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教師2年目

理解しがたい

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「聞きましたよ、先生」
「なにがだ?」
「先生が求婚を受けたことです」

カツン。

教室が静まり、ペンが1本落ちる音がする。
話をされた翌日にしては情報が早くないか、ウィル。

「バレていないと思いました?」

にっこりと笑うウィルだが、目が笑っていない。

「え、ちょっと待ってくれ」

最も混乱しているのはキリト。

「求婚? 先生がか?」
「今更何言ってんだよ……。あ、そうか。キリトは知らないんだったな」

キリトにはゲイルが対応する。

「先生はかなりモテるぞ。何を隠そう、アン第一王女との仲は多くの人が知るものだし、ウィルも好きだろ? そしてヨル先生。あと、教員寮の寮長さんだっけ? 先生の先輩らしいけど、あの人も好意的だった気がする。まぁ、こいつは信じてないんだけどな」
「僕の話は良いでしょう!?」

巻き込みで淡い恋心を暴露されるデラロサ。
哀れである。

「先生ごときがなんでそんなにモテるんだ……」

名前の挙がった人たちは貴族から王族まで高貴な身分の人ばかり。
平民であり、教師に過ぎず社交界にも出ていないライヤがそんな立場だとキリトは信じられずにいた。

「いや、ごときって……。よく考えろよ? まず、平民で教師になってるってことはそこらの貴族を上回る能力を先生が持ってるってことだ。妨害を黙らせることが出来るくらいのな」
「ゲイル君の妨害もねー」
「マロン、黙ってろ! そして、先の戦争での活躍。諸国連合の方はお前も知ってるだろうが、その前の帝国との戦争でも帝国の皇子付き騎士とタイマンして生き残ってる。仮に先生が貴族であったならこんなもんじゃないほどの求婚者が現れてもいいと思わないか?」
「そうなのか……?」

日本から来たキリトにはそのあたりの感覚がない。
ミクはこちらの世界の情勢を掴んでいるので納得のいく話ではあったが、知ろうともしなかったキリトに理解が及ぶはずがない。

「平民であるライヤ先生だからこの程度で済んでるって感じだと思うけどな。重婚は問題じゃないが、アン王女とウィルだけは問題なんだよな」

ゲイルがキリトに説明している間、ウィルによる説教がライヤに行われていた。


「先生は、多数の方に好意を向けられているのを把握しておりますよね?」
「あい……」
「我が国で重婚も可能なことも承知の上ですよね?」
「あい……」
「その上で姉さま以外に碌な返事を返していないにも関わらず、今度は国外からの婚約の申し込み? どういうことです?」
「いや、でも俺はそれに関してはどうしようも……」
「だまらっしゃい。姉さまや私のことを公表できずとも、そうですね……。フィオナ嬢あたりを公表すれば国外からのちょっかいは避けられたのでは?」
「それはそうかもだけど、結果論で……」
「私は今の結果の話をしてるんです」
「あい……」


「ま、モテるのもそれほどいいことばかりじゃないってことだ。俺らはああならないようにしないとな」
「初めてハーレムが苦しいものなんだなと思ったぞ……」

ゲイルとキリト、そしてウィルから想い人の名前が出て傷心中のデラロサと何も考えていないマロンが少し仲良くなった瞬間だった。
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