戦力より戦略。

haruhi8128

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決戦

やっぱタイミングは自分で決めたい

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俺は幻想級ファンタズマルを見据え、大きく息を吐く。
キラは既に姿を消し、近くには誰もいない。
地面後方で壮絶な乱戦の音が聞こえ、目線の高さでは3色の魔法が入り乱れる。

今までの人生で、これほど落ち着いていたことがあっただろうか。
生まれて自我を持ってからこっち、他人の感情に振り回されてろくなもんじゃなかった。

確かに、向こうにも俺を理解しようとしてくれる人はいた。
だが、理解してくれたのはこっちの人たちだ。

そんな人たちのために俺はこの眼を使わず、力になれることが嬉しい。
この眼を失えば平凡な俺が、特別な人たちの力になれることが。


目の前に迫った靄を斬り飛ばし、更に考える。

俺は平凡、良くて秀才だ。
ここにいる化け物てんさい達とは違う。

だが、それでいい。
みんなが俺を信じてついてきてくれた、託してくれた。
それがなんとも心地よい。


もう1つ大きく息をつく。

ここからどう動くかはもう決めてある。
もし、不測の事態があれば退く。
なければ突っ込む。

魔法をバンバン撃ってた時と獣人族がタコ殴りにしてた時で後者の方がHPの減りが早かったであろうことから、物理の方が効くのだろう。
それを防ぐためのMP吸収だろうし。

つまり、俺が頑張れば本当になんとかなるかもしれない。

本当に大切なタイミングの前って、逆に冷静になるんだな。
自分でそれを自覚し、苦笑する。

「この場面で笑うとは、主。中々豪胆じゃな。普段とは比べ物にならんぞ」
「お前もいつも通りなようで頼もしいよ。ちなみに聞くが、どういった点が比べ物にならないんだ?」
「決まっておろう。普段の何倍もカッコよいぞ!」
「そうか、そりゃよかった」

背中にのせたオーシリアとも話し、覚悟を固める。


目の前に再度迫った靄を睨めつけ、最後の深呼吸をする。

やっぱこういう生死が懸かったタイミングは。

「自分で決めたいよなぁ!!」

景気づけに叫んで幻想級のMP吸収領域に飛び込む。

今まで斬り払ってきた靄を右にスライドして避け、俺の足を踏み出す先に置かれる床を蹴りながら幻想級に突進する。



あと50メートル。

俺が突っ込んできたことに気づいた幻想級は靄をこちら側に集中させ、新たに5本、こちらに伸ばしてくる。


あと35メートル。

伸びてきた靄を3本斬り、2本避けて更に幻想級に迫る。


あと15メートル。

俺への対処のためにこちらを向いた幻想級の背後から、レインとケインの魔法が突き刺さる。


あと8メートル。

こちらに真っ赤に光る目を向けた幻想級が、靄に包まれ始める。
どうやら、俺を脅威と判断し、身を守ろうとしているようだ。
予想通り。


あと3メートル。

最後に、避けた2本の靄が俺を追ってくる形で迫っていたのをジャンプし、更にステッド・ファストの足場でジャンプして飛び越える。


あと1メートル。

靄のバリアが完成し、包まれた幻想級を目の前に、俺は小太刀を脇構えで構える。
スピードを殺さないように意識しながら。


あと……。
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