227 / 328
教師2年目
暗雲立ち込める体育祭
しおりを挟む
「お邪魔するわね」
「……お、お邪魔します……」
週末。
王妃がライヤ宅を訪れていた。
「せめて先に連絡くらいしてくださいよ……。どこかに出かけていたらどうしたんですか」
「お家で待たせていただいたわ」
「それはそれで……」
家に帰ってきたら王妃が待っているという恐怖。
「で、シャロンも?」
「折角だから連れてきたの」
「何が折角なんですか……」
王妃は開き直っていた。
自分が蒔いた種で自分の娘が1人の男の下に嫁ぐ予定になったのだ。
もう何人でも変わらない! と。
どうせならシャロンの淡い恋心も応援してやろうという考えになっていた。
「夕食も食べていかれますか?」
「フィオナさんの負担にならないのならば、お願いしたいわ。気を悪くしないで欲しいのだけど、毒見は……」
「もちろん、大丈夫です」
アンとは違ってウィルの外出時や王妃の外出時はもちろん護衛がつく。
家の中までは来ていないが、敷地内を巡回中である。
その中に毒見役もいるという事だろう。
「ライヤさんは今度の体育祭についてどう思うの?」
「……決定したのですか」
アンとフィオナの表情が引き締まる。
「ここには生徒たちもいますが」
「どうせ次の月曜日にはわかることよ。それで、どう思うの?」
「……時期尚早だと思います。せめて、4年生くらいでないと……」
「お母様、ライヤさんも。ここまで聞かせたならちゃんと話して下さらないと余計に不安になるだけです」
「(コクコク)」
ウィルとシャロンが共に主張してくる。
大人組で唯一知らないヨルは拗ねてソファーに転がっている。
子どもか。
「簡単に言うと、魔物の討伐レースをするらしい」
「……生徒がですか?」
「あぁ。各クラスで魔物の討伐数を競うんだと。だが、あまりにも危険だ」
「うちの子たちも危険かしら」
「イリーナは大丈夫でしょう。第二王子殿も。ただ、ウィルは……」
ライヤは心配そうにウィルと、隣のシャロンに目を向ける。
あまりにも、実力不足だ。
いや、単純な実力だけで言うなら、王都郊外の魔物程度ならば対応可能な範疇だろう。
しかし、実際に対面すると普段の実力が出せないというのは良くある話だ。
そして何より。
体育祭の形式でやるとなれば、S級はF級と組むことになる。
単純に授業の進度からしてもF級が魔物との戦闘に利用できるような魔法を学んでいる確率は低い。
言い方は悪いが、足枷をして戦うようなものだ。
それも、S級1人につきF級が何人になるか。
想像するだけで頭が痛い。
「(フルフル)」
シャロンはもう気を失いそうである。
ゆっくりと首を振っている。
「ライヤさんにも難しいかしら」
「あいにく、俺には膨大な魔力がないですし、1人なので。その形式上、班に分かれて行動するであろう生徒たちを全部見張るのは無理です」
学園は何を考えているんだ。
いや、王国か。
「……お、お邪魔します……」
週末。
王妃がライヤ宅を訪れていた。
「せめて先に連絡くらいしてくださいよ……。どこかに出かけていたらどうしたんですか」
「お家で待たせていただいたわ」
「それはそれで……」
家に帰ってきたら王妃が待っているという恐怖。
「で、シャロンも?」
「折角だから連れてきたの」
「何が折角なんですか……」
王妃は開き直っていた。
自分が蒔いた種で自分の娘が1人の男の下に嫁ぐ予定になったのだ。
もう何人でも変わらない! と。
どうせならシャロンの淡い恋心も応援してやろうという考えになっていた。
「夕食も食べていかれますか?」
「フィオナさんの負担にならないのならば、お願いしたいわ。気を悪くしないで欲しいのだけど、毒見は……」
「もちろん、大丈夫です」
アンとは違ってウィルの外出時や王妃の外出時はもちろん護衛がつく。
家の中までは来ていないが、敷地内を巡回中である。
その中に毒見役もいるという事だろう。
「ライヤさんは今度の体育祭についてどう思うの?」
「……決定したのですか」
アンとフィオナの表情が引き締まる。
「ここには生徒たちもいますが」
「どうせ次の月曜日にはわかることよ。それで、どう思うの?」
「……時期尚早だと思います。せめて、4年生くらいでないと……」
「お母様、ライヤさんも。ここまで聞かせたならちゃんと話して下さらないと余計に不安になるだけです」
「(コクコク)」
ウィルとシャロンが共に主張してくる。
大人組で唯一知らないヨルは拗ねてソファーに転がっている。
子どもか。
「簡単に言うと、魔物の討伐レースをするらしい」
「……生徒がですか?」
「あぁ。各クラスで魔物の討伐数を競うんだと。だが、あまりにも危険だ」
「うちの子たちも危険かしら」
「イリーナは大丈夫でしょう。第二王子殿も。ただ、ウィルは……」
ライヤは心配そうにウィルと、隣のシャロンに目を向ける。
あまりにも、実力不足だ。
いや、単純な実力だけで言うなら、王都郊外の魔物程度ならば対応可能な範疇だろう。
しかし、実際に対面すると普段の実力が出せないというのは良くある話だ。
そして何より。
体育祭の形式でやるとなれば、S級はF級と組むことになる。
単純に授業の進度からしてもF級が魔物との戦闘に利用できるような魔法を学んでいる確率は低い。
言い方は悪いが、足枷をして戦うようなものだ。
それも、S級1人につきF級が何人になるか。
想像するだけで頭が痛い。
「(フルフル)」
シャロンはもう気を失いそうである。
ゆっくりと首を振っている。
「ライヤさんにも難しいかしら」
「あいにく、俺には膨大な魔力がないですし、1人なので。その形式上、班に分かれて行動するであろう生徒たちを全部見張るのは無理です」
学園は何を考えているんだ。
いや、王国か。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます!
つなかん
ファンタジー
なんちゃってヴィクトリア王朝を舞台にした乙女ゲーム、『ネバーランドの花束』の世界に転生!? しかし、そのポジションはヒロインではなく少ししか出番のない元婚約者の妹! これはNTRどころの騒ぎではないんだが!
第一章で殺されるはずの推しを救済してしまったことで、原作の乙女ゲーム展開はまったくなくなってしまい――。
***
黒髪で、魔法を使うことができる唯一の家系、ブラッドリー家。その能力を公共事業に生かし、莫大な富と権力を持っていた。一方、遺伝によってのみ継承する魔力を独占するため、下の兄弟たちは成長速度に制限を加えられる負の側面もあった。陰謀渦巻くパラレル展開へ。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
公爵夫人のやけごはん〜旦那様が帰ってこない夜の秘密のお茶会〜
白琴音彩
ファンタジー
初夜をすっぽかされ続けている公爵夫人ヴィヴィアーナ。今日もベットにひとりの彼女は、仲間を集めて厨房へ向かう。
公爵夫人が公爵邸の使用人たちとおいしく夜食を食べているだけのほのぼのコメディです。
*1話完結型。
*リアルタイム投稿
*主人公かなり大雑把なので気になる人はUターン推奨です。
*食べ盛りの女子高校生が夜中にこっそりつくる夜食レベル
モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)
優摘
ファンタジー
※プロローグ以降の各話に題名をつけて、加筆、減筆、修正をしています。(’23.9.11)
<内容紹介>
ある日目覚めた「私」は、自分が乙女ゲームの意地悪で傲慢な悪役令嬢アリアナになっている事に気付いて愕然とする。
しかもアリアナは第一部のモブ系悪役令嬢!。悪役なのに魔力がゼロの最弱キャラだ。
このままではゲームの第一部で婚約者のディーンに断罪され、学園卒業後にロリコン親父と結婚させられてしまう!
「私」はロリコン回避の為にヒロインや婚約者、乙女ゲームの他の攻略対象と関わらないようにするが、なぜかうまく行かない。
しかもこの乙女ゲームは、未知の第3部まであり、先が読めない事ばかり。
意地悪で傲慢な悪役令嬢から、お人よしで要領の悪い公爵令嬢になったアリアナは、頭脳だけを武器にロリコンから逃げる為に奮闘する。
だけど、アリアナの身体の中にはゲームの知識を持つ「私」以外に本物の「アリアナ」が存在するみたい。
さらに自分と同じ世界の前世を持つ、登場人物も現れる。
しかも超がつく鈍感な「私」は周りからのラブに全く気付かない。
そして「私」とその登場人物がゲーム通りの動きをしないせいか、どんどんストーリーが変化していって・・・。
一年以上かかりましたがようやく完結しました。
また番外編を書きたいと思ってます。
カクヨムさんで加筆修正したものを、少しずつアップしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる