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決戦
一瞬の油断が命取り
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下は王様を筆頭に重量級ぞろいだ。
何の心配もいらない。
俺は数度靄を無効化し、あることに気付いていた。
それは、靄が迫ってくるスピードについてだ。
靄はこちらに伸ばされ始めた直後は等速で移動しているのだ。
しかし、ある地点からこっちまでは加速しながら近づいてくる。
等速直線運動から、等加速度直線運動になるのだ。
いや、まぁ感覚上での話なので実際はどうなのか確かめようもないが。
ともかく、加速した後に処理するのは今は成功しているとはいえ、難易度が高い。
ちょっとしたミスでやらかしてしまうとも限らない。
そもそも、この距離まで離れたのはこの靄から逃れるためだったわけで。
それが解決はしないまでも対処法が確立された今となってはこの距離に留まる理由はない。
よって俺は靄を退けながら前進していき、速さが変わる位置まで来た。
すると、それは今までいた位置と幻想級のちょうど中間地点。
つまり、最初に戦線を敷いていた場所だった。
それは幻想級のMP吸収が有効になる位置でもあることを示している。
やっぱりキーになるのはこの位置なんだよな。
俺がその位置まで出ていったのを見て、レインとケインも出てくる。
「オーシリアさん、ここ床あるんですね!? 本当ですね!?」
ステッド・ファストの上なので恐る恐るだが。
もちろんケインは普通にズンズン進んできたけど。
「リブレさん、大丈夫そうですか?」
「まぁな。ここならまだ対応も楽だし。攻撃している側の感想としてはどうだ?」
「非常に物足りないな! 全く実感がわかん!」
「……先に言われちゃいましたけど、僕も同じです。先ほどからずっとやっているので、もうそろそろ外見にも効いているという証が欲しいところですね。もちろん、カイルさんが言ってたなら削れてるんでしょうけど、やっぱり自分で見ないと達成感は生まれないので」
そこなんだよな。
これだけやっても幻想級の見た目に変化はない。
そりゃ文字通り目の色は変わっちゃいるが、これは向こうが強くなっているという証であって、こっちの攻撃により弱っているという証は1つもない。
攻撃側はうんざりだろう。
「そこは我慢してくれ。外見には現れなくても効いているのは確かなんだからな」
その時、俺は油断していた。
脅威であった靄に対応でき、更にその対応が楽になったことによって幻想級本体から目を離してしまうほどに。
だから、気が付けなかったんだ。
本来なら1か所にしか出来ないはずの靄の渦が複数個出来ていることに。
俺がまた靄を斬る瞬間、他の場所に向かって2本の靄が伸びていることに気づいた。
嘘だろ!?
目の前のを処理して慌ててレインの方を振り返ると、キラに抱えられ、無事であるレインがいた。
「あ、ありがとうございます」
「うん、気を付けてね」
キラにカバーを頼んでおいて良かった。
もう1本は?
俺が探そうとすると、ある男の笑い声が耳に入った。
「わはははは! そうか! 効いていたか!」
自分の攻撃の成果を確認して笑うケインの左目が削がれていた。
目玉の部分には黒い靄があり、もうそこには何もないであろうことが伺える。
しまった……!
何の心配もいらない。
俺は数度靄を無効化し、あることに気付いていた。
それは、靄が迫ってくるスピードについてだ。
靄はこちらに伸ばされ始めた直後は等速で移動しているのだ。
しかし、ある地点からこっちまでは加速しながら近づいてくる。
等速直線運動から、等加速度直線運動になるのだ。
いや、まぁ感覚上での話なので実際はどうなのか確かめようもないが。
ともかく、加速した後に処理するのは今は成功しているとはいえ、難易度が高い。
ちょっとしたミスでやらかしてしまうとも限らない。
そもそも、この距離まで離れたのはこの靄から逃れるためだったわけで。
それが解決はしないまでも対処法が確立された今となってはこの距離に留まる理由はない。
よって俺は靄を退けながら前進していき、速さが変わる位置まで来た。
すると、それは今までいた位置と幻想級のちょうど中間地点。
つまり、最初に戦線を敷いていた場所だった。
それは幻想級のMP吸収が有効になる位置でもあることを示している。
やっぱりキーになるのはこの位置なんだよな。
俺がその位置まで出ていったのを見て、レインとケインも出てくる。
「オーシリアさん、ここ床あるんですね!? 本当ですね!?」
ステッド・ファストの上なので恐る恐るだが。
もちろんケインは普通にズンズン進んできたけど。
「リブレさん、大丈夫そうですか?」
「まぁな。ここならまだ対応も楽だし。攻撃している側の感想としてはどうだ?」
「非常に物足りないな! 全く実感がわかん!」
「……先に言われちゃいましたけど、僕も同じです。先ほどからずっとやっているので、もうそろそろ外見にも効いているという証が欲しいところですね。もちろん、カイルさんが言ってたなら削れてるんでしょうけど、やっぱり自分で見ないと達成感は生まれないので」
そこなんだよな。
これだけやっても幻想級の見た目に変化はない。
そりゃ文字通り目の色は変わっちゃいるが、これは向こうが強くなっているという証であって、こっちの攻撃により弱っているという証は1つもない。
攻撃側はうんざりだろう。
「そこは我慢してくれ。外見には現れなくても効いているのは確かなんだからな」
その時、俺は油断していた。
脅威であった靄に対応でき、更にその対応が楽になったことによって幻想級本体から目を離してしまうほどに。
だから、気が付けなかったんだ。
本来なら1か所にしか出来ないはずの靄の渦が複数個出来ていることに。
俺がまた靄を斬る瞬間、他の場所に向かって2本の靄が伸びていることに気づいた。
嘘だろ!?
目の前のを処理して慌ててレインの方を振り返ると、キラに抱えられ、無事であるレインがいた。
「あ、ありがとうございます」
「うん、気を付けてね」
キラにカバーを頼んでおいて良かった。
もう1本は?
俺が探そうとすると、ある男の笑い声が耳に入った。
「わはははは! そうか! 効いていたか!」
自分の攻撃の成果を確認して笑うケインの左目が削がれていた。
目玉の部分には黒い靄があり、もうそこには何もないであろうことが伺える。
しまった……!
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