282 / 328
教師3年目
ズンバの街
しおりを挟む
「今日はこのズンバの街をご案内させていただきます、ミクと申します」
「そんなに他人行儀な事ある?」
改めてズンバの街を見て歩くと領主に伝えたら、やたら他人行儀のミクが来た。
「冗談です。一応、お義父様から依頼されましたので最初くらいは依頼の体を作っておこうかと思いまして」
「わざわざミクに案内してもらわなくても、勝手に歩き回るけど?」
「私も家にいたらお手伝いをさせられるだけなので渡りに船だったのです。そういうわけですから、案内させていただけると嬉しいです」
「あぁー……」
覚えがある。
何をするでもなく、家にいたりすると何かしら手伝いをやらされるのはどこでも一緒なようだ。
その解決法としては、他に用事があること。
特に、他人が関わっている予定だと親もそれを放っておいて他の事をしろとは言いにくい。
「なら、キリトはどうした?」
「キリト君は宿題に追われてます」
「この前終わったって言って喜んでなかったか?」
「えぇ。それで宿題をイリーナ様に送って喜んでいたのですが、翌日また差出人がイリーナ様の小包が届きまして。まるでキリト君がどのくらいで宿題を終えているかを見透かしているようなタイミングでした」
「それで、またあいつは机に向かってるのか」
「はい。椅子に座って数分は茫然としていましたが。先ほど見てみたらほぼ半泣きでしたがちゃんとやっていました」
「……」
イリーナの手の届く範囲を離れてもその圧からは逃れられないのか。
いや、キリトには送られてくるものなんか放っておくという選択肢も一応あったはずだ。
逆に言えば、後に会った時に宿題をしていなかったらどんな目に合うかわからないというのが刷り込まれている証明でもあるか。
天狗になっていたキリトをしつけるにはイリーナが最善の人選だと思ってライヤはイリーナにお願いしたわけだが、最近はその選択を多少疑っている。
「じゃあ、行きましょうか?」
ミクが何にも言わないことから、キリトにはこのくらい必要だと思ってると推測できるが、あまりにも休みがなさ過ぎて可哀想だ。
今度少しだけでも休みをあげるように手紙を送っておこう。
「あら、ミクちゃん! 今日はお使いかい?」
「いえ、こちらの方々をご案内しているところです。この街で一番の八百屋はここなので」
「あらぁ、もう! よくわかってるわね! あんた、ミクちゃんの何だい!?」
「あ、教師です。この度分校を作ることになって……」
一瞬驚いた顔をした八百屋のおばちゃんはすぐに笑顔に戻る。
「先生様かい! こりゃ驚いた! どうするかい? 今日はいいキャベツが入ってるよ!」
「とりあえず今日はやめときます。この後も歩くのであまり重たいものはもてません」
「そうかい! じゃあまた来るのを待ってるよ!」
あったかいおばちゃんだなぁ……。
「そんなに他人行儀な事ある?」
改めてズンバの街を見て歩くと領主に伝えたら、やたら他人行儀のミクが来た。
「冗談です。一応、お義父様から依頼されましたので最初くらいは依頼の体を作っておこうかと思いまして」
「わざわざミクに案内してもらわなくても、勝手に歩き回るけど?」
「私も家にいたらお手伝いをさせられるだけなので渡りに船だったのです。そういうわけですから、案内させていただけると嬉しいです」
「あぁー……」
覚えがある。
何をするでもなく、家にいたりすると何かしら手伝いをやらされるのはどこでも一緒なようだ。
その解決法としては、他に用事があること。
特に、他人が関わっている予定だと親もそれを放っておいて他の事をしろとは言いにくい。
「なら、キリトはどうした?」
「キリト君は宿題に追われてます」
「この前終わったって言って喜んでなかったか?」
「えぇ。それで宿題をイリーナ様に送って喜んでいたのですが、翌日また差出人がイリーナ様の小包が届きまして。まるでキリト君がどのくらいで宿題を終えているかを見透かしているようなタイミングでした」
「それで、またあいつは机に向かってるのか」
「はい。椅子に座って数分は茫然としていましたが。先ほど見てみたらほぼ半泣きでしたがちゃんとやっていました」
「……」
イリーナの手の届く範囲を離れてもその圧からは逃れられないのか。
いや、キリトには送られてくるものなんか放っておくという選択肢も一応あったはずだ。
逆に言えば、後に会った時に宿題をしていなかったらどんな目に合うかわからないというのが刷り込まれている証明でもあるか。
天狗になっていたキリトをしつけるにはイリーナが最善の人選だと思ってライヤはイリーナにお願いしたわけだが、最近はその選択を多少疑っている。
「じゃあ、行きましょうか?」
ミクが何にも言わないことから、キリトにはこのくらい必要だと思ってると推測できるが、あまりにも休みがなさ過ぎて可哀想だ。
今度少しだけでも休みをあげるように手紙を送っておこう。
「あら、ミクちゃん! 今日はお使いかい?」
「いえ、こちらの方々をご案内しているところです。この街で一番の八百屋はここなので」
「あらぁ、もう! よくわかってるわね! あんた、ミクちゃんの何だい!?」
「あ、教師です。この度分校を作ることになって……」
一瞬驚いた顔をした八百屋のおばちゃんはすぐに笑顔に戻る。
「先生様かい! こりゃ驚いた! どうするかい? 今日はいいキャベツが入ってるよ!」
「とりあえず今日はやめときます。この後も歩くのであまり重たいものはもてません」
「そうかい! じゃあまた来るのを待ってるよ!」
あったかいおばちゃんだなぁ……。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます!
つなかん
ファンタジー
なんちゃってヴィクトリア王朝を舞台にした乙女ゲーム、『ネバーランドの花束』の世界に転生!? しかし、そのポジションはヒロインではなく少ししか出番のない元婚約者の妹! これはNTRどころの騒ぎではないんだが!
第一章で殺されるはずの推しを救済してしまったことで、原作の乙女ゲーム展開はまったくなくなってしまい――。
***
黒髪で、魔法を使うことができる唯一の家系、ブラッドリー家。その能力を公共事業に生かし、莫大な富と権力を持っていた。一方、遺伝によってのみ継承する魔力を独占するため、下の兄弟たちは成長速度に制限を加えられる負の側面もあった。陰謀渦巻くパラレル展開へ。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
公爵夫人のやけごはん〜旦那様が帰ってこない夜の秘密のお茶会〜
白琴音彩
ファンタジー
初夜をすっぽかされ続けている公爵夫人ヴィヴィアーナ。今日もベットにひとりの彼女は、仲間を集めて厨房へ向かう。
公爵夫人が公爵邸の使用人たちとおいしく夜食を食べているだけのほのぼのコメディです。
*1話完結型。
*リアルタイム投稿
*主人公かなり大雑把なので気になる人はUターン推奨です。
*食べ盛りの女子高校生が夜中にこっそりつくる夜食レベル
モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)
優摘
ファンタジー
※プロローグ以降の各話に題名をつけて、加筆、減筆、修正をしています。(’23.9.11)
<内容紹介>
ある日目覚めた「私」は、自分が乙女ゲームの意地悪で傲慢な悪役令嬢アリアナになっている事に気付いて愕然とする。
しかもアリアナは第一部のモブ系悪役令嬢!。悪役なのに魔力がゼロの最弱キャラだ。
このままではゲームの第一部で婚約者のディーンに断罪され、学園卒業後にロリコン親父と結婚させられてしまう!
「私」はロリコン回避の為にヒロインや婚約者、乙女ゲームの他の攻略対象と関わらないようにするが、なぜかうまく行かない。
しかもこの乙女ゲームは、未知の第3部まであり、先が読めない事ばかり。
意地悪で傲慢な悪役令嬢から、お人よしで要領の悪い公爵令嬢になったアリアナは、頭脳だけを武器にロリコンから逃げる為に奮闘する。
だけど、アリアナの身体の中にはゲームの知識を持つ「私」以外に本物の「アリアナ」が存在するみたい。
さらに自分と同じ世界の前世を持つ、登場人物も現れる。
しかも超がつく鈍感な「私」は周りからのラブに全く気付かない。
そして「私」とその登場人物がゲーム通りの動きをしないせいか、どんどんストーリーが変化していって・・・。
一年以上かかりましたがようやく完結しました。
また番外編を書きたいと思ってます。
カクヨムさんで加筆修正したものを、少しずつアップしています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる