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教師2年目

浴場での一幕

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「さ、ライヤさん。体洗ってください♪」
「勘弁してくれ……」
「うら若き子女を傷ものにしたのに……」
「いや、すんごい風評被害……」
「どうせ見えてないんでしょう?」
「いや、視界の端は生きてるし。感触はまた別だろ」

ライヤは入浴に際し黒メガネを用意した。
つまりサングラスだが、家にあった。
光魔法で真っ黒にしてある。
学生時代に調子に乗って買っておいたものがここにきて活躍するとは。
ただ、サングラスも視界の全てを遮るものではない。
入ってみてからわかったが、視界の端を横切る肌色も中々に心臓に悪い。

「あのクズのを上書きして欲しいなぁ……」
「ぐっ……!」
「いいじゃない、体洗うくらい。やってあげなさいよ。変なところ触ったら承知しないわよ」
「それくっそ難易度高いのわかってる?」

ヨルの言う体を洗う、はその辺まで洗うのを前提とされているだろう。

「背中流すくらいなら……」
「じゃあ、とりあえずはそれでお願いします」
「先輩、タオルとってください」
「ほいほいー」

狭い風呂だが、だからこそ間違いが起きないように手を伸ばすのを極力抑える。

「はい、これだよー」
「ありがとうございますー?」

フィオナがライヤの手首を掴んでタオルの下に誘導したが、余計なものに触れた気がする。

「私くらい大きくなると、タオルくらい乗るんだよねー」

やはりあの感触は……!

「ライヤさん、はやくー」
「わ、悪い」

ひとまず、目の前の小さな背中をごしごしとこする。

「痛くないか?」
「もうちょっと強くてもいいですよ。2日ぶり? のお風呂ですし」
「そうか」

言葉の端々にちくちく入れてくるヨル。
言外に意味を込めるのが上手い。

「髪を洗うのは良いですよね?」
「まぁ、それはな」
「じゃあ、自分で体の前の方は洗うので髪やってもらってもいいですか?」
「わかった」

柔らかめな髪質をしているヨルの髪を洗う。

「痒いところは?」
「全部ですかねー。ゆっくり全体を洗ってください」
「了解」

「ライヤの家のお風呂って狭いのね」
「そりゃ一人暮らしを前提とされてるからな!? これでもめちゃくちゃでかい方だと思うけど」

全身余すところなくはいれるくらいにはでかい。
それでも、4人が入れるようには設計されてはいない。
アンの感覚がバグっていることを抜きにしても無理がある。

「ヨル、流すぞ」
「はーい」

その解決策をずっと考えていたのだが、思いつかなかった。

「さぁ、浴槽に入ってあったまらないとねー」

声だけでニッコニコなのがわかるフィオナ。

「お風呂は浴槽に入るのが大事ですよー?」
「それはそうだけど!」

もう面白がっているヨル。

「……」

最早何もしゃべっていないアン。
こいつはどうしたんだ。



そう、ライヤは忘れていたのだ。
風呂だという事は自分も裸だという事を。
そして自分がどうするかということしか考えていなかったライヤはタオルを巻いてなどいない。
つまり、フルオープンである。

知識のあるフィオナとヨルはもはやドンとこいだが、寝ているライヤのブツを覗き見たことしかないアンにはあまりにも刺激が強すぎた。

「そんなことでいいのかなー? あれがもっと大きくなって体の中に入るのに……」
「うるさい! その時はその時でしょ!」
「そんなアンさんも可愛いですよ」

必死に打開法を探しているライヤにはそんな会話も届かない。

フィオナが余裕なのは心に余裕があるから。
ヨルが面白がっているのは裸にサングラスが面白いから。
そしてアンは恥ずかしがって目を背けているので何も話さない。
ライヤは出口のない迷路を彷徨っている。

何とも形容しがたい空間がそこにはあった。
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