173 / 328
教師2年目
異変
しおりを挟む
「……というわけで、非常勤講師であるアンネ先生にクラブがどういったものかをお見せしたくて」
「もちろん、構いませんよ。魔術クラブはうちの学校でも有数の生徒数を誇りますからね」
顧問の言う通り、代が変わって魔術クラブの人数はさらに増えていた。
そして、明らかに女性の割合が増えている。
いや、男性の人数が減って相対的に女性の割合が高くなっているのか。
新入生の代はほとんど男子のクラブ加入は無かったのだろう。
このクラブの現状、イケメンな顧問の囲いと化している状況では入りにくいのも頷けるが。
「こんなことをしているのですねー」
アンも興味がある振りをしているが、どことなく棒読みだ。
魔法に関しては実践が最も練習になると考えているから、的あてくらいしかやっていないクラブの活動には物足りなさを感じるのだろう。
「如何です? アンネ先生も顧問になっていただけませんか?」
「いえ、私は学校に来ること自体も稀ですので……」
「そうですか……。気が変わればいつでもおっしゃってください」
にこやかに話している顧問だが、丸一年たっても笑顔に違和感を覚えてしまう。
魔術クラブで何か起こっているとして、フィオナがいた時といなくなった後で違いが生まれている。
その要因はどこかにあるはずだが、その間に顧問となった先生はその要因として最も考えやすい。
顧問という立場上、影響を与えやすい人物でもある。
だが、ここで問題はその影響がどこまでなのか。
クラブ内にだけ異変が起こっているのならわかりやすかったのだが、新しくクラブに加入する生徒の男女割合に着目すれば、クラブ活動以前に何か行われている公算が高くなってくる。
何を、どのタイミングで行っているのか現状では見当もつかない。
「魔術クラブってあんなに平和的なクラブだったかしら?」
「そういう感想になるよな」
職員寮に戻り、フィオナの部屋で変装を解いたアンが首をかしげる。
学園最強として君臨していたアンは在学中、魔術クラブの人間に手合わせを挑まれることもしばしば。
アンが断らないことをいいことに入れ代わり立ち代わり挑みにきては叩き潰されていた。
それでも諦めず挑んでいくくらいにはぶっ壊れた向上心を持っていたはずだ。
「あのクラブって何のために存在しているの?」
「……顧問に会うため?」
きゃぴきゃぴと顧問を見て騒ぐ女子生徒たちには、良く飽きないものだという感想を抱くライヤ。
クラブの活動内容としては大したことをしていないのでそんな考えにもなってしまう。
「正直言って、私にはあの先生にそんなに魅力があるとは思えないのよね。もちろん、容姿は整っているとは思うけど。あんなに騒がれるほどかしら」
「そうだよねー。それこそ卒業生にはなるけど、容姿だけならカムイ君の方が優れていたんじゃないのかなー?」
フィオナもアンの意見に同調する。
「まぁ、集団心理ってものもあるから一概には言えないけど。ただあの先生が人気があるってだけじゃないと思うのよね……」
「だろ?」
アンにもライヤが感じていた違和感を理解してもらえたみたいだ。
「でも、何が目的なの?」
「いや、だから、それはわからないって言っただろ?」
「てっきりまたライヤが何か隠してるだけだと……」
信用ないな。
「あの先生にハーレム願望があるだけだったらどれだけいいかって話なんだけど。クラブの教室では間違いなく何かの魔法が使われてるんだよな」
「そうね。魔力の動きは私も感じてたわ」
「私もー」
この3人がそろって魔法に関して間違えていることは無いだろう。
「心なしか、あの顧問が話している時に魔力の強さが変わっていた気がしたのよね」
「俺もそう思う。だけど、何の魔法かわからないんだ」
「ユニーク魔法の可能性はあると思う?」
ユニーク魔法。
その名の通り、火・水・光などのように属性として分類される魔法ではなく、個人の特性として発現する魔法のことである。
厄介なのはユニーク魔法であった場合、この世の事象全てが魔法の効果として選択肢に入ることだ。
今回は他人、それも恐らく女性に大きく影響を与えるものだろうと算段がついているのでいいが、仮に戦場で出会えば対策のしようがない。
学園の教師になるほどの実力者であるし、イリーナも少なからず影響されていたことから魔法の影響力はかなり強いものだと考えられる。
「それで、どうするの?」
「とりあえずは顧問の先生の背景を洗うしかないと思う。下手に尾行なんかして見つかったら警戒を強めるだけだしな」
アンからも学園長に依頼し、顧問の経歴を洗い出した3日後。
4人の女子生徒が姿を消した。
「もちろん、構いませんよ。魔術クラブはうちの学校でも有数の生徒数を誇りますからね」
顧問の言う通り、代が変わって魔術クラブの人数はさらに増えていた。
そして、明らかに女性の割合が増えている。
いや、男性の人数が減って相対的に女性の割合が高くなっているのか。
新入生の代はほとんど男子のクラブ加入は無かったのだろう。
このクラブの現状、イケメンな顧問の囲いと化している状況では入りにくいのも頷けるが。
「こんなことをしているのですねー」
アンも興味がある振りをしているが、どことなく棒読みだ。
魔法に関しては実践が最も練習になると考えているから、的あてくらいしかやっていないクラブの活動には物足りなさを感じるのだろう。
「如何です? アンネ先生も顧問になっていただけませんか?」
「いえ、私は学校に来ること自体も稀ですので……」
「そうですか……。気が変わればいつでもおっしゃってください」
にこやかに話している顧問だが、丸一年たっても笑顔に違和感を覚えてしまう。
魔術クラブで何か起こっているとして、フィオナがいた時といなくなった後で違いが生まれている。
その要因はどこかにあるはずだが、その間に顧問となった先生はその要因として最も考えやすい。
顧問という立場上、影響を与えやすい人物でもある。
だが、ここで問題はその影響がどこまでなのか。
クラブ内にだけ異変が起こっているのならわかりやすかったのだが、新しくクラブに加入する生徒の男女割合に着目すれば、クラブ活動以前に何か行われている公算が高くなってくる。
何を、どのタイミングで行っているのか現状では見当もつかない。
「魔術クラブってあんなに平和的なクラブだったかしら?」
「そういう感想になるよな」
職員寮に戻り、フィオナの部屋で変装を解いたアンが首をかしげる。
学園最強として君臨していたアンは在学中、魔術クラブの人間に手合わせを挑まれることもしばしば。
アンが断らないことをいいことに入れ代わり立ち代わり挑みにきては叩き潰されていた。
それでも諦めず挑んでいくくらいにはぶっ壊れた向上心を持っていたはずだ。
「あのクラブって何のために存在しているの?」
「……顧問に会うため?」
きゃぴきゃぴと顧問を見て騒ぐ女子生徒たちには、良く飽きないものだという感想を抱くライヤ。
クラブの活動内容としては大したことをしていないのでそんな考えにもなってしまう。
「正直言って、私にはあの先生にそんなに魅力があるとは思えないのよね。もちろん、容姿は整っているとは思うけど。あんなに騒がれるほどかしら」
「そうだよねー。それこそ卒業生にはなるけど、容姿だけならカムイ君の方が優れていたんじゃないのかなー?」
フィオナもアンの意見に同調する。
「まぁ、集団心理ってものもあるから一概には言えないけど。ただあの先生が人気があるってだけじゃないと思うのよね……」
「だろ?」
アンにもライヤが感じていた違和感を理解してもらえたみたいだ。
「でも、何が目的なの?」
「いや、だから、それはわからないって言っただろ?」
「てっきりまたライヤが何か隠してるだけだと……」
信用ないな。
「あの先生にハーレム願望があるだけだったらどれだけいいかって話なんだけど。クラブの教室では間違いなく何かの魔法が使われてるんだよな」
「そうね。魔力の動きは私も感じてたわ」
「私もー」
この3人がそろって魔法に関して間違えていることは無いだろう。
「心なしか、あの顧問が話している時に魔力の強さが変わっていた気がしたのよね」
「俺もそう思う。だけど、何の魔法かわからないんだ」
「ユニーク魔法の可能性はあると思う?」
ユニーク魔法。
その名の通り、火・水・光などのように属性として分類される魔法ではなく、個人の特性として発現する魔法のことである。
厄介なのはユニーク魔法であった場合、この世の事象全てが魔法の効果として選択肢に入ることだ。
今回は他人、それも恐らく女性に大きく影響を与えるものだろうと算段がついているのでいいが、仮に戦場で出会えば対策のしようがない。
学園の教師になるほどの実力者であるし、イリーナも少なからず影響されていたことから魔法の影響力はかなり強いものだと考えられる。
「それで、どうするの?」
「とりあえずは顧問の先生の背景を洗うしかないと思う。下手に尾行なんかして見つかったら警戒を強めるだけだしな」
アンからも学園長に依頼し、顧問の経歴を洗い出した3日後。
4人の女子生徒が姿を消した。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる