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教師2年目

補助

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「あら、ミクさん。その髪飾り綺麗ですね」
「そうですか? ウィルさんにそう言って頂けるなんて光栄です」

翌日の放課後。
今日もやってきたミクとキリトの飛行魔法の練習を見ていると、ウィルがやってきた。
ティムとエウレアも一緒だ。

「難航しているみたいですね」
「そりゃそうだ。魔力制御がお前たちには及ばないんだからな。トライし続けることで魔力制御も同時に鍛えられるとはいえ、効率は悪い。飛行に関するコツを掴むしかないだろ」
「そこで、提案があります」

ウィルが指をピッと立てる。

「先生、エウレアさんを除いて飛行魔法が上手いのは誰ですか?」
「クラス内でって話だな? ウィルが一番だろうけど……。二番をあげるならシャロンかな」

ウィルは出会った当初よりも性格が明るくなり、自己顕示欲というか、目立ちたがりな面も出てきた。
アンには及ばないが、アンの妹であることを感じさせるようにはなってきている。
だからなのか、飛行魔法でも割と派手な挙動をしがちだ。
対して、シャロンは元々憶病なためウィルのような挙動はしない。
だが、魔力制御の伸びがクラスでエウレアを除けば一番という事もあり、上手さはかなりのものだ。
静かに、無駄な魔法行使なく飛ぶことが出来る。

「この2人の共通点は何でしょう?」
「2人の共通点……?」

ライヤは頭をひねるが、浮かばない。
何なら、相違点ばかりが浮かんでくる。

「正解は、先生に捕まって一緒に飛んだことがある、でした」
「……あるか?」
「ありますよ! シャロンさんのは覚えてますよね?」
「ちょうど昨日思い出してたからな」

1年生の時の授業参観での出来事だ。
魔法が暴発して上空に吹っ飛んだシャロンを捕まえて連れ帰ってきたときのことだろう。
あれがトラウマになってシャロンは未だに30メートルも上に行けないが。

「そして、私です」
「……」
「覚えてないんですか!? ほら、あれです! 私を助けてくれた時の……」
「……あぁ!」

ライヤはポンと手を叩く。
ウィルが誘拐された時、助けに行こうとしていたライヤは屋敷から吹っ飛んできたウィルを空中でキャッチし、その後送り届けていた。

「確かに、飛んでるな」
「感動的な場面のはずなのに……」

ぶつぶつとウィルは拗ねてしまった様子。

「つまり、誰かと一緒に飛んでみるのが良いってことか?」
「えぇ、ウィル様はそう言いたいようです。恥ずかしながら、僕もエウレアに一緒に飛んでもらってからやりやすくなったような気がしますし」
「……」

無言でピースするエウレア。

「結果として怪我がなかったからいいけど、頼むからそういうのは大人のいるところでやれよ?」
「一応、王妃様に見ていてもらいました」

暇かよ、あの人……。

「それはそれとして。やってみる価値はあるかもな」

言われてみれば、補助ありで魔法を練習させたことは無かった。
体育で鉄棒をするとき。
逆上がりの練習は最初は先生に背中を押し上げてもらいながらするものだ。
魔法は身体能力の一部だというライヤの考えに則るなら、補助有りで魔法を練習するのは効果的だと言える。

「やるか?」
「やります。お願いします」
「……ます」

2人とも乗り気なようだ。

「じゃあ、キリトからいくか。あ、でもどうするか……」

一緒に飛ぶという事は、ライヤがキリトとくっついていなければならない。

「おんぶでお願いします」
「あ、うん……」

思っていたよりもサクサクと進み、戸惑うライヤ。
ひと悶着あると思っていただけに、肩透かしをくらった気分だった。




「すげぇ……!」

100メートル程も昇ると、キリトの口からも思わず感嘆の言葉がこぼれる。
どの世界においても空を飛んでみたいという願望は変わらない。
それが道具を利用したものか、魔法を利用したものなのかの違いがあるだけだ。
王城よりも高く浮いたこの高さからなら王都を一望することが出来る。

「どうだ? コツは掴めそうか?」
「……先生。今まで悪かった、です」
「!?」

一瞬ガクンと落ちる。

「……あっぶねぇ!? 何やってんだ!」
「いや、そんな言葉が出るとは思わなくて……」
「俺も大人になったってことだ」

まだ10歳だろ、と心の中でツッコミながら口には出さない。

「なら、先生には敬語だよな」
「わかった……、わかりました」
「うん、それで、飛行魔法はどうだ?」
「やってみないとわからねぇよ……、わからないです」

敬語を使うようになる道は長そうだ。
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