戦力より戦略。

魔界奔走

膝枕の印象

「さっきからいただと……！」
「なぁ、俺ってそんなに影薄いか？」

泣いていいかな？

「そんなことはありませんよご主人様！」
「そうです！ フード被ってたからですよ！」
「必死なフォローありがとう」

メイドたちの献身的なフォローにより多少メンタルを持ち直す。

「ちっ！　護衛風情が口出しするんじゃねぇよ！」
「そちらに逸礼行為がありましたからね。そんなことを言われる筋合いはありませんよ」
「この野郎が！」

馬鹿が伸ばしてきた手がこちらに届くことなど、もちろんない。
第一に身の安全を確保してから動いてるからな。

「どうしたのですか？」

タイミングを見計らったかのように席を外していた領主が戻ってくる。

「親父！　こいつが……！」
「失礼、領主殿。我が主に少々礼を逸した行為があったため、間に入らせていただきました。バンフリオン様も体調が優れないようですので、本日はこれでお開きという事でよろしいでしょうか」
「ほう、それはそれは。すぐに部屋に案内させましょう」

馬鹿の言う事を遮ってとりあえず退散する。
リオンが気分が悪そうというのも本当だ。
よくわからんクソ野郎に体をまさぐられて気持ちの良い奴なんていない。


「ありがとう……」
「いや、あれは俺から見てても気持ち悪すぎた。あいつが悪すぎる」

心底疲れた顔のリオン。

「無理しなくていいからな。最悪、逃げてもいい。それを責める奴なんて誰もいない」
「そうだね……」

珍しくソファーで俺に膝枕されているリオンの頭を撫でる。
これで少しでも癒されるなら安いもんだ。

少し疑問に思ったんだが、男性の膝枕って気持ちの良いものなんだろうか。
もちろん、信頼してたら落ち着くとかいうのはあるだろうけども。
女性の膝枕は男性より筋肉質じゃないから柔らかいし心地いいだろうが、男性は少し筋肉質である場合が多い。
俺もまぁそれなりに鍛えてるし、足は特に逃げるために酷使しているため他の部位よりも筋肉はある。
痛かったりしないのだろうか。

「お前らはどう思う？」
「最低です」
「ないです」
「終わってます」
「そうじゃなくて……」

ぼろくそ言われてんな。

「お前らなら、ああいう偉い人にどう対処したらいいかとかも知ってるんじゃないのか？」
「申し訳ありませんが、私たちは会談に同席していることはありませんでしたし、そうなることも恐らくなかったかと……」
「そうだな。悪い。思いつきだ」

こいつらの前の就職先は穏やかな人だった。
こんな事態には縁遠いだろう。
その癖して底が知れないのだから、怖い。

「このままサラッと帰してくれることはないだろうな。明日にはこの話を蒸し返されるだろう。向こうに都合のいいように曲解されて。で、その時に追及されるのは俺だ。出来るだけ丁寧に話すように心がけていたが、どこから難癖つけられてもおかしくない。リオンにはそこから変な要求がくるかもしれないが、知らぬ存ぜぬで突き通せ」
「それは難しくないかなー……？」
「俺に考えがある」

これでダメならむしろ全面戦争だ。