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教師2年目

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「え?」
「え?」

テスト期間が始まったその日。
帰宅し、いつも通りにご飯を食べ、いつも通りに風呂に入り、いつも通りに部屋に戻ると、待ち人がいた。
疑問の声をあげると、その人物も声をあげる。
もちろん、アンである。
薄ピンクのネグリジェに身を包み、ライヤの新調した大きめのベッドにちょこんと座っていた。
そしてその生地は透けている……!

「あー……」

もちろん、ライヤとて忘れていたわけではない。
だが、心の準備が出来ているかと言われれば、断じて否だ。
そんな度胸があったらとうの昔に手を出している。

「ほら、そんなとこにいないで」

アンがポンポンと自分の横を叩くので、フラフラと横に座る。

「仕事は良いのか?」
「会って最初の言葉がそれ?」
「……会いたかった」
「私もよ」

流石のライヤもこれは違うなと思い直し、素直な言葉を口にする。
それだけでアンの表情が華やぐのだから、言わない理由はない。

「だけど、仕事のことを心配しているのも本当だ」
「王国の体制の刷新だから、これくらい忙しくなるのは当たり前よ。それより、ライヤもテスト期間でしょ?」
「俺は楽な方だよ。採点も9人分だけだし」

いつも通りの他愛ない話をしていれば、自然と緊張もほぐれてくる。

「ねぇ、ライヤ」

意を決してアンが後ろからライヤに抱き着く。
むんにゅりと背中で柔らかいものが潰れる感覚に固まるライヤ。
うっすい生地越しでしかないその感覚は経験のないライヤの思考を吹っ飛ばすには十分だった。

「私ね、仕事しながら思ったの。こんなときにライヤが横にいてくれたらなって」
「……」

ライヤが教師になるその時までアンはしきりにライヤを自分のお付きとして誘っていた。
ライヤが教師になれるように後押しはしたが、本音を言えば自分の下にいて欲しかった。

「私は一人じゃ何もできないし、国を動かす力なんてないの」
「それは謙遜のし過ぎだろ」
「ううん、求心力とか、そういうのじゃなくて。なんて言ったらいいのかなずる賢さが足りないっていうか……」

アンの言いたいこともわかる。
アンはいつだって王道だ。
力があるから力を使うし、知恵があるから知恵を使う。
だが、そこにライヤが得意とする搦め手は含まれない。

「政治ではどうしてもそういう要素が強くなる。私だけじゃ無理……」
「でも、俺は……」
「ううん、いいの。聞いてほしいだけ。私が愚痴をこぼせるのなんてライヤだけなんだから……。あれ、ごめんね、こんな話をしに来たわけじゃないのに……」

背中越しにアンが震えているのを感じたライヤは、向き直る。
その美しい緋色の瞳から溢れる雫を拭い、そっと抱きしめる。

「ごめんな、でも、俺は先生なんだ」
「うん、わかってるわ」
「けど、アンの夫でもある」

アンにキスをし、より一層強く抱きしめる。

「辛い時にはいつでも言ってくれ。その代わり、俺が辛い時もちゃんと言うから」


その夜、2人の寝顔は充足感に満ち溢れていた。
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