戦力より戦略。

haruhi8128

文字の大きさ
上 下
167 / 566
レイン捜索作戦

世の中には色んな炎があるようで

しおりを挟む
「あなたがこの前までいた洞窟にもかがり火があったでしょう? あれも私が頼まれて用意したものよ」

少し自慢げにエルメが話す。
確かにどれだけ放っておいても火が消えないから最後の方は適当に扱っていたな。
それでも消えないから気にはなってたんだ。
二つ名ダブルを持つエルメが出したって言うなら納得がいく。

「あの炎には長く残るようなイメージを持たせておいたのよ。ほら、ダンジョンの途中で火が消えて真っ暗な中に放り込まれるとか考えるだけで嫌じゃない? そういうのを回避したかったのよ。役に立ったでしょう?」
「あぁ、あれにはだいぶお世話になったよ」

明かりとしてだけではなくゾンビを燃やすのにも一役買ってもらったからな。


「で、どういう明かりがお望みなの?」
「そうだな……。欲を言えばあんまり明るくないのがいい。夜に動くからな。俺たちが周りが見えなければいけないのと同時に、周りからばれるのは避けたい」

自分でも無茶苦茶言ってるのはわかっているが、最大限要望を言うとこんなもんだ。

「わかったわ。じゃあ、どうしようかな……」
「できるの!?」
「もちろんよ。私を誰だと思っているの?」
「【炎の巫女】、エルメ様です」
「わかっているならいいのよ」

かっけぇ……。


「じゃあ、こんなのはどうかしら」

少し考えた後にエルメが提案をする。

「持ってる本人にしか見えない炎なんてどう?」
「そんなこともできるのか!?」
「もちろんよ。まぁ、攻撃能力は皆無になるけどね」
「十分すぎる。それで頼むわ」

エルメに松明に炎を点けてもらう。
点けてもらった時にはエルメが持っていたのでわからなかったが、俺に持たせてもらうと火が燃えているのが確認できた。周りが照らされているのもわかる。

「でも、周りから見ると俺はただ木の棒を持ってるやつなんだろ?」
「私以外から見ればね。私は流石に見えるからさ。どうだい、キラ?」
「えぇ、炎は見えませんね。流石です」
「でしょ?」

ほんとにこれはすごい。

「キラもこれ貰っといた方がいいんじゃないのか?」
「いや、僕は遠慮しておくよ」
「なんで?」

こんなに便利なのに。

「なくても見えるからね」
完璧超人ばけものめ……」

なにかこいつにできないことはないのか!?


「潜入は明日の夜なのじゃろう? 今日は早く帰ってゆっくり休むとよい。わしらもここで解散としよう」
「そうしてもらうと助かるよ」

ダンジョン暮らしで生活リズムなどどこかへ消え去ってしまったとはいえ、本来寝るべき夜に活動しなくてはならないのだ。
途中で眠くなってしまっても困るし、調整はしておいた方がいいだろう。


「では、これでこの場は解散とする。各々、自らの仕事へ戻るように」

王様の宣言で全員バラバラに動き出す。

「じゃあ、俺たちも帰るか」
「わかった」
「了解じゃ」

俺は謁見の間を出て後ろをてこてこついてくる二人と共に階段を降りていく。

「あ、そういえば、どうやって家まで戻ろう……」

相当な騒ぎを起こしてここまで来たんだった。
また空から、今度は家まで直接帰った方がいいのか……?

「待ちなさい! いえ、待って、ください……」

そんなことを階段の踊り場で考えていると、追い付いてきたエイグから呼び止められた。
今度はなんだ……?
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...