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教師2年目

対策

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去年と同じく、最後に控えているのはウィル。
去年のライヤはエウレアの後だったというのもあって油断していたのかもしれない。
そこを更に言動によって揺さぶられた。
だが、今年はそんなことは許さない。

「始めようか」
「お願いします」

ウィルの周りに霜が降りる。
氷魔法で空間の温度が下がっているのだ。
それもウィルの周りだけ。

「そんな使い方教えたっけか?」
「特別コーチに教えていただきました」

にっこりと笑うウィルだが、その魔法の使い方にライヤは既視感を覚える。

(十中八九、アンだな……)

ライヤにしてみればこれまで幾度となく見てきた魔法の使い方。
自分の周りに常に魔法を展開しておくことによって相手の魔法を通りにくくし、どこの制御を奪われても即座に補填しやすくなる。
馬鹿みたいに魔力量があるからこその戦法だが、有用であることには間違いない。

「氷原」

これまた去年と同じく氷で地面を覆うウィル。

「空中戦をお望みか?」

去年もライヤが空を飛ぶことを前提に作戦が練られていた。
今年は恐らくアンと対策をしているという事は、ある程度ライヤの手の内はバレていると言ってもいいだろう。

「あっぶねぇな!?」

ウィルの周りに浮かんでいたキラキラとした氷の粒。
少し大きくなったかと思えば、ライヤに向けて無数のそれが高速で発射された。
精々小指の先くらいの大きさではあるが、数が桁違い。
いくらライヤでも制御を奪うのが不可能なため、土壁を立てて防ぐ。

ギャリッ!

横で氷が削れる音がしてライヤが振り向くと、またも無数の氷弾を周りに浮かべたウィルがいた。

「……!」

発射された氷弾を飛びながら躱すと、既にウィルは移動している。

「なるほどな。氷を上手く使ってるな」

氷はもちろん、摩擦が小さい。
ウィルは自分の靴の裏にも氷でブレードを作り、アイススケートのようにして移動していたのだ。
しかし、それだけではこれほどまでに早く動くことは出来ない。
氷魔法の次に得意な風魔法を併用することによって雷ほどでなくとも、高速移動を可能にしているのだろう。
風魔法で飛ぶことを選択しなかったのは、どうしてもライヤとでは飛行技術で差が出てしまうからか。

「それで、アンには勝てたか?」
「黙秘します」

宙から問うライヤに笑い返すウィルだが、心からの笑顔じゃないな、あれ。
勝てなかったんだろう。

当然と言えば当然。
国王を除けば、国の最高戦力だ。

「例えば、こんな事されたりな?」

一気に周囲の温度が上がる。
今までは次のテスト相手がいるためにできるだけ省エネで戦っていたライヤだが、もう次がいないので気にする必要がない。

「俺だって気張ればこのくらいはできる」

ウィルが張っていた氷が解けていく。
これでウィルの魔法の干渉は弱くなり、機動力も失われる。

「……ちっ」

小さく誰にも聞こえないように舌打ちをするウィル。
向ける相手は周囲の人間ではなく、アン。



「いい? あんたがどうしても最後にやりたいなら、できるだけライヤの魔力を削るように仕向けなさい。いくら私たちに比べて魔力量が少ないと言っても、Bクラスよ。訓練場程度なら覆える規模の魔法は出来るわ。魔力制御の強度から言っても、あんたの氷魔法には対処されると思っておきなさい」
「しかし、ライヤさんがそんな大技をしてくるでしょうか?」
「するわよ。私がライやから学んでいるように、ライヤも私から学んでるの。次がいなくて有効な手が打てるなら打ってくるわよ」



半信半疑だったが、現にライヤは使ってきた。
自分よりもライヤの理解が深いことに、嫉妬する。

だが、今はいい。

「もちろん、その先も考えています!」

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