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教師2年目

放課後特訓

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「先生、私たちに飛行を教えてください」
「……珍しいな。キリトも来るなんて」
「私が連れてきました」
「あぁ、それで……」

憮然とした顔でキリトが佇んでいる。

「私たちの魔力制御が劣っているのはわかっています。ですが、クラスの皆に出来て私たちが出来ないままなのは嫌です」
「キリトもやる気はあるんだな?」
「……」

渋々といった感じで頷くキリト。

「よし、じゃあやってみるか」




「前から授業でも言ってるけど、俺はやり方を示すだけだからな。覚えれば出来るようになるってもんでもないし」
「わかっています」
「まぁ、こうして練習する機会が増えれば結果的に成長はするだろうな」

魔法は学力というよりは身体能力の一部という考え方の方があっている気がする。
覚えれば即発動できるというものでもなく、出来るようになるまでは地道な努力が必要になるからだ。
足が速くなりたいからと言って、早い人のフォームを真似たらすぐに速くなるなんてことは無い。
そもそもいきなりフォームを完璧に真似などできないし、真似する相手と体のつくりも違うからそのフォームが最善かもわからない。
試行錯誤していって速くなっていくのだ。
魔力制御が上達すればその自分に合ったフォームに近づけるのが早くなってくる。

「それで、この頃得た知見なんだが。どうやら、俺とみんなとでは飛行に関する魔法の使い方が違うようだ」
「どういうことです?」
「俺は飛行するなら自分の足元に風魔法を使えばいいと思っていた。それができれば浮けるんだから間違ってはない。だけど、例えば横移動をしたい時に新たに横向きに風魔法を使わなければならない」

ライヤは魔力制御は上手いが魔力に乏しいので最低限の規模の魔法を細かく発動することで自由自在な飛行を可能にしている。
自分を浮かすための足元の魔法以外を常時展開できるような魔力はないのだ。

「でも、皆はそうじゃないよな。現時点でも使える量だけなら俺よりも魔力量は多いし、これからも伸びる。なら、常に自分の周りに風魔法を纏っておけばいいんだ」

魔力量が膨大でなければならないという制限はあるが、これなら1つの魔法で飛行することができる。

「俺が浮くときは足元の風魔法を調節することによって上下しているわけだけど……」

ライヤが実演してフヨフヨと空中を上下する。

「身体全体に纏うなら、ここまで繊細なコントロールは必要ない。上に行き過ぎそうになったら、上方向から風魔法で押し付ければいいからな」

ただ、1つの魔法とはいえ、複数の制御が必要となる。
難しいことには変わりない。

「飛行魔法の妨げになってるのは落ちてしまったら、とかの恐怖心だと思う。自分では感じてないにしろ、な。俺だって足元にしか魔法を使ってないんだから何かの拍子に体のバランスを崩して倒れ込んだらと思うと怖いしな」

何度も失敗して倒れ込んだ時も落ちる前には風魔法を展開できるまでになったわけだが。
そうなるまでには生傷が絶えなかった。
それが解決したからと言って全体の傷の数が減ったかは別問題だが。

「それで、自分の魔法で自分を囲うんだから、安心感は増えるよな? すぐにはできるもんじゃないけど、少なくともウィルはそれで上手くいってるから、試してみてもいいんじゃないか?」
「ありがとうございます」
「……ます」
「うん、じゃあ見てるから。練習してみようや」
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