224 / 328
教師2年目
反省会
しおりを挟む
「去年よりは上手くやれてたかな……」
「あんまり変わらなかったと思います」
「そうか……」
キリトとミクが自宅で養父に会っている頃。
ライヤ宅では反省会が行われていた。
「あ、悪い意味ではないですよ? ただ、去年もかなり落ち着いていましたし、良い出来だったのではないかと」
「そうか……?」
反省会とは名ばかりで、ライヤをウィルが慰めているだけだが。
「お母様は楽しんでいらっしゃいましたし、他の親御様も満足そうでした」
「お母様が楽しんでたならなんの問題もないわよ。ほら、シャキッとしなさい!」
「ダメですよ、アン姉さま。ライヤさんは副担任で経験を積むこともないまま私たちの担任をしてくださっているのです。授業参観など、さぞ胃が痛くなることでしょう。お姉さまも、勝手の分からないままに公務などできないでしょう?」
「そんなことはないわ」
「……お姉さまに聞いたのが間違いでした」
「やっぱり来年は普通の授業にしようかな……」
ライヤとて自分が授業参観を受けてきた経験はある。
ただ、日本でも王国でもクラスでの授業を観覧する一般的なものであり、どちらもクラスの生徒数が多かったので数人が質問に答えるだけでよかった。
だが、1年の時の思い付きで魔法の実践を授業参観にした結果、勝手がわからないまま2年目も決行してしまったのだ。
その場は勢いで誤魔化せるが、落ち着くと不安にもなる。
「いいんじゃないですか? 親御さんも我が子が学校でどのように過ごしているかが知りたいわけですし。我が子が頑張っている姿を見せるのは体育祭で十分でしょう」
ぐったりしているライヤと働こうとしないアンとウィルの代わりにフィオナとメイドが作った料理を食卓に運んでいるヨルが建設的な意見を述べる。
「それもそうなんだけど。今年の体育祭がなんかキナ臭くてさ」
「? 去年のように闘技場でやるんじゃないんですか?」
「ウィルがいるからあんまり言えないけど、違う可能性もある」
姉妹で言い争いながらもしっかりと聞き耳を立てていたウィルに視線を向けると、少しばつが悪そうに視線を逸らす。
「今年度もあと3分の1もないし、そろそろ決まると思うけど」
例年通りに闘技場でやることになったとしても生徒たちの準備期間だったり、闘技場の予定を抑えたり、やらなければいけないことはたくさんある。
「上でもめてるみたいだからどうなるかな」
「は~い、ご飯出来たよ~」
大きな鍋を持ってフィオナがキッチンから出てくる。
「まぁすべては決まってからだ。王城にいるウィルが知らないってことはまだ上層部だけの話なんだろうからな」
「じゃあなんでライヤさんが知っているんですか」
「そうです。ライヤせんせ……、ライヤさんは貴族になったとはいえ、学園の先生たちと同じラインに立っただけです」
知らない組、ウィルとヨルがライヤを睨む。
「そりゃあな……。ここに誰がいると思ってるんだ」
第一王女で王国の公務もこなすアンがすまし顔で。
暗部で最近発足した国内情報網の管理役となったフィオナが満面の笑みでピースする。
「「職権乱用です!」」
「はっ、今さらだな。俺をことあるごとに巻き込んでおきながら必要になったら呼ぶから指くわえて待ってろとか、そうは問屋が卸さない。使えるものは全部使う」
結婚によって一番変わったのはやはり、ライヤだ。
事なかれ主義だったのが肝が据わり、周りを利用してやろうという気概が生まれた。
「なんでそんな強気なのに授業参観ごときでビビってるんですか」
「それとこれとは話が別だろ」
教師としては、まだまだ新米である。
「学校は楽しいか」
「はい、お父様」
「そうか」
同時刻。
カリギュー家でも夕食を父子がともに取っていた。
「……」
「……」
普段の食卓でも会話のない2人。
最初の会話があっただけでもかなり珍しく、驚いてメイドがお茶をこぼしていた。
「……先生はどんな人だ?」
「えっと……」
「お前の感じた通りで構わない」
「そうですね……。子供っぽい、でしょうか」
「ほう」
「悪い意味ではないです。何というか、生徒と同じ視点で物事を見てると言いますか……」
「覚えておこう」
短い会話だったが、その日食卓担当だったメイドの3人は極度の緊張から熱を出した。
「あんまり変わらなかったと思います」
「そうか……」
キリトとミクが自宅で養父に会っている頃。
ライヤ宅では反省会が行われていた。
「あ、悪い意味ではないですよ? ただ、去年もかなり落ち着いていましたし、良い出来だったのではないかと」
「そうか……?」
反省会とは名ばかりで、ライヤをウィルが慰めているだけだが。
「お母様は楽しんでいらっしゃいましたし、他の親御様も満足そうでした」
「お母様が楽しんでたならなんの問題もないわよ。ほら、シャキッとしなさい!」
「ダメですよ、アン姉さま。ライヤさんは副担任で経験を積むこともないまま私たちの担任をしてくださっているのです。授業参観など、さぞ胃が痛くなることでしょう。お姉さまも、勝手の分からないままに公務などできないでしょう?」
「そんなことはないわ」
「……お姉さまに聞いたのが間違いでした」
「やっぱり来年は普通の授業にしようかな……」
ライヤとて自分が授業参観を受けてきた経験はある。
ただ、日本でも王国でもクラスでの授業を観覧する一般的なものであり、どちらもクラスの生徒数が多かったので数人が質問に答えるだけでよかった。
だが、1年の時の思い付きで魔法の実践を授業参観にした結果、勝手がわからないまま2年目も決行してしまったのだ。
その場は勢いで誤魔化せるが、落ち着くと不安にもなる。
「いいんじゃないですか? 親御さんも我が子が学校でどのように過ごしているかが知りたいわけですし。我が子が頑張っている姿を見せるのは体育祭で十分でしょう」
ぐったりしているライヤと働こうとしないアンとウィルの代わりにフィオナとメイドが作った料理を食卓に運んでいるヨルが建設的な意見を述べる。
「それもそうなんだけど。今年の体育祭がなんかキナ臭くてさ」
「? 去年のように闘技場でやるんじゃないんですか?」
「ウィルがいるからあんまり言えないけど、違う可能性もある」
姉妹で言い争いながらもしっかりと聞き耳を立てていたウィルに視線を向けると、少しばつが悪そうに視線を逸らす。
「今年度もあと3分の1もないし、そろそろ決まると思うけど」
例年通りに闘技場でやることになったとしても生徒たちの準備期間だったり、闘技場の予定を抑えたり、やらなければいけないことはたくさんある。
「上でもめてるみたいだからどうなるかな」
「は~い、ご飯出来たよ~」
大きな鍋を持ってフィオナがキッチンから出てくる。
「まぁすべては決まってからだ。王城にいるウィルが知らないってことはまだ上層部だけの話なんだろうからな」
「じゃあなんでライヤさんが知っているんですか」
「そうです。ライヤせんせ……、ライヤさんは貴族になったとはいえ、学園の先生たちと同じラインに立っただけです」
知らない組、ウィルとヨルがライヤを睨む。
「そりゃあな……。ここに誰がいると思ってるんだ」
第一王女で王国の公務もこなすアンがすまし顔で。
暗部で最近発足した国内情報網の管理役となったフィオナが満面の笑みでピースする。
「「職権乱用です!」」
「はっ、今さらだな。俺をことあるごとに巻き込んでおきながら必要になったら呼ぶから指くわえて待ってろとか、そうは問屋が卸さない。使えるものは全部使う」
結婚によって一番変わったのはやはり、ライヤだ。
事なかれ主義だったのが肝が据わり、周りを利用してやろうという気概が生まれた。
「なんでそんな強気なのに授業参観ごときでビビってるんですか」
「それとこれとは話が別だろ」
教師としては、まだまだ新米である。
「学校は楽しいか」
「はい、お父様」
「そうか」
同時刻。
カリギュー家でも夕食を父子がともに取っていた。
「……」
「……」
普段の食卓でも会話のない2人。
最初の会話があっただけでもかなり珍しく、驚いてメイドがお茶をこぼしていた。
「……先生はどんな人だ?」
「えっと……」
「お前の感じた通りで構わない」
「そうですね……。子供っぽい、でしょうか」
「ほう」
「悪い意味ではないです。何というか、生徒と同じ視点で物事を見てると言いますか……」
「覚えておこう」
短い会話だったが、その日食卓担当だったメイドの3人は極度の緊張から熱を出した。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました
結城芙由奈
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】
20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる