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教師2年目

教師の強さ

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「た、助かったのか……?」

ドウェインは壁を見上げ、壁の向こうから聞こえる音にまた身を震わせる。

「あんなのに、勝てるわけない……」
「そう思うか?」
「ヴィヨン先生……!」

振り向けばそこにはAクラス担任、ヴィヨン・ハロルドがいた。

「お前たちが招いた事態で命を懸けて戦っている者たちがいるのに、お前たちは膝を抱えて震えているだけか?」
「俺たちが行っても何の役にも立たないじゃないですか!」
「お前たちでもあれらの囮にくらいなれるだろう。違うか?」
「そんな……!」

ドウェインはヴィヨンのことを仲間だと思っていた。
ドウェインがクラスで好き勝手していても許してくれていたし、ヴィヨンもSクラスとして学園に通えなかったというコンプレックスを抱えていたからだ。

「先生は味方だと思っていたのに……!」
「いつ俺がお前たちの味方だと言った? 俺は教師、生徒の味方だ。お前たちがルールの範疇で何かするのには関与しないし、ラインから片足出てしまった程度なら擁護もしてやろう。だが、今回は明らかにやりすぎだ」

ドウェインや取り巻きたちはその容赦のない言葉に項垂れる。

グッ。

自分の体がもちあげられる感覚に違和感を感じ、ドウェインは顔をあげる。
見れば、土魔法によって彼らは前方にそびえたっていた壁の上にまで押し上げられていた。

「お前はライヤ先生とニキーナ先生のことも馬鹿にしていたな。よく見ることだ。お前が馬鹿にしていた先生たちがどれだけの力を持っているのか」




「フィオナ。気づいてたのか?」
「噂程度のものです。今回は少数精鋭の貴族がこれに加担していたようでして……。足取りを掴むのにも苦労しましたから」
「イプシロンやミランダの部隊はフィオナの差し金か?」
「差し金だなんて心外です。もはや彼らは私の部下ですよ?」

はぐれ者だったBクラス以下の精鋭部隊がいつの間にか立場を得ていた。
それも妻の部下。
なぜ俺に何の報告もなかったのか。

「敵を欺くにはまず味方からという言葉がありまして……」
「絶対今適切な言葉じゃないよな」

他の先生方も続々と駆け付けてきて、壁の前で押しとどめるのが限界だったが、徐々に殲滅戦へと様相が変わっていった。

「できるだけ言わないようにと言われていましたので」
「誰に?」
「アン王女です。カムイ王子の手から暗部が離れた際、その一部がアン王女の支配下に入りましたから」
「よし、どこかで聞いてるだろうアン、後で説教だな」

びくりとアンネ先生がこちらを振り向く。
こっち向くなよ。
バレるだろ。
こっち向いてても魔物を処理し続けてるのは流石だけど。

「よーし。馬鹿どもも見ているみたいだし、先生がどれだけ強いのか見せてあげるとしますかね」




「すごい……」

ドウェインを始め、Aクラスの生徒たちは目の前の光景に目を見張る。
自分たちが匙を投げた相手に立ち向かっている先生たちと軍の兵士たち。
その誰もが余裕があり、間違っても魔物にやられるようなことは無い。
怪我をすることすらないだろう。

「魔法が使えないのに、何で……」
「それが誤りだ。誰が魔法を使えないなどと言った?」
「それは、ヴィヨン先生が……」
「だからお前たちは馬鹿なのだ。授業をちゃんと聞いていない。俺は言ったぞ。魔物に直接魔法での攻撃は効かないと。つまり、あのように動きを止めたり、自分に魔法を使って立ち回ったりするのも可能なわけだ。ちなみにだが、Sクラスの生徒たちは気付いていたようだったぞ?」

ぎり、と歯を食いしばるドウェイン。

「その意欲をもっと正しく使えばよかったものをな……。残念でならんよ」

彼らは戦況が落ち着くまで、戦いを見守っていたのであった。
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