戦力より戦略。

haruhi8128

文字の大きさ
上 下
18 / 566
王の試練

囮は損って言われるけどそうでもないことも多々あるよね

しおりを挟む
ここで俺は部屋の外でキラの様子を見ておろおろしているルーリアを見つけた。

「おい、こういう時こそお前の出番じゃないのか」
「リブレ様……。しかし私はキラがあれほど取り乱したところを見たことが無いのです。キラの言うことですから根拠のないものだとは思いませんが、真偽を計りかねていて……」

暴走姫バーサク・プリンセス】なんて二つ名ダブルついてるのにこういう時は冷静なんだな。あ、これはあれか。他人が自分より冷静じゃなかったらなんか一気に自分が冷静になるやつ。キラが普段冷静なだけにより顕著にそれが出ているのかもな。


「その話なら本当だ。俺が調べた。ハンネにも確認を取ってもらおうと思ったんだけどどこにいるかわかる?」
「ハンネなら後ろに……」
「いますよー」

なんだよ! 普通に声かけろよ!

「なんで無言で後ろに回り込んでんだよ!」

敵意はないからわかんないしさー。

「それはお茶目心というやつだよ。で、硝石、あぁ硝石と呼ばれている物の真偽やっけ?」
「あぁ、そうだ。急いで調べてもら……」
「もう調べたよ」

早いな!

「あのキラがあんなに血相変えてるんだ。ただ事じゃない。すぐに周りから話を聞いて調べたのさ。まぁ私にとってすれば楽な仕事だったね」

「で、結果は?」



「完璧に黒。全くの別物だ。なんの石かまではわかってないから一概には言えないけど、人体への影響もないとは言い切れない」
「そして貴族たちの中にその黒幕がいると……?」
「俺はそう確信してる。だけどとっかかりがない」

応答してから気づいた。ルーリアから凄い黒いオーラがでてる。

「とっかかり? 必要ないです。一人ひとり聞いてみればわかりますから」

静かなのが逆に怖い。しかもそれ体に聞くってやつだよね。

「待て待て待て待て」

ハンネとレインも加わって、部屋に突入して尋問を始めようとしているルーリアを押さえつける。

「そんなことしたら解決はしても王政が死ぬぞ。王様に迷惑はかけられないだろ」


その一言で少し冷静になったらしい。

「じゃあどうしろと言うんですか」

そうだな。

「とりあえずあの場を終わらせてくれ。後にまた場を設けるとか言って。とにかくキラをあのままにしておくのはまずい」
「それはあたしも同意見だね。あのままじゃ黒幕以外の反感もかってしまう」
「わかりました」

そう言ってルーリアが颯爽と出ていく。
その間に……。

「ハンネ、君はその石の正体を探ってくれないか。何なのかわかっていたほうが絶対に相手を抑え込みやすい」
「なんであたしが……」
「協力してくれたらキラの説得に協力しよう」
「わかった! 頑張る!!」

ちょろいな。

「あれ? あたしはあんたも解剖したいんだけど…」


「さて、レイン」

俺はなんにも聞こえなーい。
レインが激しくつっこみたそうな顔をしているがどうにかこらえてくれたようだ。

「ここまで関わった以上俺は黒幕を見つけたいと思う。お前はどうする?」
「ついていきますよ。リブレさんは僕のパートナーですから」

うれしいことを言ってくれる。


「あはは、迷惑かけちゃったみたいだね」

お、キラがルーリアと戻ってきた。

「ここでは話しづらい。どっか部屋はないか?」
「なら私の部屋を使ってください。普通のひとは来れませんし」


そう言うので来てみたものの……。
広っ!!
え? これ一人部屋?

「少々狭いですがどうぞおかけになってください」

狭い? これが?
隣でレインもは? って顔をしてる。同士よ。
1つの部屋がレインの家の1フロアより大きいとかある?


「で、どうしてここに集まったのかな?」

そうだった。その話だ。

「俺としてはここまで関わった以上最後まで協力したいんだが構わないか?」
「むしろこちらからお願いしますわ。キラも信用しているようですし」
「じゃあここの4人とハンネは協力関係にあるとして話を進めるぞ」

正直もっと人数は欲しかったが。

「まずルーリアだが、普段通りにしていてくれ」
「それで黒幕を見つけられますの?」
「いやルーリアには何もしないでほしいんだ。いくらなんでも姫様が黒幕を探しているとなれば城中が大混乱になる。それが狙いである可能性を排除できない以上動かれるのは好ましくない」

建前でほんとはこの娘が動くとどうせ面倒なことになるだろうからだ。

「そしてキラ。逆にお前は全力で黒幕を探してくれ」
「いいのかい?」
「お前はもうみんなの前で気づいたことを暴露しちまってるからな。派手に動いても誰も調べていること自体は怪しまない」


「じゃあ二人はどうするんだい?」
「俺らが黒幕をひきずり出すのさ。俺らはほとんどの城内の人間に認知されてないからな。自由に動いていい許可さえもらえればこれほど調査にうってつけのやつはいない。キラが動くことによって他への警戒は手薄になるだろうしな」
「わかりました。お二人への許可は私が手をまわしておきます」
「助かる」
「あ、あと1点だけよろしいでしょうか」
「なんだ?」
「さきほどキラを連れ戻す際についかっとなって5日以内に査問会を開くと言ってしまったので、タイムリミットがあります」

初耳だな。

「なんでそう血の気が多いんだよ!」
「申し訳ありません!」

多少の誤算はあったがしょうがない。

「これは1国の姫ルーリアから依頼を受けたという体でいいかな?」
「それで構いません」

オッケー。それじゃ任務しごとをしましょうかね。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?

ミクリヤミナミ
ファンタジー
仮想空間で活動する4人のお話です。 1.カールの譚 王都で生活する鍛冶屋のカールは、その腕を見込まれて王宮騎士団の魔王討伐への同行を要請されます。騎士団嫌いの彼は全く乗り気ではありませんがSランク冒険者の3人に説得され嫌々魔王が住む魔都へ向かいます。 2.サトシの譚 現代日本から転生してきたサトシは、ゴブリンの群れに襲われて家族を奪われますが、カール達と出会い力をつけてゆきます。 3.生方蒼甫の譚 研究者の生方蒼甫は脳科学研究の為に実験体であるサトシをVRMMORPG内に放流し観察しようとしますがうまく観察できません。仕方がないので自分もVRMMORPGの中に入る事にしますが…… 4.魔王(フリードリヒ)の譚 西方に住む「魔王」はカール達を自領の「クレータ街」に連れてくることに成功しますが、数百年ぶりに天使の襲撃を2度も目撃します。2度目の襲撃を退けたサトシとルークスに興味を持ちますが……

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...