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教師3年目

人生の転機

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「よし、戻るか」

王都にいることができたのは2週間ほど。
まぁ、別にまだいてもいいのだが、そうするとマリオットがしびれを切らして乗り込んでくるかもしれない。
その最悪のパターンだけは避けなければならない。
と、いうわけで早々に諸国連合へと戻る。

「旅行だー!」

来た時よりもだいぶ大人数で。

「ちゃんと2学期には王都に戻るんだぞ」
「わかってますよ」

夏休み中に旅行に行くだけと言い張られればライヤにそれを止める権利は無いし、そのウィルにのせられてS級の全員が来ることになってしまった。
ちょっとした修学旅行である。

「お前ら1人1人に個室なんてないからな? 行ってから文句言いだしたりしたらその場で放り出すぞ」
「「了解」」

もうできるだけ脅しておく。
生徒たちがこっちに来たところで、泊まれるような場所はライヤ達の家を除いて他にない。
ライヤも泊めるのが嫌なわけではないが、ふと懸念が浮かぶ。
情事の様子を見られでもしたら、と。
万全を期すつもりではあるが、万が一という事もある。
家の中での勝手な行動は制限しておかなければならない。

というか、この里帰りから帰ったらできている、という予定の家に既に人を招くなんて捕らぬ狸の皮算用の究極形では?
予定より遅れてたらどうしよう。
貴族の子たちをいきなりよくわからん宿に泊めるわけにもいかない。
最悪領主にまた頭を下げよう……。

「よし、じゃあ、出発だ!」




「おぉ!!」

3日ほどの旅程を経て再び帰ってきたズンバ。
その校外にはひときわ大きな屋敷が鎮座していた。

「すげぇ!」

思わず語彙力もなくなる。

「いい出来になったじゃない」
「すごいねー」
「ちゃんと完成してて良かったです」

アンたちは落ち着いているが、ライヤにはそれが理解できない。

「念願のマイホームだぞ!」
「まぁ、嬉しいわね」
「貴族ならいずれはもつものですから」

うーむ。
この辺りの価値観はライヤが平民出身だからなのか、それとも元日本人だからなのか。
マイホームを買うって人生の凄い大きな転換点だと思うんだけどな。
王都にあるやつは貰いものだし。


門の前で外観に酔いしれていると、親方が現れた。

「お、帰ってきてたか」
「こんなに立派なのを作っていただいてありがとうございます!」
「なぁに、こっちはもらった金額に見合う仕事がしたかっただけだ。これでも到底見合っているとは思っちゃいないが……」
「じゃあ、その分は取っておいてください。また何か追加したり、修理するときはお願いするので」
「あぁ、その時は任せてくれ」

男同士、固く握手する。

「ところでうしろのちっさい奴らはなんだ?」
「あぁ、俺の教え子たちです。王都の方の。夏休み中なので」
「遊びに来たってわけか。ちょうどいい。この子らの布団も俺が用意してやろう」
「いいんですか!?」
「いいってことよ。楽しい仕事をさせてもらった礼だ」

すぐに用意すると言って親方は町の方へと帰っていった。
持つべきものは人の好い知り合いだな。

さて。
外観ばかりで満足もしていられない。

「中も見てみよう」




「「うわぁぁ……!」」

さっきはあまり反応していなかった女性陣から感嘆の声が上がる。
外観は生活をしていれば出来ていくさまが見えてしまうため、どうしてもネタバレをくらっていたが、内装は見ないようにしていたのだ。

「? ゲイルたちも入らないのか?」
「いや、先に先生たちだけの方がいいかと思って……」

玄関から入ろうとしない生徒たちに声をかけるが、そう言われれば確かに。
少しだけでも家族だけで堪能したい。

「悪いな、少しだけ外で待っててくれるか」




「先生がこんなに立派な屋敷を持つようになるなんてな……」

屋敷の庭でゲイルたちは話す。

「学園の教師は下手な貴族よりも貰っていると聞きますしね」
「王女様たちもいるからねー」

ライヤとヨルの教職での給料に加え、フィオナは軍からアンは国から給料をもらっている。
普通に使うのであれば到底使いきれないであろう金額だ。
こうして普通に使わないから使いきれるのだが。
世の中は上手くできているものだ。

「この頃縁談の話がうるさくてさ……」
「うちもです……」
「ぼくもー」
「「「……」」」

彼らももう12歳。
そんな話も出てくる。

「ティムは?」
「うん?」
「ティムに縁談の話とかはないのか?」

1人離れて本を読んでいたティムにも声をかける。

「……その話は辞めろ」
「……そうか」
「肩を組むな!」

ここにも仲間がいたか、と3人からわちゃわちゃされるティムであった。
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