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教師3年目

こちらの新学期

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「みんな、久しぶりだな」 

なぜか長かったように感じる夏休みを終え、新学期へと入る。 
夏休みの間に校舎の建設も一段落し、ついに屋内での授業が開始される。 
しかし、先学期と違う点が場所以外に一つ。 

「「「はーい!」」」 

元気な声が五つ。 
新学期になっても帰ってくれなかったSクラスの生徒たちだ。 
ちなみに声を出していないのはもちろんエウレアで、声を出そうとして出なかったのももちろんシャロンである。
曰く、 

「先生が夏休みにかまってくれなかったのが悪い」 

とのこと。 
確かに放り出していたのは認めるし、申し訳ないとも思ってる。 
帝国のことなんて関係ない話なんだからな。 
しかし、居座られるとは思ってなかった。 
なんとか一か月という期間を設けて落ち着いてもらったのだ。 

「さて、お客様もいるわけだけど、まずは宿題の確認からしておこうか」 

宿題。 
世の生徒、学生を悩ませる最大の事項ではなかろうか。 
かく言うライヤも学生時代に大いに疑問に思ったものだ。 
これに意味はあるのか? 

教師側に立ったライヤとしての見解は、確かに必要、である。 
まず、基本的に人間は忘れる生物である。 
よって、定期的な復習が必要になるが、長期休み中は授業もなく、そんな機会がない。 
記憶を保持させるために必要なのだ。 

そして、量について。 
過剰ではないかという量については、一気に終わらせることを防止しているのではないかと考える。 
夏休みが始まりましたと同時に終える人や、夏休み終了前の三日で終わらせる人など、記憶の保持に有効でないやり方をさせないためではないだろうか。 
それでもやる人は出てくるが、そのやり方ができるということは、おおよそ身についていることを意味する。 

やらない人? 
知らん、そんなもん。 

「よし、テキストは後で確認しておくから、とりあえずみんな縄を手に取ろうか」 

元は魔法制御が拙う火力だけあるSクラスの生徒たちのために考案した練習法だったが、まだ魔法を使ったことがない生徒たちにも有効らしいことがここ半年で分かった。 
初めて魔法を使う際はイメージが難しい。 
いきなり空中に火を出せと言われても、やりにくいのは考えてみれば当然だ。 
ライヤ自身も、最初は私物の本を燃やしたところからスタートしている。 
その火を消せなくて本が一冊丸々燃え、泣き叫んだのはまた別のお話。 

話を戻そう。 
ライヤも経験済みの通り、燃えやすい素材に火をつける、という事象のほうがイメージしやすいのだ。 
そして、魔法は基本的にイメージが基盤にある。 
それが可能かどうかが魔力量や魔力制御がかかわる部分であり、想像しにくいことは当然実現させづらい。  

「よし、火を灯していこう。まず、一つ目」
 
使用しているのはちょうど人型のような形の縄。 
分かれている部分に順に火を灯していき、全部に灯せれば凄いというものだ。 
並行して魔法が使えているということになる。 

「くっ……!」 

しかし、そう簡単なものでもない。 
大抵の生徒は一つが限界であり、キリトとミクも二つ目を灯して三つ目を灯せるかどうかというところ。 

「「おぉ……!!」」 

そんな中、軽々と五つ目まで灯すSクラスの生徒たち。 

「あと二年もすれば皆さんもこのくらいできるようになりますよ? ちゃんとライヤさんについていけば、ね?」  

王女スマイルでウィルはそんなことを言い、こっちの生徒たちを元気づけている。 

「ウィル様……。なんとかわいらしい……!」 
「妹になっていただけないかしら……? いえいえ、妹なんて烏滸がましい! せめて私をペットに……!」 

元気……、づけて……? 

カルト教団はこうやって生まれるんだなという場面を目にしたのであった。 
 

 
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