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春休み
敵将
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王国軍と諸国連合軍の違いはどこか。
練度とかは置いておくとして、体制の違いとして王国は1つの大きな国なので軍としてまとまっている。
対して諸国連合は今は合同で王国と戦っているとはいえ、軍の編成はそれぞれの国で行われている。
よって組織形態に違いがあるのだ。
王国は全体で組織されているので不測の事態が起こった時に情報の共有に時間がかかる。
逆に連携が取れれば強い。
諸国連合はそれぞれの国単位で組織されているので別々に動いている。
それぞれの判断で柔軟に動くことが出来るが、利権の絡みなどで情報伝達が遅れたり、互いにカバーしあえなかったりするだろう。
だが、そんな諸国連合の軍の中で一つだけ、他と違う動きをしている軍がある。
他の軍の援護に回り、ともすればすぐに崩壊してしまいそうなバランスをとっている軍がいた。
それを崩せばこちらが優位に立てる。
崩せずとも、気付いてるぞとアピールできる。
これまで通りに大手を振って動けなくするのだ。
「で、大将にお願いして2方面に攻撃を仕掛けるようにしてもらった。まず間違いなく、間に入ろうとするだろう。そこを止める。準備は良いな?」
足を止めさせるという一点において効果的な魔法は何だろうか。
土魔法で壁を作成し、壊すまでの時間を作るか。
だが、中途半端な壁ではすぐに壊されてしまうし、風魔法1つで越えられないくらいの高さも必要だ。
水魔法の水流で進ませなくするか。
しかし、水を途切れさせなくするような膨大な魔力が必要だ。
ライヤ達で言えば、可能な水準にいるのはミランダだけだろう。
ライヤの解答はこれだ。
「泥が邪魔で進めません!」
土魔法と水魔法の複合魔法で泥を用いる。
土魔法と水魔法はどちらも質量のある魔法なため、何もないところから発動しようとすると魔力の消費が多い。
だが、ここは湿地帯。
どちらも豊富に存在している。
「……仕方ない。迂回する」
「……俺たちも移動だ」
泥を嫌い、諸国連合の軍は迂回を選択するが、それに合わせてライヤ達も移動する。
軍とも言えない50余名の部隊だからこそ可能な行動である。
人数が多いとばれてしまうが、密林地帯でなら姿を隠してくれる。
結果、どう迂回しても泥が待ち受けることとなる。
「どうしましょう、コンバート様」
「!? ……一度撤退だ」
「了解」
「そう、間違いないのね」
「多分な」
コンバート。
諸国連合の厄介な軍を率いている将の名であり、ヨルの苗字でもある。
「お父様が……?」
「王の盟友とやらか。言われてみればそんな奴がおった気がせんでもないが……」
事前の話では、ヨルの父は良くて拘留されていて、かなりの確率で処刑されているだろうという話だったはずだ。
拘留されている場合、可能ならば助けてくれと王に言われていたが、それも可能ならの話。
そんな人物が前線で軍を率いているとはどういうことか。
それも、王国にとって最も厄介な存在である。
「そうなってくると話は変わってくるんじゃがなぁ……」
ヨルの父を助けるというのは、あくまで彼が被害者であるからという名分のもとであった。
王国に面と向かって対立しているとなれば、助けることは出来なくなる。
「ヨルさんには悪いが、これは……」
メンデス大将も言いにくそうにしている。
ヨルも父が助かればと思っている節はあっただろう。
「……いえ、わかっています。そもそも、父だけを助けて欲しいというのが虫のいい話だったのです。すみません、席を外しても……?」
「もちろんじゃ。お嬢」
「ついて行くわ。ヨル」
「すみません……」
「それで、小僧。ヨルさんの父君はなんとかなりそうか?」
「正直言って、わかりません。回復魔法に特化したのはヨルだけという話なので、普通の魔法使いだとは思いますが、まず間違いなくS級でしょうし。魔法を目にする機会もありませんでした」
「お前たちだけでやれるか?」
「それは無理です。俺たちは正面から戦うのは向いていないのはわかっているでしょう」
ヨルの父の軍と対面するのはライヤ達になるが、そもそもの人数差もあるので負けてしまう可能性の方が高い。
彼らを抑えることが出来れば他の戦場で勝って王国が優位に立つことが出来るだろう。
だが、そんな潰れ役はライヤもやりたくないし、アンが許すはずもない。
「……とりあえず、今日は休め」
結論は、出ないままだった。
練度とかは置いておくとして、体制の違いとして王国は1つの大きな国なので軍としてまとまっている。
対して諸国連合は今は合同で王国と戦っているとはいえ、軍の編成はそれぞれの国で行われている。
よって組織形態に違いがあるのだ。
王国は全体で組織されているので不測の事態が起こった時に情報の共有に時間がかかる。
逆に連携が取れれば強い。
諸国連合はそれぞれの国単位で組織されているので別々に動いている。
それぞれの判断で柔軟に動くことが出来るが、利権の絡みなどで情報伝達が遅れたり、互いにカバーしあえなかったりするだろう。
だが、そんな諸国連合の軍の中で一つだけ、他と違う動きをしている軍がある。
他の軍の援護に回り、ともすればすぐに崩壊してしまいそうなバランスをとっている軍がいた。
それを崩せばこちらが優位に立てる。
崩せずとも、気付いてるぞとアピールできる。
これまで通りに大手を振って動けなくするのだ。
「で、大将にお願いして2方面に攻撃を仕掛けるようにしてもらった。まず間違いなく、間に入ろうとするだろう。そこを止める。準備は良いな?」
足を止めさせるという一点において効果的な魔法は何だろうか。
土魔法で壁を作成し、壊すまでの時間を作るか。
だが、中途半端な壁ではすぐに壊されてしまうし、風魔法1つで越えられないくらいの高さも必要だ。
水魔法の水流で進ませなくするか。
しかし、水を途切れさせなくするような膨大な魔力が必要だ。
ライヤ達で言えば、可能な水準にいるのはミランダだけだろう。
ライヤの解答はこれだ。
「泥が邪魔で進めません!」
土魔法と水魔法の複合魔法で泥を用いる。
土魔法と水魔法はどちらも質量のある魔法なため、何もないところから発動しようとすると魔力の消費が多い。
だが、ここは湿地帯。
どちらも豊富に存在している。
「……仕方ない。迂回する」
「……俺たちも移動だ」
泥を嫌い、諸国連合の軍は迂回を選択するが、それに合わせてライヤ達も移動する。
軍とも言えない50余名の部隊だからこそ可能な行動である。
人数が多いとばれてしまうが、密林地帯でなら姿を隠してくれる。
結果、どう迂回しても泥が待ち受けることとなる。
「どうしましょう、コンバート様」
「!? ……一度撤退だ」
「了解」
「そう、間違いないのね」
「多分な」
コンバート。
諸国連合の厄介な軍を率いている将の名であり、ヨルの苗字でもある。
「お父様が……?」
「王の盟友とやらか。言われてみればそんな奴がおった気がせんでもないが……」
事前の話では、ヨルの父は良くて拘留されていて、かなりの確率で処刑されているだろうという話だったはずだ。
拘留されている場合、可能ならば助けてくれと王に言われていたが、それも可能ならの話。
そんな人物が前線で軍を率いているとはどういうことか。
それも、王国にとって最も厄介な存在である。
「そうなってくると話は変わってくるんじゃがなぁ……」
ヨルの父を助けるというのは、あくまで彼が被害者であるからという名分のもとであった。
王国に面と向かって対立しているとなれば、助けることは出来なくなる。
「ヨルさんには悪いが、これは……」
メンデス大将も言いにくそうにしている。
ヨルも父が助かればと思っている節はあっただろう。
「……いえ、わかっています。そもそも、父だけを助けて欲しいというのが虫のいい話だったのです。すみません、席を外しても……?」
「もちろんじゃ。お嬢」
「ついて行くわ。ヨル」
「すみません……」
「それで、小僧。ヨルさんの父君はなんとかなりそうか?」
「正直言って、わかりません。回復魔法に特化したのはヨルだけという話なので、普通の魔法使いだとは思いますが、まず間違いなくS級でしょうし。魔法を目にする機会もありませんでした」
「お前たちだけでやれるか?」
「それは無理です。俺たちは正面から戦うのは向いていないのはわかっているでしょう」
ヨルの父の軍と対面するのはライヤ達になるが、そもそもの人数差もあるので負けてしまう可能性の方が高い。
彼らを抑えることが出来れば他の戦場で勝って王国が優位に立つことが出来るだろう。
だが、そんな潰れ役はライヤもやりたくないし、アンが許すはずもない。
「……とりあえず、今日は休め」
結論は、出ないままだった。
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