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教師2年目

愛国心

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「ここが学校かぁー!」

夏休みも教師が登校することは度々ある。
クラブの活動であったり、教員の集まりであったり。
やることは様々だが、生徒よりは遥かに多いだろう。
そして今日はミリアリアが学校を見てみたいと言ったので連れてこさせられた次第だ。

「聖王国にも学校はあるだろ?」
「ん~。あるには、あるけど。こんなに大きくないよ? いても全部で300人とかかな」

そのくらいの規模の学校が点在しているらしい。
イメージするのは日本の中学校。
人口が全く違うのでそれぞれの学校の校区が入り乱れているということはないだろうが、イメージはしやすい。
むしろ、王国のようにほとんどの魔法を学ぶ生徒はここしかないというのがおかしいとライヤも思っている。
辺境の子たちは魔法について少しだけでも学びたかった場合は親元を離れて王都に来るか、高額な家庭教師を雇うしかない。

「ねぇ、ヨルちゃんも先生なんでしょ?」
「そうですね。私は養護教諭、ともまた違いますけど、魔法での回復要員ですね」
「へぇー。ライヤの教室はどこなの?」
「こっちだ」

2年生棟の端っこ。
9人にはあまりにも広い教室。
普段なら生徒たちが座っている机と椅子も主がいなくて少し寂しそうに見える。

「ここでライヤが授業してるんだー」

ぐるりと教室を見渡す。

「ねぇ、私もここで先生出来ないかなー?」
「なるなら先生じゃなくて生徒の方だろ」
「そんなにひどいかな!?」
「……」
「無言が一番きついよ!?」

そんなこと言われても、無理なものは無理である。
ヨルが教員としてやっていられるのも基準以上の学力値を満たしているからであり、ミリアリアが合格することは天地がひっくり返ってもない。

「来世で頑張れ」
「来世ならもう頑張らないかな!」

それもそうだ。

「んで、いつまでこっちにいるんだよ。聖王国の方も困ってるだろ?」
「帰ろうって話はされたけど、やだって言っといた!」
「なんで自慢げなんだよ……」

学園の夏休みももう終盤。
ミリアリアが王国に来てから1か月ほどが経過している。
その間ミリアリアや聖王国の皆様方の行動把握に時間を割いている王国の担当の方々にはいい迷惑だろう。
お客様を迎えている立場で簡単に帰れなんて言えるわけでもないし。
聖王国側も国家としての偉い人はもちろんいるが、使節団としての最上位は聖女であるミリアリアだ。
そのミリアリアはこの様子なのだから帰るに帰れない。

「頼むから、早く帰ってくれよ……」
「ライヤが聖王国に来てくれればねー」
「勘弁してくれ……」

流石のライヤも連日の案内につかれている。
そもそもは休暇のはずなのだ。

「思ったんだけど」
「……なんだ」

どうせ碌でもないだろう。

「アンちゃんとライヤが仲良しなんだよね?」
「まぁ、そうだな」
「それで、アンちゃんは次の王様にはならないんでしょ?」
「一応、本人はそう言ってるな」
「じゃあ、2人で聖王国に来ちゃえばいいじゃん!」

名案だというように顔を輝かせるミリアリア。
やはり碌でもなかったか……。

「やるならもうやってるだろ……」
「なんでしないの?」
「いや、自分の生まれた国を簡単に後にしようとするやつがいるか? ミリアリアだって聖王国には少なからず愛国心とか、そういうのあるだろ?」
「ん-、確かに……」
「それが王女ともなれば猶更だよな? 俺だって両親がいるのにわざわざ他国に行こうとは思わないよ」

独立はしたかったが、2人は割と簡単にそれを許してくれた。
家でいつでも家族と一緒というのは望むところではなかったが、そんな環境ではすでにないので王国を出る理由もない。
以前はライヤを排斥しようという動きも多かったので最悪の場合、というかアンの堪忍袋の緒が切れれば国外逃亡しようとなっていたのだ。
ライヤへの嫌がらせも鳴りを潜めている今、率先して国を出ることは無いだろう。

「じゃあ……、どうしよ?」
「知らんよ……」
「もう私が王国に来るのは?」
「怒られたんだろ?」
「あい……」

それはそれは凄い怒られ方をしたらしい。
聖女になってからだと随一だったと。
そういうことがないようにという言い含めがあったのちに聖王国を発ったらしいので、着いてからやっぱダメかなとか言われたらそりゃキレるだろう。
よく力づくで連れ戻されないものである。
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