受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

教師2年目

A級の動向

「いいか、今年は絶対に負けられない」

A級クラスの教室ではリーダー格の男が熱弁を振るっていた。

「魔物の討伐にあたって明確なルールは記載されていない。討伐数を競うとのことだが、もちろん魔物の強さも考慮されるだろう」
「しかし、我ら2年生が向かうのは王都郊外。魔物の強さなどしれたものですし、行動できる範囲も限られています。他のクラスと大きな差は……」

そこまで言ってクラスの良心的存在の女の子は肩を震わせる。
男が邪悪な笑みを浮かべていたからだ。

「……何を企んでいるのですか」
「お前は知らない方がいい。精々、俺たちとは離れて動くんだな」

女子生徒はE級クラスの生徒たちとまとまって動くが、男子生徒とその取り巻きは別行動をすると言って聞かなかった。
公爵の息子である男子生徒の矛先が自分に向くのが怖かった女子生徒はそれを黙認するしかなかった。




「先生、図書館の会議室の使用許可を貰いに来ました」
「ティムか。理由は？」
「大勢で図書館の利用をし、そのまま話し合いも行いたいからです。話し声は周囲の迷惑になりますから」
「そうだな。ちょっと待て」

壁に掛けられた多くの鍵の中から1つを取ってティムに放る。

「とりあえず一番大きい会議室の鍵だ。それに入りきらない場合は人数を絞れ」
「わかりました」

一礼してティムが去っていく。

「S級クラスは今年も順調なようですな」
「……そちらはいかがですか？　ヴィヨン先生」

ライヤに話しかけたのはA級クラスの今年の担任であるヴィヨン・ハロルド。
伯爵家であるハロルド家の現当主であり、同時に教職にもついている。

「さぁ？　体育祭に教師の過度な干渉はご法度ですから。一任しています」
「……心配ではないのですか？」
「心配？　何を心配することがあるのです。彼らが相対するのは魔物でも最弱のものばかり。間引きも軍の方々が行ってくれたではありませんか。あぁ、先生も行かれたのでしたか？」
「えぇ」
「では、先生の感覚で生徒たちには勝てない相手だと？」
「いえ、そうではありませんが……」
「では、大丈夫でしょうな」

言いたいことだけ言って去ってしまった。