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誕生日で反抗期
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屋敷を出て近くの茂みにしゃがみ小さく丸まり隠れる。
するとやはり追いかけてきたゼロは、周りを見渡しながら何処かに向かって走っていった。
あんなに必死な顔をして俺を探してくれるゼロを見て、出ていこうとした体を何とか抑えてゼロが見えなくなったところで茂みから顔を出す。
心の中でごめんなさいと謝りながらここでゼロの言う通り何もしないわけにはいかないと思った。
なにもしないで家に帰るわけにはいかず、なにか方法はないか街をぶらつく事にした。
ゼロに酷い事をしてしまった、その気持ちが俺の気分を沈ませる。
でも、俺は本気だとゼロに口で言うより分かってくれるかもしれない。
俺は誰がなんて言おうと、ゼロを助けたい気持ちは変わらない。
街の広場に入ると、騎士団の人が何人かいた。
騎士団は鍛えるには最適だろうが頼みたくはない。
ゼロが闇堕ちをした原因である、差別の象徴だからだ。
魔法使いを至極だと思い、人間は魔法使いの奴隷だと思っている酷い集団だ。
ただの人間も少ないが騎士団にはいるが、扱いは酷いものだ。
イジメが可愛く感じるほどの体罰が当たり前になって、死んでしまう騎士も珍しくはない。
ゼロでなくてもそんな騎士団に絶望する人はいるだろう。
でも、現実の話…騎士団と同じ考えの魔法使いがほとんどだから暴動が起きたりする事がなく、むしろ共感される。
虐げられている人間達も、小さな頃からこの世界を見ているからかそれが可笑しい事だなんて思わない。
俺はゲームで騎士団の酷い差別を知り、心が痛かったから可笑しい事は可笑しいと思う。
でも、もし俺に生前の記憶がなかったら酷い扱いを受け入れていたのかもしれない。
騎士団に人間だと気付かれたら何をされるか分からない。
見た目では魔法使いと変わりはないが、なにがきっかけで気付かれるのか分からない。
人間はこうしてビクビクしないと生きていけない世界なんだ。
人間は抵抗するのも許されない、魔法使いに頭を下げて生きていかないといけない。
そう考えたら俺は恵まれている、差別なくゼロに本当の家族のように大切にされている。
なのに……俺はゼロが心配してくれたのに家を飛び出した。
傍を見るとそこは最近オープンしたばかりのお洒落な外観のカフェだった。
ゼロと一緒に街に出かけた時、いつか一緒に行こうと約束していた事を思い出した。
ゼロは怒ってるかもしれないが、謝ろう…許してもらえるまで…
ゼロが闇堕ちするかもしれないと、焦っていた気持ちがあった。
焦ってもどうしようもない、ゼロだって俺にダメだと言うのはなにか考えがあっての事なのかもしれない。
だんだんと冷静さを取り戻して、俺は帰ろうと屋敷に足を向けた。
「エル様?」
「あ、庭師さん」
いきなり名前を呼ばれたからゼロかと焦ってしまったが、声の主を探していたら俺の目の前に庭師がいた。
もしかしてこの人も俺を探していたのだろうか、いろんな人に迷惑掛けてしまったと反省した。
俺、何やってんだろう…生前の何も出来ず死んでしまった自分を変えたかったから周りを見ていなかった。
庭師は落ち込み俯く俺の手を掴んで「お家に帰りましょう」と微笑んだ。
俺はこくんと小さく頷き、庭師と一緒に屋敷に向かって歩き出した。
そしてその異変にすぐに気が付いて足を止めて庭師を見つめた。
屋敷がある方向とは反対方向を歩いている気がする。
なんでだろう、反対方向だから近道というわけでもなさそうだ。
「俺の家、あっちなんだけど」
「ゼロ様のお屋敷には戻りません」
え?何?なんで?だって家に帰ろうって言っていたではないか。
俺の家はゼロが待ってくれるあの暖かい家だけなんだ。
いきなり庭師は俺の口を押さえつけて、まるで米俵を担ぐように担ぎ出した。
突然の浮いた感覚に怖くてじたばた暴れるが、すぐに人気のない裏路地に入った。
人目がつくところでこんな事をしても、誰も助けてはくれない…皆関わりたくないから見て見ぬふりだ。
人攫いなんて珍しくもない、それに攫うのはきっと人間の子供だ……そう冷めた瞳で一瞬目が合いすぐに逸らされた。
「ご安心下さいエル様、何不自由がない暮らしをお約束致します」
「んー!んん!!」
「聞くところによれば、エル様はゼロ様の実の兄弟ではないそうで…孤児だったと」
庭師は口を吊り上げて嫌な笑みを向けながら話している。
俺が孤児だと知っているのはゼロだけだ、確かこの人は俺が来る前からいた庭師だ。
ゼロは俺のために庭を綺麗にしようとして、庭師に言ってあのバラの花も植えてくれたんだ。
ゼロが俺が孤児だと言いふらすとは思えないから、ゼロが俺を連れて帰ってきたところを見たごく一部の使用人の中の庭師だろう。
自分の身も守れなくて弱いくせに反抗して飛び出して、俺……本当にバカだよな…使用人だからって確認もしないで簡単に信用して…これじゃあゼロが心配するのも無理はない。
もう、会えなくなるのかな…あの優しくて大好きな人に…
「エル様はお屋敷に来てから一度も魔力の波動を感じませんでした、きっとただの人間なのでしょう…大丈夫ですよ…私が大切に育てますから」
「………」
「エル様はゼロ様よりかなり劣った容姿ですが、男を無意識に誘うすべすべの肌に一目で目を奪われ…純真無垢なそのお顔を私色に染めたいと思っていましたよ」
舐めるように俺を見つめる庭師に全身に鳥肌が立った。
なんでこんな変態に好かれてるんだ俺は!絶対嫌だ!
「私のお嫁さんになるんですよ」と鼻息荒く気持ちの悪い事を言っている男を見て死ぬ以外の地獄が待っていると感じた。
早く逃げないと、男としてのなにかを失う気がしてならない!
庭師は体格はひょろひょろしていて筋肉なんてなさそうなのに暴れても全然びくともしない。
せめて口の手を外せれば大声を出して誰かが助けてくれるかもしれないと思うが、両手で掴むが全然離れない。
「暴れないで下さい、もうすぐ新居に到着しますから」
「んんんんっ!!!」
「そこで何をしているの?」
誰かの声が後ろから聞こえてきて庭師は足を止めた。
俺からも後ろだから誰が声を掛けたのか分からなくて、見たくても庭師により首が動かせなかった。
するとやはり追いかけてきたゼロは、周りを見渡しながら何処かに向かって走っていった。
あんなに必死な顔をして俺を探してくれるゼロを見て、出ていこうとした体を何とか抑えてゼロが見えなくなったところで茂みから顔を出す。
心の中でごめんなさいと謝りながらここでゼロの言う通り何もしないわけにはいかないと思った。
なにもしないで家に帰るわけにはいかず、なにか方法はないか街をぶらつく事にした。
ゼロに酷い事をしてしまった、その気持ちが俺の気分を沈ませる。
でも、俺は本気だとゼロに口で言うより分かってくれるかもしれない。
俺は誰がなんて言おうと、ゼロを助けたい気持ちは変わらない。
街の広場に入ると、騎士団の人が何人かいた。
騎士団は鍛えるには最適だろうが頼みたくはない。
ゼロが闇堕ちをした原因である、差別の象徴だからだ。
魔法使いを至極だと思い、人間は魔法使いの奴隷だと思っている酷い集団だ。
ただの人間も少ないが騎士団にはいるが、扱いは酷いものだ。
イジメが可愛く感じるほどの体罰が当たり前になって、死んでしまう騎士も珍しくはない。
ゼロでなくてもそんな騎士団に絶望する人はいるだろう。
でも、現実の話…騎士団と同じ考えの魔法使いがほとんどだから暴動が起きたりする事がなく、むしろ共感される。
虐げられている人間達も、小さな頃からこの世界を見ているからかそれが可笑しい事だなんて思わない。
俺はゲームで騎士団の酷い差別を知り、心が痛かったから可笑しい事は可笑しいと思う。
でも、もし俺に生前の記憶がなかったら酷い扱いを受け入れていたのかもしれない。
騎士団に人間だと気付かれたら何をされるか分からない。
見た目では魔法使いと変わりはないが、なにがきっかけで気付かれるのか分からない。
人間はこうしてビクビクしないと生きていけない世界なんだ。
人間は抵抗するのも許されない、魔法使いに頭を下げて生きていかないといけない。
そう考えたら俺は恵まれている、差別なくゼロに本当の家族のように大切にされている。
なのに……俺はゼロが心配してくれたのに家を飛び出した。
傍を見るとそこは最近オープンしたばかりのお洒落な外観のカフェだった。
ゼロと一緒に街に出かけた時、いつか一緒に行こうと約束していた事を思い出した。
ゼロは怒ってるかもしれないが、謝ろう…許してもらえるまで…
ゼロが闇堕ちするかもしれないと、焦っていた気持ちがあった。
焦ってもどうしようもない、ゼロだって俺にダメだと言うのはなにか考えがあっての事なのかもしれない。
だんだんと冷静さを取り戻して、俺は帰ろうと屋敷に足を向けた。
「エル様?」
「あ、庭師さん」
いきなり名前を呼ばれたからゼロかと焦ってしまったが、声の主を探していたら俺の目の前に庭師がいた。
もしかしてこの人も俺を探していたのだろうか、いろんな人に迷惑掛けてしまったと反省した。
俺、何やってんだろう…生前の何も出来ず死んでしまった自分を変えたかったから周りを見ていなかった。
庭師は落ち込み俯く俺の手を掴んで「お家に帰りましょう」と微笑んだ。
俺はこくんと小さく頷き、庭師と一緒に屋敷に向かって歩き出した。
そしてその異変にすぐに気が付いて足を止めて庭師を見つめた。
屋敷がある方向とは反対方向を歩いている気がする。
なんでだろう、反対方向だから近道というわけでもなさそうだ。
「俺の家、あっちなんだけど」
「ゼロ様のお屋敷には戻りません」
え?何?なんで?だって家に帰ろうって言っていたではないか。
俺の家はゼロが待ってくれるあの暖かい家だけなんだ。
いきなり庭師は俺の口を押さえつけて、まるで米俵を担ぐように担ぎ出した。
突然の浮いた感覚に怖くてじたばた暴れるが、すぐに人気のない裏路地に入った。
人目がつくところでこんな事をしても、誰も助けてはくれない…皆関わりたくないから見て見ぬふりだ。
人攫いなんて珍しくもない、それに攫うのはきっと人間の子供だ……そう冷めた瞳で一瞬目が合いすぐに逸らされた。
「ご安心下さいエル様、何不自由がない暮らしをお約束致します」
「んー!んん!!」
「聞くところによれば、エル様はゼロ様の実の兄弟ではないそうで…孤児だったと」
庭師は口を吊り上げて嫌な笑みを向けながら話している。
俺が孤児だと知っているのはゼロだけだ、確かこの人は俺が来る前からいた庭師だ。
ゼロは俺のために庭を綺麗にしようとして、庭師に言ってあのバラの花も植えてくれたんだ。
ゼロが俺が孤児だと言いふらすとは思えないから、ゼロが俺を連れて帰ってきたところを見たごく一部の使用人の中の庭師だろう。
自分の身も守れなくて弱いくせに反抗して飛び出して、俺……本当にバカだよな…使用人だからって確認もしないで簡単に信用して…これじゃあゼロが心配するのも無理はない。
もう、会えなくなるのかな…あの優しくて大好きな人に…
「エル様はお屋敷に来てから一度も魔力の波動を感じませんでした、きっとただの人間なのでしょう…大丈夫ですよ…私が大切に育てますから」
「………」
「エル様はゼロ様よりかなり劣った容姿ですが、男を無意識に誘うすべすべの肌に一目で目を奪われ…純真無垢なそのお顔を私色に染めたいと思っていましたよ」
舐めるように俺を見つめる庭師に全身に鳥肌が立った。
なんでこんな変態に好かれてるんだ俺は!絶対嫌だ!
「私のお嫁さんになるんですよ」と鼻息荒く気持ちの悪い事を言っている男を見て死ぬ以外の地獄が待っていると感じた。
早く逃げないと、男としてのなにかを失う気がしてならない!
庭師は体格はひょろひょろしていて筋肉なんてなさそうなのに暴れても全然びくともしない。
せめて口の手を外せれば大声を出して誰かが助けてくれるかもしれないと思うが、両手で掴むが全然離れない。
「暴れないで下さい、もうすぐ新居に到着しますから」
「んんんんっ!!!」
「そこで何をしているの?」
誰かの声が後ろから聞こえてきて庭師は足を止めた。
俺からも後ろだから誰が声を掛けたのか分からなくて、見たくても庭師により首が動かせなかった。
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