351 / 566
決戦
やっぱタイミングは自分で決めたい
しおりを挟む
俺は幻想級を見据え、大きく息を吐く。
キラは既に姿を消し、近くには誰もいない。
地面後方で壮絶な乱戦の音が聞こえ、目線の高さでは3色の魔法が入り乱れる。
今までの人生で、これほど落ち着いていたことがあっただろうか。
生まれて自我を持ってからこっち、他人の感情に振り回されてろくなもんじゃなかった。
確かに、向こうにも俺を理解しようとしてくれる人はいた。
だが、理解してくれたのはこっちの人たちだ。
そんな人たちのために俺はこの眼を使わず、力になれることが嬉しい。
この眼を失えば平凡な俺が、特別な人たちの力になれることが。
目の前に迫った靄を斬り飛ばし、更に考える。
俺は平凡、良くて秀才だ。
ここにいる化け物達とは違う。
だが、それでいい。
みんなが俺を信じてついてきてくれた、託してくれた。
それがなんとも心地よい。
もう1つ大きく息をつく。
ここからどう動くかはもう決めてある。
もし、不測の事態があれば退く。
なければ突っ込む。
魔法をバンバン撃ってた時と獣人族がタコ殴りにしてた時で後者の方がHPの減りが早かったであろうことから、物理の方が効くのだろう。
それを防ぐためのMP吸収だろうし。
つまり、俺が頑張れば本当になんとかなるかもしれない。
本当に大切なタイミングの前って、逆に冷静になるんだな。
自分でそれを自覚し、苦笑する。
「この場面で笑うとは、主。中々豪胆じゃな。普段とは比べ物にならんぞ」
「お前もいつも通りなようで頼もしいよ。ちなみに聞くが、どういった点が比べ物にならないんだ?」
「決まっておろう。普段の何倍もカッコよいぞ!」
「そうか、そりゃよかった」
背中にのせたオーシリアとも話し、覚悟を固める。
目の前に再度迫った靄を睨めつけ、最後の深呼吸をする。
やっぱこういう生死が懸かったタイミングは。
「自分で決めたいよなぁ!!」
景気づけに叫んで幻想級のMP吸収領域に飛び込む。
今まで斬り払ってきた靄を右にスライドして避け、俺の足を踏み出す先に置かれる床を蹴りながら幻想級に突進する。
あと50メートル。
俺が突っ込んできたことに気づいた幻想級は靄をこちら側に集中させ、新たに5本、こちらに伸ばしてくる。
あと35メートル。
伸びてきた靄を3本斬り、2本避けて更に幻想級に迫る。
あと15メートル。
俺への対処のためにこちらを向いた幻想級の背後から、レインとケインの魔法が突き刺さる。
あと8メートル。
こちらに真っ赤に光る目を向けた幻想級が、靄に包まれ始める。
どうやら、俺を脅威と判断し、身を守ろうとしているようだ。
予想通り。
あと3メートル。
最後に、避けた2本の靄が俺を追ってくる形で迫っていたのをジャンプし、更にステッド・ファストの足場でジャンプして飛び越える。
あと1メートル。
靄のバリアが完成し、包まれた幻想級を目の前に、俺は小太刀を脇構えで構える。
スピードを殺さないように意識しながら。
あと……。
キラは既に姿を消し、近くには誰もいない。
地面後方で壮絶な乱戦の音が聞こえ、目線の高さでは3色の魔法が入り乱れる。
今までの人生で、これほど落ち着いていたことがあっただろうか。
生まれて自我を持ってからこっち、他人の感情に振り回されてろくなもんじゃなかった。
確かに、向こうにも俺を理解しようとしてくれる人はいた。
だが、理解してくれたのはこっちの人たちだ。
そんな人たちのために俺はこの眼を使わず、力になれることが嬉しい。
この眼を失えば平凡な俺が、特別な人たちの力になれることが。
目の前に迫った靄を斬り飛ばし、更に考える。
俺は平凡、良くて秀才だ。
ここにいる化け物達とは違う。
だが、それでいい。
みんなが俺を信じてついてきてくれた、託してくれた。
それがなんとも心地よい。
もう1つ大きく息をつく。
ここからどう動くかはもう決めてある。
もし、不測の事態があれば退く。
なければ突っ込む。
魔法をバンバン撃ってた時と獣人族がタコ殴りにしてた時で後者の方がHPの減りが早かったであろうことから、物理の方が効くのだろう。
それを防ぐためのMP吸収だろうし。
つまり、俺が頑張れば本当になんとかなるかもしれない。
本当に大切なタイミングの前って、逆に冷静になるんだな。
自分でそれを自覚し、苦笑する。
「この場面で笑うとは、主。中々豪胆じゃな。普段とは比べ物にならんぞ」
「お前もいつも通りなようで頼もしいよ。ちなみに聞くが、どういった点が比べ物にならないんだ?」
「決まっておろう。普段の何倍もカッコよいぞ!」
「そうか、そりゃよかった」
背中にのせたオーシリアとも話し、覚悟を固める。
目の前に再度迫った靄を睨めつけ、最後の深呼吸をする。
やっぱこういう生死が懸かったタイミングは。
「自分で決めたいよなぁ!!」
景気づけに叫んで幻想級のMP吸収領域に飛び込む。
今まで斬り払ってきた靄を右にスライドして避け、俺の足を踏み出す先に置かれる床を蹴りながら幻想級に突進する。
あと50メートル。
俺が突っ込んできたことに気づいた幻想級は靄をこちら側に集中させ、新たに5本、こちらに伸ばしてくる。
あと35メートル。
伸びてきた靄を3本斬り、2本避けて更に幻想級に迫る。
あと15メートル。
俺への対処のためにこちらを向いた幻想級の背後から、レインとケインの魔法が突き刺さる。
あと8メートル。
こちらに真っ赤に光る目を向けた幻想級が、靄に包まれ始める。
どうやら、俺を脅威と判断し、身を守ろうとしているようだ。
予想通り。
あと3メートル。
最後に、避けた2本の靄が俺を追ってくる形で迫っていたのをジャンプし、更にステッド・ファストの足場でジャンプして飛び越える。
あと1メートル。
靄のバリアが完成し、包まれた幻想級を目の前に、俺は小太刀を脇構えで構える。
スピードを殺さないように意識しながら。
あと……。
0
お気に入りに追加
247
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる