならなんでこんな事をするんだ。
悲しく思いながら、トイレがある方向とは別の方向に足を向けていた。
やはりトイレでは無かった、この場所は木が多くて少し薄暗い場所だ。
一瞬二人を見失って焦ったが、遠くに二人の後ろ姿があり急いだ。
「ちょ、待って!!」
二人を呼び止めようとしたら地面がもこもこと盛り上がり、すぐに突き出るようになにかが飛び出して足にからまった。
まるで意思があるかのような変な植物に絡まって身動きが取れなくなった。
ゴムのような弾力の柔らかい植物の枝はきつく絡まり外せない。
ガクンと足を持ち上げられて宙吊りになってしまい、持っていた通信機を地面に落としてしまう。
植物の魔物が森に潜んでいるという話を事前に注意事項で聞いてたのに迂闊だった。
でも植物の魔物の弱点、確か授業で習った筈だ。
植物系の魔物の弱点は火だ、火を出す事が出来れば脱出出来るが…俺は魔法使いじゃないし、武器はこの手袋だけだ…どうしたら…
ジッと手袋を見つめて、ある事を閃いた。
…成功するか分からない、でもやってみなくては道は開けない!
ゲームのヒロインの言葉を思い出しながら両手で足に絡まる枝に触れた。
頭に血が上る前に成功させなければ、耐久戦だと俺が不利だ。
枝を思いっきり強く、早く擦った。
熱さに弱いなら摩擦が効くかもしれない。
幸いな事に頑丈な手袋をしているから、擦って俺の手にダメージは出ない。
擦って擦って擦り続けると、枝が俺の体を揺らし始めた。
気持ち悪くなりながらも擦ると、ポロポロと木屑が落ちてきて植物は俺の体を振り子のように大きく揺らして何処かに吹き飛ばした。
「うわぁぁぁ!!!!!」
顔面に風が強く当たり、あちこち痛くなりながら地面がだんだんと迫ってきて、両手を前に出してバク転して着地した。
まだ時間は経っていないから彼らは近くにいる筈だ、そう思い前に進もうとした。
すると何処かで大きな悲鳴が聞こえて驚いて辺りを見渡す。
この近くには誰もいないようで、奥に向かって進む。
まさか、俺みたいに魔物に襲われたんじゃ…焦りを感じて走る。
ずっと木と草むらしかなかった風景が変わってきた。
地面に寝そべっている人とその横に立つ人物は手を上げていた。
なにかを持っているようで、それがなにか気付き足の痺れなんて気にせず駆け出した。
「何してんだ!!」
「っ!?」
立つ人物に体当たりをして、地面に押し倒した。
すぐに金髪の男の手のなかで光る剣を奪って飛び退いた。
この金髪の男に支給された武器は剣だったのか、だいたいの魔法使いは剣を武器に選んでいたから不思議ではない。
しかし、問題はそこではない…その剣が血に染まっているという事だ。
すぐに倒れている小柄な少年のところに向かい、傷口を確かめる。
良かった、何処も怪我をしていないみたいだ。
そこで俺は冷や汗が流れた。
何処も怪我をしていない?可笑しい、だって剣は赤く濡れていた筈だ。
そこで俺は気が付いて後ろを振り返ろうとした。
するとすぐに脳を揺さぶる衝撃と共に意識がぶれて地面に倒れた。
最後に見た金髪の男は悪い顔をして笑って「マジで騙されるとか、バカなの?」と言っていたような気がした。
倒れていた筈の小柄な少年も笑いながら立ち上がっているのが視界の隅に見えた。
まさか金髪の男と小柄な少年は共犯者だとは思わなかった。
金髪の男は俺の名前を知っていた、俺がいじめられっ子を助けている事も知ってきっとこんな事をしたんだろう。
だからいじめっ子といじめられっ子の雰囲気を出して、あそこで二人いなくなれば俺も着いてくる事が分かっていたのだろう。
何故そんな事をするのか、理由が分からないまま意識を失った。
今日、課外授業があります。
結局ゼロに言う事が出来ず、話し合う事もなく今日は課外授業があるとだけ伝えて家を出た。
ゼロは何処に行くのか聞かなかった、俺を信じてるというより俺の居場所を知っているように思えた。
ゼロには二つの魔法以外にも魔法が使えるのかもしれない。
課外授業のために森に士官学科の生徒達が向かう。
前を歩く俺を見つめていて眉を寄せて不機嫌な態度の生徒達が着いてくる。
ゼロ達騎士団が動くという事はこの森はただの森ではなく危険な場所になっている証拠だろう。
魔術学校の士官学科は高校生だから危ない事はしないだろうと思っていたら大間違いだ。
そもそも高校生ではなく、魔術学校というもので普通の大人とあまり変わらない事を学んだり実行したりする。
国を守る騎士を生み出すためだ、若いうちから苦労すべし…それが学校の教えだった。
だから武器や魔法を使った実技試験もある、死なない程度に戦うがふざけたりすれば命を落としかねないだろう。
俺の武器は拳で、いつも薄そうな革の素材だが岩をも砕く鋼鉄の手袋を学校から支給されて使っている。
さすがに骨を砕くほどの力を出したら相手に申し訳ないから、人はどうやったら気絶するのか…弱点などを研究して実技試験は乗り切っていた。
そして今回の課外授業は騎士団の仕事を手伝う事だった、士官学科の課外授業のほとんがそれだ。
騎士団はここで、密売人についての調査行う。
騎士団のサポートをする班と森の調査をする班で分かれる事になっている。
初課外授業だからそんな危ない仕事は任せられないけど、いい経験にはなる。
ゼロには言っていなかったが、どうせバレる事を覚悟しているからゼロの手伝いをしたいと思っていた。
でも騎士団と一緒に仕事したいのは、騎士見習いが多い士官学科の誰もが望む事だ。
だから俺は抽選に外れて騎士団のサポートに行く事が出来なかった。
森の調査も騎士団の仕事の一つではあるが、ゼロと離れる事になる。
生徒達はそれぞれ話していて、先生達が自由な生徒達をまとめようと忙しく動いていた。
俺だけは知っているから妙にそわそわして落ち着かなくなる。
二つの班に分かれて、片方の班が騎士団がいる場所に向かって歩き出した。
俺達は調査用の道具をリュックに入れて、後に歩き出した。
森の調査というか、密売人の痕跡を探るための調査だ。
なにか見つけたらサポート班に通信機で知らせる事になっていた。
騎士団の手伝いをするサポート班より危険はないだろうが、野生の魔物とかがいるかもしれなくて警戒する。
ゼロに、会いたかったな。
この仕事も大切なんだけどね、とそう思いながら足元を見つめる。
昨日雨が降っていたから、地面は柔らかくなっていて足跡が付きやすくなっている。
俺達調査班は足跡が付かないように、靴に袋を被せている。
ここには足跡がないな…もう少し先かな。
足跡だけではなく、くまなくいろんなところを調べる。
俺の周りには何人かの生徒達がいる。
教師も一緒に行動してるけど、どうにも皆やる気が感じられない。
そりゃあそうなのかもしれない、皆騎士団と一緒に仕事をしたかったから他の仕事はやりたくないのだろう。
俺も気持ちが分からなくはないが、与えられた仕事は全力でやるつもりだ。
この仕事だって、ゼロ達がやっている仕事に変わりないから…
俺がここに居るのはゼロを守るため、そんな事を考えているのはきっと俺だけなのだろうな。
横を見ると、いかにも軟派そうな制服を派手に着崩している金髪の男とその男の後ろには肩を震わせている小柄な少年がいた。
金髪の男が魔法使いだと言う事は魔力の波動で何となく分かる。
そして魔法使いに怯えるという事はもう一人の彼は人間だろう。
知り合いなのか、金髪の男が馴れ馴れしく小柄な少年の肩に腕を回していた。
俺はいろんな虐められている人間を見ていたが、怯えている様子が普通と違った。
顔が真っ青で金髪の男から顔を逸らしている。
全く調査をする気がなく、ただ歩いていて…立ち止まって皆調査を始めても小声でなにか話していた。
ふと、金髪の男が小柄な少年から離れた…確かここの近くにトイレがあった筈だ。
もしかしたらトイレに行ったのかもしれない。
小柄な少年はしゃがんで大きなため息を吐いていた。
見て見ぬふりは出来ず、少年に近付こうとしたら少し強いくらい腕を掴まれた。
「どうしたの?イスナーン…だっけ」
「いや、あの子…」
「人間なんて気にするの?噂通りの変人だね」
すぐに金髪の男が戻ってきて、驚いていたら金髪の男は強引に小柄な少年の腕を掴んで引っ張った。
痛いのか顔を歪ませていたが、逆らえないのかされるがままだった。
一緒にトイレ?いや、なんか違うように感じた。
今は調査中だが、トイレ休憩で少し離れるくらい皆やってるし大丈夫だよね。
俺はすぐ戻ってくるつもりで彼らが歩いていった方向に走り出す。
こんなところでまで、人間を虐めるなんて……騎士を目指すならなんでこんな事をするんだ。
悲しく思いながら、トイレがある方向とは別の方向に足を向けていた。
やはりトイレでは無かった、この場所は木が多くて少し薄暗い場所だ。
一瞬二人を見失って焦ったが、遠くに二人の後ろ姿があり急いだ。
「ちょ、待って!!」
二人を呼び止めようとしたら地面がもこもこと盛り上がり、すぐに突き出るようになにかが飛び出して足にからまった。
まるで意思があるかのような変な植物に絡まって身動きが取れなくなった。
ゴムのような弾力の柔らかい植物の枝はきつく絡まり外せない。
ガクンと足を持ち上げられて宙吊りになってしまい、持っていた通信機を地面に落としてしまう。
植物の魔物が森に潜んでいるという話を事前に注意事項で聞いてたのに迂闊だった。
でも植物の魔物の弱点、確か授業で習った筈だ。
植物系の魔物の弱点は火だ、火を出す事が出来れば脱出出来るが…俺は魔法使いじゃないし、武器はこの手袋だけだ…どうしたら…
ジッと手袋を見つめて、ある事を閃いた。
…成功するか分からない、でもやってみなくては道は開けない!
ゲームのヒロインの言葉を思い出しながら両手で足に絡まる枝に触れた。
頭に血が上る前に成功させなければ、耐久戦だと俺が不利だ。
枝を思いっきり強く、早く擦った。
熱さに弱いなら摩擦が効くかもしれない。
幸いな事に頑丈な手袋をしているから、擦って俺の手にダメージは出ない。
擦って擦って擦り続けると、枝が俺の体を揺らし始めた。
気持ち悪くなりながらも擦ると、ポロポロと木屑が落ちてきて植物は俺の体を振り子のように大きく揺らして何処かに吹き飛ばした。
「うわぁぁぁ!!!!!」
顔面に風が強く当たり、あちこち痛くなりながら地面がだんだんと迫ってきて、両手を前に出してバク転して着地した。
まだ時間は経っていないから彼らは近くにいる筈だ、そう思い前に進もうとした。
すると何処かで大きな悲鳴が聞こえて驚いて辺りを見渡す。
この近くには誰もいないようで、奥に向かって進む。
まさか、俺みたいに魔物に襲われたんじゃ…焦りを感じて走る。
ずっと木と草むらしかなかった風景が変わってきた。
地面に寝そべっている人とその横に立つ人物は手を上げていた。
なにかを持っているようで、それがなにか気付き足の痺れなんて気にせず駆け出した。
「何してんだ!!」
「っ!?」
立つ人物に体当たりをして、地面に押し倒した。
すぐに金髪の男の手のなかで光る剣を奪って飛び退いた。
この金髪の男に支給された武器は剣だったのか、だいたいの魔法使いは剣を武器に選んでいたから不思議ではない。
しかし、問題はそこではない…その剣が血に染まっているという事だ。
すぐに倒れている小柄な少年のところに向かい、傷口を確かめる。
良かった、何処も怪我をしていないみたいだ。
そこで俺は冷や汗が流れた。
何処も怪我をしていない?可笑しい、だって剣は赤く濡れていた筈だ。
そこで俺は気が付いて後ろを振り返ろうとした。
するとすぐに脳を揺さぶる衝撃と共に意識がぶれて地面に倒れた。
最後に見た金髪の男は悪い顔をして笑って「マジで騙されるとか、バカなの?」と言っていたような気がした。
倒れていた筈の小柄な少年も笑いながら立ち上がっているのが視界の隅に見えた。
まさか金髪の男と小柄な少年は共犯者だとは思わなかった。
金髪の男は俺の名前を知っていた、俺がいじめられっ子を助けている事も知ってきっとこんな事をしたんだろう。
だからいじめっ子といじめられっ子の雰囲気を出して、あそこで二人いなくなれば俺も着いてくる事が分かっていたのだろう。
何故そんな事をするのか、理由が分からないまま意識を失った。
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