288 / 328
教師3年目
鬼ごっこは突然に
しおりを挟む
連れて行かれた元傭兵の男の人生に思いを馳せ、切り替えて忘れる。
次に思い出すのはいつだろうな。
「悪かった。折角のお出かけが台無しだな」
「まぁ、お出かけとしては下の下だけど。私にとってはプラスのこともあったわ」
不満な感情と満足の感情が戦っているアンは口角は上がっているが、目は少し怒り気味だ。
器用だな。
「どうだったよ、俺の戦闘は?」
「あんまり長引かなかったのは残念だったけど、改めて綺麗だなと思ったわ。私はやっぱり少し力任せになっちゃうところがあるから……」
ライヤの動きはかなり綺麗だ。
やっていることは汚かったりするが。
ライヤは魔力量もそれほど多くはなく、身体能力が特別に優れているわけではない。
どちらも平均よりは上だという程度のものだ。
それをアンと対等に戦えるようにしろと言われれば、いやでも動きは最適化されていく。
結果として、それを読まれることもあり、それが最近のアンとの手合わせの敗因だったりするのだが、初見の相手には気にする必要がない。
「ただ、あんまり格好つけようとしちゃダメよ。ヨル」
「え、いいんですか?」
「授業に後遺症が出たらいけないでしょ。困るのはヨルも一緒よ?」
「それもそうですね」
ちょっと失礼しますとヨルがライヤの袖をめくる。
そこには腱が伸びて真っ赤に腫れている前腕。
「バレてたか……」
「本当に隠す気なら歩くたびに顔を顰めるのやめなさいよ」
やっぱ歩くと振動がさ……。
「フィオナさん、一旦冷やしてくれますか?」
「ほいきたー」
「つめたっ!」
「あんまり無茶したらダメだよー?」
フィオナがライヤの腕に触れると、そこから冷気が伝わってライヤの前腕に拡がる。
「じゃあ、治していきますね」
ものの数秒でライヤの腕が腫れる前までの太さに戻る。
「違和感はないですか?」
「まぁ、ちょっと冷たいくらいかな」
「それくらい我慢してください」
ペしっとヨルはライヤの腕を叩く。
痛くもない程度だから、ちゃんと完治したのだろう。
「流石だな」
「私の出番はないほうがいいんですよ?」
「悪いな、ちょっと熱くなっちゃったわ」
無茶して隠そうとしてたのを全員にばれてたんじゃ世話ないけどな。
「でも、格好良かったよー♪」
ひんやりしてて気持ちいいねー、とライヤの腕に飛びついて頬を摺り寄せるフィオナ。
腕をむんにゅりと包み込む感触にびっくりしてそちらを見ると、逆の腕にも体重を感じる。
そちらを振り返ると、ヨルが負けじとがっしり腕を捕まえていた。
少しもぞもぞしていた手のひらは少ししてライヤの手の恋人つなぎになった。
そしてライヤを見上げながらはにかむ。
可愛いかよ。
なんだこの生き物。
出遅れたアンは3人の目の前で仁王立ちである。
「ちょっと、私は?」
3人はそれぞれに目を見合わせる。
「逃げてみるか?」
「「賛成!」―!」
くるりと周り右をして逃走を試みる3人。
「あ! ちょっと待ちなさい!」
すぐに追いかけ始めるアン。
追いかけっこは長く続きそうな気がした。
「いい? 今度置いてったら焼き払うわよ」
「あい……」
気のせいだった。
1分かからずに捕まって説教をくらうライヤであった。
次に思い出すのはいつだろうな。
「悪かった。折角のお出かけが台無しだな」
「まぁ、お出かけとしては下の下だけど。私にとってはプラスのこともあったわ」
不満な感情と満足の感情が戦っているアンは口角は上がっているが、目は少し怒り気味だ。
器用だな。
「どうだったよ、俺の戦闘は?」
「あんまり長引かなかったのは残念だったけど、改めて綺麗だなと思ったわ。私はやっぱり少し力任せになっちゃうところがあるから……」
ライヤの動きはかなり綺麗だ。
やっていることは汚かったりするが。
ライヤは魔力量もそれほど多くはなく、身体能力が特別に優れているわけではない。
どちらも平均よりは上だという程度のものだ。
それをアンと対等に戦えるようにしろと言われれば、いやでも動きは最適化されていく。
結果として、それを読まれることもあり、それが最近のアンとの手合わせの敗因だったりするのだが、初見の相手には気にする必要がない。
「ただ、あんまり格好つけようとしちゃダメよ。ヨル」
「え、いいんですか?」
「授業に後遺症が出たらいけないでしょ。困るのはヨルも一緒よ?」
「それもそうですね」
ちょっと失礼しますとヨルがライヤの袖をめくる。
そこには腱が伸びて真っ赤に腫れている前腕。
「バレてたか……」
「本当に隠す気なら歩くたびに顔を顰めるのやめなさいよ」
やっぱ歩くと振動がさ……。
「フィオナさん、一旦冷やしてくれますか?」
「ほいきたー」
「つめたっ!」
「あんまり無茶したらダメだよー?」
フィオナがライヤの腕に触れると、そこから冷気が伝わってライヤの前腕に拡がる。
「じゃあ、治していきますね」
ものの数秒でライヤの腕が腫れる前までの太さに戻る。
「違和感はないですか?」
「まぁ、ちょっと冷たいくらいかな」
「それくらい我慢してください」
ペしっとヨルはライヤの腕を叩く。
痛くもない程度だから、ちゃんと完治したのだろう。
「流石だな」
「私の出番はないほうがいいんですよ?」
「悪いな、ちょっと熱くなっちゃったわ」
無茶して隠そうとしてたのを全員にばれてたんじゃ世話ないけどな。
「でも、格好良かったよー♪」
ひんやりしてて気持ちいいねー、とライヤの腕に飛びついて頬を摺り寄せるフィオナ。
腕をむんにゅりと包み込む感触にびっくりしてそちらを見ると、逆の腕にも体重を感じる。
そちらを振り返ると、ヨルが負けじとがっしり腕を捕まえていた。
少しもぞもぞしていた手のひらは少ししてライヤの手の恋人つなぎになった。
そしてライヤを見上げながらはにかむ。
可愛いかよ。
なんだこの生き物。
出遅れたアンは3人の目の前で仁王立ちである。
「ちょっと、私は?」
3人はそれぞれに目を見合わせる。
「逃げてみるか?」
「「賛成!」―!」
くるりと周り右をして逃走を試みる3人。
「あ! ちょっと待ちなさい!」
すぐに追いかけ始めるアン。
追いかけっこは長く続きそうな気がした。
「いい? 今度置いてったら焼き払うわよ」
「あい……」
気のせいだった。
1分かからずに捕まって説教をくらうライヤであった。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる