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教師2年目
教師の理由
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「え?」
「ライヤぁ~!」
「ぐふっ!」
思考がまとまっていないのに横から受けたタックルにより押し倒されるライヤ。
「本当にいいの!? お父様!?」
「う、うむ。だが、そういうことは個人的な場でするようにな……」
何もしねぇよ!
「どういう話の流れでそんな話に?」
「不思議なことではあるまい。ライヤ・カサンという人物の有用性は今まで自らが証明してきたであろう? そして、決め手となったのはやはり聖女か。いくら聖女の願いであれ、聖王国が簡単に聖女を王国に派遣してくると思うか?」
「それは思いましたけど……」
「つまり、ライヤを聖王国に引き込めれば上々だと聖王国が判断した、と王国は推測する。俺に限らずな。であれば、他国に流れてしまう前に王国につなぎとめておこうと考えるのは自然だろう?」
「ですが、アンと結婚するのには俺の格が……」
「そうだな。だから、お主に爵位をやる」
「は?」
「男爵位にはなるが、継承権を既に放棄しているアンには外聞的にもぎりぎり見合うだろう」
「えぇ……?」
少々不満げなライヤ。
ライヤの中で貴族に良いイメージなどほぼない。
もちろんフィオナなど例外はあるのだが、学生時代に貴族から散々嫌がらせを受けてきた歴史がある。
今は丸くなったとはいえ、先生になった直後もゲイルから平民だからという理由だけで決闘にまで発展した。
そんな貴族の一員になることに抵抗があるのだ。
「いいじゃない、ライヤ! さっさと受けましょう!」
「いや、でもさぁ……」
「ライヤだって結局は爵位が必要なのはわかっていたでしょ!」
そう、いかに王国内で認められても王族と平民との結婚などあり得ない。
少なくとも他国には王族の相手がそれなりに身分であることを示す必要がある。
そうでなければ、必要以上に軽んじられてしまう可能性がある。
王家の娘を平民に嫁がせるような国だぞと。
だが、ライヤは貴族にはなりたくなかった。
したがって、どうにか平民でもいけるような仕組みを作ろうとしていたのだ。
具体案は全くなかったが。
「今を逃したら次はいつになるかわからないのよ? ねぇ、ライヤ……!」
いつになく必死に懇願するアン。
ライヤだってわかっている。
どれだけこれが恵まれた機会なのか。
「1日だけ猶予くれませんか?」
「1日でいいのか?」
「あんまり長くても意味ないと思うので」
「よかろう」
とりあえず、ライヤはアンを連れて王城を後にした。
「答えは決まってるわよね? 決まってないと怒るわよ」
「いや、怖いよ……。大丈夫、答えは決まってる。ちょっと時間が欲しいだけだ」
「……ならいいけど」
王都の外側の草原。
そこで背中合わせに座る。
時刻は昼過ぎ、太陽光が温かく気持ちよい。
さわさわと鳴る草の音が優しく聞こえる。
「俺は貴族っていう制度が嫌いなわけじゃないんだ。尊敬できる人だっているし、国営を担っているのも貴族たちだ。結果論だけど、それで王国はちゃんと回ってる。納めている税も平民の俺なんかより遥かに多いだろうし」
ライヤが苦笑いしているのをアンは背中越しに感じる。
「魔法においても魔力量っていう才能を持ってる。多少なりとも平民を軽んじるのは当然と言えば当然だ。でもそれは学校で、アジャイブ魔術学校で受ける教育が貴族たちの方が良いからに他ならない。結果として、かなり努力した平民とそれなりの努力しかしていない貴族では後者の方が勝ってしまう。そんな状況を変えたくて俺は教師になったんだ。言い方は悪いけど、どうせF級の担当だろうと思ったから」
アンは静かに聞いている。
「でも、実際はS級の担任になって。いい子たちだし、先生としては嬉しい。けど、俺が教師になった目的をまだ一ミリも達成できていない。俺たちだって、ちゃんと努力すれば、貴族にだって勝てるんだ」
それを学校では習わない。
上下関係が普通であるように刷り込まれている。
それをどうにかしたいと思ったのが、こっちの世界でもライヤが教師を目指した理由だった。
「もちろん、生半可な努力じゃ届きもしない。前提条件が違うんだから。だけど、その選択肢がないのはおかしいと思うんだよな……」
現状、平民で貴族に対抗しうるのはライヤと、王国のイプシロンをはじめとする平民精鋭部隊だけだろう。
「俺が貴族になっても、できると思うか? 『でもお前貴族じゃん』って言われないかな。それか、俺の考え方が曲がっちゃったりしないかな。おっ?」
いきなりアンが立ちあがったのでライヤはそのまま倒れて空を見上げる。
「それ言ったの、私にが初めて?」
「そうだな」
背を向けたままアンが話す。
「じゃあ、行くわよ」
「どこに?
「ライヤの部屋によ」
なんでそんな当然みたいに。
「え、ここ俺の部屋だよな……?」
2人が帰り着くと、部屋の鍵は開いており、当然のように中に人がいた。
「お帰りなさいませ。お茶にしますか?」
「あ、どうも……。じゃなくて! なんでメイドさんも!?」
アンお付きのメイドまでいる始末である。
いるのは、フィオナ、ヨル、メイドさんとウィルまでいる。
「さぁ、さっきの話もう1回して」
「また!? さっきエモい雰囲気だったから言えたのに!? もう1回!?」
「つべこべ言わない!」
「あい……」
「ライヤぁ~!」
「ぐふっ!」
思考がまとまっていないのに横から受けたタックルにより押し倒されるライヤ。
「本当にいいの!? お父様!?」
「う、うむ。だが、そういうことは個人的な場でするようにな……」
何もしねぇよ!
「どういう話の流れでそんな話に?」
「不思議なことではあるまい。ライヤ・カサンという人物の有用性は今まで自らが証明してきたであろう? そして、決め手となったのはやはり聖女か。いくら聖女の願いであれ、聖王国が簡単に聖女を王国に派遣してくると思うか?」
「それは思いましたけど……」
「つまり、ライヤを聖王国に引き込めれば上々だと聖王国が判断した、と王国は推測する。俺に限らずな。であれば、他国に流れてしまう前に王国につなぎとめておこうと考えるのは自然だろう?」
「ですが、アンと結婚するのには俺の格が……」
「そうだな。だから、お主に爵位をやる」
「は?」
「男爵位にはなるが、継承権を既に放棄しているアンには外聞的にもぎりぎり見合うだろう」
「えぇ……?」
少々不満げなライヤ。
ライヤの中で貴族に良いイメージなどほぼない。
もちろんフィオナなど例外はあるのだが、学生時代に貴族から散々嫌がらせを受けてきた歴史がある。
今は丸くなったとはいえ、先生になった直後もゲイルから平民だからという理由だけで決闘にまで発展した。
そんな貴族の一員になることに抵抗があるのだ。
「いいじゃない、ライヤ! さっさと受けましょう!」
「いや、でもさぁ……」
「ライヤだって結局は爵位が必要なのはわかっていたでしょ!」
そう、いかに王国内で認められても王族と平民との結婚などあり得ない。
少なくとも他国には王族の相手がそれなりに身分であることを示す必要がある。
そうでなければ、必要以上に軽んじられてしまう可能性がある。
王家の娘を平民に嫁がせるような国だぞと。
だが、ライヤは貴族にはなりたくなかった。
したがって、どうにか平民でもいけるような仕組みを作ろうとしていたのだ。
具体案は全くなかったが。
「今を逃したら次はいつになるかわからないのよ? ねぇ、ライヤ……!」
いつになく必死に懇願するアン。
ライヤだってわかっている。
どれだけこれが恵まれた機会なのか。
「1日だけ猶予くれませんか?」
「1日でいいのか?」
「あんまり長くても意味ないと思うので」
「よかろう」
とりあえず、ライヤはアンを連れて王城を後にした。
「答えは決まってるわよね? 決まってないと怒るわよ」
「いや、怖いよ……。大丈夫、答えは決まってる。ちょっと時間が欲しいだけだ」
「……ならいいけど」
王都の外側の草原。
そこで背中合わせに座る。
時刻は昼過ぎ、太陽光が温かく気持ちよい。
さわさわと鳴る草の音が優しく聞こえる。
「俺は貴族っていう制度が嫌いなわけじゃないんだ。尊敬できる人だっているし、国営を担っているのも貴族たちだ。結果論だけど、それで王国はちゃんと回ってる。納めている税も平民の俺なんかより遥かに多いだろうし」
ライヤが苦笑いしているのをアンは背中越しに感じる。
「魔法においても魔力量っていう才能を持ってる。多少なりとも平民を軽んじるのは当然と言えば当然だ。でもそれは学校で、アジャイブ魔術学校で受ける教育が貴族たちの方が良いからに他ならない。結果として、かなり努力した平民とそれなりの努力しかしていない貴族では後者の方が勝ってしまう。そんな状況を変えたくて俺は教師になったんだ。言い方は悪いけど、どうせF級の担当だろうと思ったから」
アンは静かに聞いている。
「でも、実際はS級の担任になって。いい子たちだし、先生としては嬉しい。けど、俺が教師になった目的をまだ一ミリも達成できていない。俺たちだって、ちゃんと努力すれば、貴族にだって勝てるんだ」
それを学校では習わない。
上下関係が普通であるように刷り込まれている。
それをどうにかしたいと思ったのが、こっちの世界でもライヤが教師を目指した理由だった。
「もちろん、生半可な努力じゃ届きもしない。前提条件が違うんだから。だけど、その選択肢がないのはおかしいと思うんだよな……」
現状、平民で貴族に対抗しうるのはライヤと、王国のイプシロンをはじめとする平民精鋭部隊だけだろう。
「俺が貴族になっても、できると思うか? 『でもお前貴族じゃん』って言われないかな。それか、俺の考え方が曲がっちゃったりしないかな。おっ?」
いきなりアンが立ちあがったのでライヤはそのまま倒れて空を見上げる。
「それ言ったの、私にが初めて?」
「そうだな」
背を向けたままアンが話す。
「じゃあ、行くわよ」
「どこに?
「ライヤの部屋によ」
なんでそんな当然みたいに。
「え、ここ俺の部屋だよな……?」
2人が帰り着くと、部屋の鍵は開いており、当然のように中に人がいた。
「お帰りなさいませ。お茶にしますか?」
「あ、どうも……。じゃなくて! なんでメイドさんも!?」
アンお付きのメイドまでいる始末である。
いるのは、フィオナ、ヨル、メイドさんとウィルまでいる。
「さぁ、さっきの話もう1回して」
「また!? さっきエモい雰囲気だったから言えたのに!? もう1回!?」
「つべこべ言わない!」
「あい……」
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