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教師3年目

鬼ごっこは突然に

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連れて行かれた元傭兵の男の人生に思いを馳せ、切り替えて忘れる。
次に思い出すのはいつだろうな。

「悪かった。折角のお出かけが台無しだな」
「まぁ、お出かけとしては下の下だけど。私にとってはプラスのこともあったわ」

不満な感情と満足の感情が戦っているアンは口角は上がっているが、目は少し怒り気味だ。
器用だな。

「どうだったよ、俺の戦闘は?」
「あんまり長引かなかったのは残念だったけど、改めて綺麗だなと思ったわ。私はやっぱり少し力任せになっちゃうところがあるから……」

ライヤの動きはかなり綺麗だ。
やっていることは汚かったりするが。
ライヤは魔力量もそれほど多くはなく、身体能力が特別に優れているわけではない。
どちらも平均よりは上だという程度のものだ。
それをアンと対等に戦えるようにしろと言われれば、いやでも動きは最適化されていく。
結果として、それを読まれることもあり、それが最近のアンとの手合わせの敗因だったりするのだが、初見の相手には気にする必要がない。

「ただ、あんまり格好つけようとしちゃダメよ。ヨル」
「え、いいんですか?」
「授業に後遺症が出たらいけないでしょ。困るのはヨルも一緒よ?」
「それもそうですね」

ちょっと失礼しますとヨルがライヤの袖をめくる。
そこには腱が伸びて真っ赤に腫れている前腕。

「バレてたか……」
「本当に隠す気なら歩くたびに顔を顰めるのやめなさいよ」

やっぱ歩くと振動がさ……。

「フィオナさん、一旦冷やしてくれますか?」
「ほいきたー」
「つめたっ!」
「あんまり無茶したらダメだよー?」

フィオナがライヤの腕に触れると、そこから冷気が伝わってライヤの前腕に拡がる。

「じゃあ、治していきますね」

ものの数秒でライヤの腕が腫れる前までの太さに戻る。

「違和感はないですか?」
「まぁ、ちょっと冷たいくらいかな」
「それくらい我慢してください」

ペしっとヨルはライヤの腕を叩く。
痛くもない程度だから、ちゃんと完治したのだろう。

「流石だな」
「私の出番はないほうがいいんですよ?」
「悪いな、ちょっと熱くなっちゃったわ」

無茶して隠そうとしてたのを全員にばれてたんじゃ世話ないけどな。

「でも、格好良かったよー♪」

ひんやりしてて気持ちいいねー、とライヤの腕に飛びついて頬を摺り寄せるフィオナ。
腕をむんにゅりと包み込む感触にびっくりしてそちらを見ると、逆の腕にも体重を感じる。
そちらを振り返ると、ヨルが負けじとがっしり腕を捕まえていた。
少しもぞもぞしていた手のひらは少ししてライヤの手の恋人つなぎになった。
そしてライヤを見上げながらはにかむ。
可愛いかよ。
なんだこの生き物。

出遅れたアンは3人の目の前で仁王立ちである。

「ちょっと、私は?」

3人はそれぞれに目を見合わせる。

「逃げてみるか?」
「「賛成!」―!」

くるりと周り右をして逃走を試みる3人。

「あ! ちょっと待ちなさい!」

すぐに追いかけ始めるアン。
追いかけっこは長く続きそうな気がした。




「いい? 今度置いてったら焼き払うわよ」
「あい……」

気のせいだった。
1分かからずに捕まって説教をくらうライヤであった。
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