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教師3年目

不満

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「冗談などではなく?」
「冗談を言うためにわざわざこっちに来たりしないよ」
「冗談であってくれと思ってるけどな」

第二皇子が自国を潰そうとしてるとか冗談でも聞きたくない。

「真面目も真面目、大真面目さ」
「……理由は?」
「今の帝国に魅力を感じないから」

ばっさりと切り捨てるマリオットに胡散臭い顔を向けると、つらつらと話し出す。

「大体、気に入らなかったらとりあえず戦争っていうのが気に食わないよね。時代に即してないっていうか。手段の一つとして戦争があるのは当然だと思うし、うちにとっては強い手札だとは思うけど、それ一択っていうのはおかしいよね。しかも最近は別に他国を圧倒する力がなくて勝算が薄くても仕掛けようとか言ってる馬鹿もいるしね。考えることを放棄してるだけで何も格好良くないし、意味ないよね」

横で神妙な顔をしているランボルも何も口を挟まない。
騎士であるランボル。
命令されれば戦うという男でさえ、思うところがあるという事か。

「それで、なんでそれを俺たちのところに持ってきたんだ」
「最初は君たちに話すつもりはなかったさ。ただ、キリシュライトがそういうのは君に頼ったほうがいいというからね」

ぐりんっ! とキリシュライトの方を向く。

「怖いですよ……。ライヤさん、そういうの得意でしょう?」
「得意だったとして! おかしいでしょ! 何勝手に内乱の手伝いさせようとしてるんだ!?」
「でも、もう聞いちゃいましたし……。ここから協力しないというのはちょっと無理があるような……」
「……アン。お前の弟はどうなってるんだ」
「昔はこんな子じゃなかったのにね。誰と会ってから変わっちゃったのかしら」

俺のせいか!?

「内乱の手伝いって言っても、そっちの内情をこっちに伝えることはできないだろ? そんな状態で何が出来るって言うんだ」
「あぁ、その辺りは心配しなくてもいいよ」

ランボルが後ろの方からどさっと大きな荷物を持ってくる。

「これだけあれば帝国がどうなってるのかは割と詳細にわかるはずだ」
「国家機密……」
「今からぶっ壊す国の情報なんていくら渡しても構うもんか。その代わり、新しく僕が国を創るときには友好的でいてくれると嬉しいな」
「こっちのメリットは?」
「この大陸に王国に敵対的な国がいなくなるってことかな?」
「うーむ……」

実に魅力的だな……。

「ただなぁ、こっちは教師なんだ。そう簡単に時間は取れない」
「……教師!? 軍人じゃなくて?」
「どう聞き間違えてもそうはならんやろうが。まごう事なき教師だ」

今日一大きなリアクションをするマリオットを衝動的にはたきたくなるが、どうにか抑える。

「だから、やるとしても夏休みに入ってから。で、キリシュ」
「はい」
「やってもいいけど、俺個人への報酬がないとぜったいやらない。何を用意できる?」
「えー……。やってくれてもいいじゃないですかー……」
「ただ働きは御免だ」
「お金はいらないですもんね」
「むしろ有り余ってるからな」

自分の得がないのにやるほどお人好しじゃない。
絶対に俺じゃないといけないってわけでもないしな。

「夏休みまでまだ時間ありますよね」
「まぁ、ひと月もないけど」
「少し待ってもらっていいですか。その間に何か考えるので」

そしてその日はお開きになった。




「えー、今日は見学者がいますが、気にしないように……」

その後、マリオットたちはどうしたのか。
すぐに帰るんだろうと高を括っていたライヤだが、最悪な形で裏目に出た。
授業の見学に来たのだ。
もちろんランボルもいる。
生徒たちはランボルがヤバいやつだとは気づいていないようだが、どこか落ち着きがない。
何か感じているのだろうか。

「僕学校ってきたことないからワクワクするね!」
「そこ、静かに」

しかも無駄にテンションが高い。
なんやねんお前は。
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