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教師2年目

きっかけ

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「ヨルさんの行方は掴めましたか?」
「いえ、何も。先輩に調べてもらっていますが。昨晩帰ってきていないのは確かですし、今までそんなこともありませんでした。外泊したにしろ、このご時世にそれを告げずにするほどヨルも馬鹿じゃないです。まず何かあったと考えていいと思います」
「そうね……」

朝一で学園長室に向かい、事情を説明する。

「ライヤ先生としてはどうなの? 犯人の目星がついてたりしないかしら」
「そんなこと言われても……。下手に個人名出して不敬にあたっても困りますし……」
「そうよねぇ……」

美しさは損なわれていないものの、やはりどこかに疲れが見え隠れする学園長。
事件が起きてからというもの、各方面に協力を仰いで飛び回っているらしいので無理もない。

「ヨルはともかく、生徒たちが消えたと思われる地点で何か共通点などはなかったのですか?」
「少なくとも、地形的な共通点はなかったと思われます」
「近くで経営している飲食店だったりは……?」
「そこまで調べ上げるのは難しいと言わざるを得ないですね。それこそ、フィオナさんの方が得意でしょう」

常々思ってはいたがこの国、暗部の負担が大きすぎないか?
それにしては人員も不足しているようだし。
暗部の総数を増やすか、また別の組織を作るかしないと暗部がボイコットしたときにこの国終わるぞ。

「ライヤ先生はいいの? 今日出勤してきているのも無理になんじゃないかしら」
「そりゃ俺だって探しに行きたいですけど、生徒もいますし……。現状俺に出来ることはあまりないですから……」
「そう……。なら、今日だけ頑張って頂戴。明日からは週末だし。その後も休みをとれるように工夫するから」
「ありがとうございます」




「先生、今日はどこか考え事をしていませんか?」
「……わかるか?」

無論、授業に集中などできるはずもない。
授業をしながらもずっとヨルが気になって仕方がない。
もちろん、攫われた他の生徒たちも心配だが、知っているかどうかというのは大きく影響する。

「授業自体に不満はないですけど……。どこか気が抜けていますね」
「そうか? 俺は気付かなかったけど……。なぁ?」
「そうだねー」
「素晴らしい授業です」
「あなたたちと一緒にしないでください」
「なんだとー!」

ギャアギャアとウィル対ゲイル、デラロサ、マロンの口論が始まる。

「……わ、わたしも、今日の先生は、ちょっと元気がなさそうに見えるかも、です……」

ぎりぎり聞こえるような声量だが、シャロンからもそう言われてしまってはそうだったのだろう。
ライヤは上手く隠しているつもりでいたが。
先生が生徒のことを見ているように、生徒も先生のことを見ているという事だろうか。


バカァンッッ!!

引き戸である教室の扉がこちら側に吹っ飛ぶ。
見れば、硬い扉に革靴の後がついている。
どういう圧力がかかればそうなるんだ……?

「ライヤ!」
「アン!?」

憤怒の形相で入ってきたのはアン第一王女その人。
あまりの迫力に生徒たちは既に教室の隅まで避難している。

「ま、待て。話せばわかる……」
「わかるわけないでしょうが!」

アンが振るう炎を纏った剣を何とか氷を生成して、受け止める。
それも一瞬の時間稼ぎにしかならず、後退する。

「アン! 何を……」

床を転がって顔を上げたライヤの目に映ったのは表情を変え、アンが涙を流す姿だった。

「……探しに行かないの?」

久しぶりに、アンの涙を見た。
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