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教師2年目

女の闘い

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「あのー、始まる前に一言いいですか……」
「自分の立場を理解したうえで、どうぞ」

圧が凄い。
この場でのライヤの人権はもはやないに等しいのかもしれない。

「とりあえず、1週間だけ待って欲しい。体育祭が終わるまで。何にせよ、俺の体力がもたない。死ぬ」

ライヤが日中働いている以上、時間帯は夜しかない。
ただでさえ働いているのに加え、体育祭の業務も相まってより忙しくなっている状態で睡眠時間さえも削られては命が危ない。

「……いいでしょう。私たちもライヤの体調を崩すのは本意ではないわ。他にはないわよね?」
「あ、そうでなくとも俺の体力を考えて……」
「さて、まず最初に決めておかなければいけないのはウィルの扱いね。いくらなんでもまだ早いわ」

もうライヤに発言権はない。
この場にいる意味はあるのだろうか。

「それは私も承知しています。ですが、アン姉さま。いちゃつく機会が私だけ少ないというのは不公平です」
「そこが問題ね。一応は同じ立場である以上、1人が著しく機会を損なわれるのは避けたいわ」
「ライヤさんの立場を考えても、私が学生であるうちは考えづらいでしょう。ですので、期間は私が卒業するまで。情事以外の物事において、そうですね……。週に1度便宜を図っていただくことを提案します」
「例えば~?」
「ライヤさんとの買い物の機会を譲っていただく、休日のおでかけを譲っていただくなどでしょうか。添い寝というのは現実的ではないですよね?」
「いいんじゃないですか? 要は、ライヤさんがウィルさんに不埒な真似をしなければいいのでしょう?」

ヨルの提案で全員の目がライヤに向く。

「そんなこと言われてもなぁ……」
「ライヤに求められてるのは、できるかできないかの答えだけよ」
「厳しい……」

少し考え、発言する。

「現状は大丈夫だと思う。家族というよりは生徒という意識の方が大きいし、子供だからというセーブも効く。けど、数年後は保証できない」
「じゃあウィルさん次第じゃないですか? 今は添い寝できても、数年後にはできなくなります。恐らく在学中のことでしょう。その空白期間を良しとするならしても良いのでは?」
「……少し考えさせてもらってもいいですか?」

簡単に結論が出る問いではないらしい。

「じゃあ、ウィルのことはそれで置いておくわ。本題の、私たち3人についてよ」

一層真面目な顔になるアン。
普段通りニコニコなフィオナ。
緊張の見え隠れするヨル。

「まず、私の主張だけど。私が一番。これだけは譲らないわ」

アンは胸を張る。
それだけの自信があった。

「ろくに知識もないアンちゃんに出来るのかな~?」
「う、うるさいわね! あんただって同じようなものでしょうが!」
「知識があるのとないのでは違うと思うな~」

小競り合いを始めたアンとフィオナに対し、ヨルは落ち着いている。

「私はあとで構いません。あの、その、心の準備も、まだですし……」

もじもじするヨルを見て小競り合いをやめる2人。
忌まわしき記憶とはいえ、この中で唯一経験のあるヨルのみせた純情な反応。
その可愛らしさに2人の中の何かが警鐘を鳴らしたのだ。

「ま、一番は譲るよ~。それはしょうがないかな~。でも、初めてが終わったらまた話し合いだからね~?」
「望むところよ」

何か知らんが、決着がついたらしい。

「では、最初は私。体育祭終了後の週末からでいいかしら?」
「異議な~し」
「はい」
「2番目はどうするの?」
「フィオナさん、どうぞ……」
「あら、そう~? じゃあ、遠慮なく~」
「じゃあ、2番目はフィオナね。3番目でヨル。ウィルは保留ね」

こうしてライヤの性事情に決定事項が生まれた。

「なんか、こう……。感慨ってものがない……」
「なに? 文句あるの?」
「ありませんです、王女様!」
「よろしい。これにて第2回家族会議を終わるわ」
「第2回!?」

ライヤの知らないところで第1回は行われていらしい。
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