戦力より戦略。

お留守番

165日目 風格

「……衝撃の経験だった……」
「あれは私でも凄く熱かったですからね。プリンセちゃんがきついのは当然ですね」

　普段の食事のスープでも時間をおいてから食べますもんね。

「ま、まぁ、気を取り直してショッピングしましょうよ。実は私、楽しみにしてたんですよ？」

　服にあまり興味がなかったんですけど、恥ずかしながら、こ、恋してからというもの、ちょっと気にし始めまして。
　自身が無かったのでリブレさんのいる間は着れなかったんですけど、考えを改めました。
　いるうちに着てる必要があるんです。
　見せれるうちに見せておかないと。
　そして、今は見せるための服を用意するんです。

「やっぱり、ランガルとは服の感じも違うじゃないですか」
「……こっちの方が、ちょっと暑いしね」

　砂漠の影響をもろにとは言えないが受けているドルガバは温暖な気候であるランガルに比べて気温が高い。
　比較する分には湿度が低いといった方が適切だろうが。
　カラッとした太陽光による暑さだ。

「でも、暑いのに長袖ですよね」
「……日光がきついからね」

　なるほど。
　日焼けですか。

「え、でも獣人族の方も日焼けってするんですか？」
「……するよー。エルフがおかしいんじゃなかったっけ？」
「そうですね。私たちは基本的に日焼けしません」

　元々白い肌が特徴的な私たちですが、エルフという生物が毒性に強い生物らしく、体内に入るタイプの毒はもちろんのこと、日焼けのようなちょっとした影響も防いでくれます。
　それがいいとは限らないんですけど。

　レインが自分がリブレの好みに合っているのかどうか思案している頃、リブレ当人は褐色の美人4人に囲まれているのだが、知らぬが仏である。

「でも、私長袖が好きなんですよね」
「……なんで？」
「いえ、別にさしたる理由はないんですけど……」

　人の好みなんてそんなものでしょう。

「……そうだね。……見に行ってみる？」
「はい！」

　コロコロと車いすを転がして女性向けの服屋に入る。

「いらっしゃいませー」
「ちょっと見させてもらってもいいですか？」
「！　はい！　ど、どうぞ……！」

　最初の挨拶は普通だったのに私たちを認識した瞬間に緊張しましたね。
　それにしてもあまりにも過剰反応すぎません？
　お店の外にも人だかりができてますし。

「ちょっと何してるの？　早くカーテンを下ろしなさい！」
「は、はい！」

　奥から偉そうな女性が出てきて店員さんに指示しています。
　私たちに対する配慮ですかね。

「失礼いたしました。どうぞ、お買い物をお楽しみください」
「あ、ありがとうございます。オーナーさんですか？」
「えぇ、この店を任されております」

「良いお店ですね」
「そう言って頂けると幸いです。ご配慮が遅くなり、申し訳ございません」
「いえいえ、こちらこそ、面倒ごとを持ち込んでしまい、申し訳ないです」
「有名な方がお買い物にいらっしゃるほど嬉しいことはございませんから。ぜひ、ゆっくりしていってください」

　風格を感じるライオン族の若い女性オーナーは奥へと戻っていった。

「綺麗でしたね」
「……おとな」

　仕事できそうでしたねー。