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教師2年目

ブチギレ

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「キリトの様子はどうだ?」
「どうもこうもないよ」

久しぶりにイリーナに会いに行った。

「真面目に修練を積んでるみたいだし、勉強に関しても前よりはマシになっただろ?」
「そうなんだよ。だから、どうやってるのか気になって」
「どうやってるか、か。先生が聞いても意味ないと思いますけどね。あれは先生という職業に対する拒否反応みたいなものだと思う」

イリーナは言葉遣いこそ荒いが、話自体はちゃんとしてくれるのでライヤにとってありがたい相手である。

「諸国連合でなにかあったのか?」
「さぁ、そこまでは知らないわ。それはお願いの範疇にはなかったでしょ?」

確かに、ライヤがイリーナにお願いしたのは勉強の面倒を見ることだけだ。
プラスして魔法の方にも多少助言してくれているようだが。

「まぁ、感謝しているわ。あの頃の自分を客観的に見ている気分よ。最初こそ最悪な気分でしかなかったけど」
「改めてみると面白いだろ?」

ニヤリと笑うライヤにそっぽを向くイリーナ。

「面白くはないわよ!」
「仲良くやっているなら何よりだ。あ、そういえば。魔術クラブを休んでいるみたいだな」
「あなたも顧問でしょう……」

あくまで伝聞でしかないライヤの言葉に呆れてため息をつくイリーナ。

「私は事情を聞いたからわかってるけど、他の子たちはまだダメだから。あそこにいても強くなれないわ」

魔術クラブの顧問は他人の意識に軽く影響を与えるような固有の魔法持ちだ。
本人が意図していないのが最大のネックだが。
その魔法によって魔術クラブに通う生徒たちは「女の子は戦うものじゃない」という顧問の考えの影響を受けている。
本来ならば真逆の意図をもって生まれている魔術クラブとしては未曽有の危機である。

「悪いな。学園長に言ってもらっても頑なに認めようとしないんだ」
「むしろよく自分の魔法のことを把握してなくて先生になれているわね」
「それだけ才能があるんだよ。分けて欲しいくらいだ」

ライヤの言葉に怪訝な顔をするイリーナ。

「ライヤ先生でも才能が欲しいと思う事があるんですね」
「そりゃあそうだろう。凡人がどれだけ努力しても届かない領域ってものがある。アンのような桁が違う天才と比べなくても、イリーナと比べても俺は規模の強い魔法を発動できない」
「それを補うために先生は魔力制御を……」
「そう、補うためなんだよ。現に俺と会ってからアンが魔力制御を高めだしてタイマンの勝率も下がってしまった。俺の方が遥かに早く始めていたのにな。実力はいろんな要素の複合評価だ。才能によって魔力というアドバンテージを得ているアンやイリーナが羨ましいよ」

珍しいライヤからの弱音。
イリーナはあまり関わりがないため珍しいと思うことは無かったが、自分よりも強い人でもそう思うのかと感じていた。

「ま、俺はそれに対抗しうる努力をしているつもりだけどな」




「今度もヨルが主役だったりします?」
「いえ、私はお2人をお連れするように言われただけですので」
「アンが迎えに来ていないのも関係あります?」
「さぁ? 一介のメイド風情には何とも……」

アン専属のメイドとなってそろそろ1年がたつメイド。
アン本人ではなくメイドが迎えに来たのは初めてではないだろうか。

「絶対に! 許さないわ!」

謁見の間に近づくにつれてプレッシャーが強くなってきていた。
ここで言うプレッシャーとは抑えられずに漏れ出た魔力のことであり、アンがキレているのが伝わってくる。

「落ち着け。俺とて渡すつもりなどない」
「なら渡さないって書いて速攻で送り返せばいいでしょう!」
「そう簡単にいかん話だろうが」

謁見の間の外でもアンの怒号とそれに対抗して声が大きくなっている王の声が聞こえる。

「あら、ライヤ君。ヨルちゃんも。ちょーっとだけ待ってね? もうちょっとで終わると思うから」

珍しく謁見の間に王妃様もいた。
2人の口論を見守っていたようだが、ならなぜ止めないのか。


「ライヤ!」

少し黙って聞いていると、急にグリンとアンがこちらへ向いた。
何がきっかけなんだ。

「断るわよね! ね!?」
「いや、なんの話……」

胸倉を掴まれ、ぐいぐいと揺らされる。

「お前に婚姻の話が来たぞ」

ひらひらと王様が送られてきたらしい手紙を振っている。
なんだそれ……。

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